ワークフローの作り方と改善の進め方|業務改善担当者が押さえるべき全手順
紙やExcelでの申請・承認業務に追われ、処理の遅延や入力ミス、担当者不在による業務停止といった課題に直面していませんか。日々の業務に忙殺され、なかなか改善に着手できないと悩む業務改善担当者の方も多いでしょう。この状態を放置すると、機会損失やコンプライアンスリスクの高まりに繋がりかねません。
本記事では、このような課題を抱える皆様に向けて、ワークフロー作成と改善の具体的な全手順を網羅的に解説します。業務プロセスの可視化から課題特定、現場を巻き込んだ改善、さらには継続的な運用まで、明日から実践できる具体的な方法をステップバイステップでご紹介します。業務効率化の明確な道筋が見え、悩みを解決する具体的な手助けとなるでしょう。
ワークフローとは?基本と作成するメリットを理解しよう
ワークフローとは、組織内で日々行われる業務の一連の流れを図や文書で明確に定義したものです。紙やExcelを使った煩雑な申請・承認業務に追われている業務改善担当者の方にとって、ワークフローを理解し適切に作成することは、業務の効率化だけでなく、組織全体の生産性向上とリスク管理の強化に直結します。このセクションでは、ワークフローの基本的な概念と、なぜその作成が現代のビジネスにおいて不可欠なのかを、具体的なメリットを交えて詳しく解説していきます。
ワークフローの定義と業務フローとの違い
「ワークフロー」という言葉はよく耳にするものの、その正確な定義や「業務フロー」との違いを明確に把握している方は少ないかもしれません。ワークフローとは、経費精算や稟議申請、備品購入といった業務において、「誰が」「いつ」「何を」申請・承認・決裁するのか、その一連の手続きとルールを定めたものです。単なる作業の手順を示す業務フローに対し、ワークフローは特に「申請・承認」という権限と責任を伴うプロセスに焦点を当てています。
例えば、日報提出の業務フローは「日報作成 → 上司に提出」という単純な流れですが、経費精算のワークフローは「申請者による申請書作成 → 課長承認 → 部長承認 → 経理部確認 → 支払い」のように、複数の関係者が関与し、各段階で判断や承認が求められる複雑なプロセスを含みます。このように、ワークフローは業務における意思決定の流れを可視化し、責任の所在を明確にするための重要なツールなのです。
なぜ必要?ワークフローを作成・見直しする4つのメリット
ワークフローの導入や見直しは、単なる業務の整理にとどまらず、企業に多岐にわたる具体的なメリットをもたらします。業務改善担当者として、上司や他部署を巻き込み、プロジェクトを推進していくためには、これらのメリットを明確に理解し、具体的に説明できることが重要です。ここでは、ワークフローがもたらす4つの主要なメリットを深掘りし、それぞれがどのように生産性向上やリスク低減に貢献するのかを解説します。
メリット1:業務プロセスの可視化と課題の発見
ワークフローを設計する最大のメリットの一つは、これまで個人の経験や慣習に依存していた業務プロセスが、図や文書によって「見える化」される点にあります。例えば、経費精算の承認に時間がかかっている場合、ワークフロー図を見ることで、特定の承認者で滞留していることや、不要な確認ステップがあること、あるいは情報入力の手間が多すぎるといった具体的な問題点(ボトルネック)を客観的に特定できるようになります。
この可視化によって、感覚的な「この業務は非効率だ」という意見ではなく、「この工程で平均3日間の待ち時間が発生している」といったデータに基づいた課題特定が可能になります。これにより、改善策もより具体的かつ効果的なものとなり、根拠に基づいた業務改善へと繋げられるのです。
メリット2:業務の標準化による属人化の防止
特定の担当者しか業務内容を把握していない「属人化」は、担当者の異動や退職が発生した際に、業務が滞ったり品質が低下したりする大きなリスクを組織にもたらします。ワークフローを整備し、業務手順や承認ルートを標準化することで、この属人化のリスクを効果的に解消できます。
明確なワークフローがあることで、誰が担当しても同じ品質で業務が遂行できるようになり、新しく配属されたメンバーも手順書に沿ってスムーズに業務を覚えられます。これにより、教育コストの削減や早期戦力化が実現し、組織全体の業務継続性と安定性が飛躍的に向上します。標準化は、個人の能力に依存しない、強い組織を作るための基盤となります。
メリット3:意思決定の迅速化と責任の明確化
明確なワークフローは、申請から承認、決裁までのプロセスを大幅にスピードアップさせます。申請書類がどこで止まっているのか、誰が次のアクションを起こすべきなのかが一目瞭然になるため、承認待ちによる業務の停滞を防ぐことができます。例えば、紙の稟議書が上司の机で数日止まっていたり、どこに回っているか不明になったりするような事態を回避できます。
また、ワークフローの各ステップで「誰が」「何を」承認するのか、その権限と責任が明確に定められるため、適切な意思決定が迅速に行われます。これにより、責任の所在が曖昧になることを防ぎ、迅速かつ質の高い経営判断や業務遂行を後押しします。
メリット4:内部統制(コンプライアンス)の強化
ワークフローによって、業務が定められたルール通りに実行される仕組みを構築することは、不正行為や手続き上の誤りを未然に防ぎ、企業の内部統制を強化することに直結します。例えば、経費精算のワークフローが明確であれば、規定外の支出が承認されるリスクを低減し、領収書の改ざんなども早期に発見できる可能性が高まります。
特に上場準備中の企業や上場企業にとって、ワークフローによる内部統制の強化は、監査対応や企業の信頼性維持の観点から極めて重要です。透明性のある業務プロセスは、企業が社会的な信頼を獲得し、持続的に成長するための不可欠な要素となります。コンプライアンス遵守の文化を醸成し、企業価値を高める上で、ワークフローは中心的な役割を担うのです。
【5ステップ】ワークフローの作り方 全手順を徹底解説
このセクションでは、ワークフローをゼロから作成し、効果的な業務改善につなげるための具体的な5つのステップを徹底的に解説します。紙やExcelでの煩雑な申請・承認業務に課題を感じている業務改善担当者の方が、このガイドに沿って進めるだけで、自社の実情に合ったワークフローを設計できるよう、実践的な内容を心がけました。各ステップで「何を」「どのように」行うべきかを明確にし、具体的な行動へと移せるよう、分かりやすくご紹介します。
STEP1:目的と対象業務を明確にする
ワークフロー作成に着手する上で、最も重要なのが「目的設定」です。何のためにワークフローを作るのか、どの業務を対象とするのかを明確に定義することが、プロジェクトの成否を分けます。例えば、「経費精算の承認リードタイムを平均3営業日から1営業日に短縮する」や、「備品購入申請書の差し戻し率を現状の50%から10%以下に削減する」のように、具体的で測定可能な目標(KPI)を設定しましょう。目的を明確にすることで、関係者全員が同じ方向を向き、改善効果を客観的に評価できるようになります。この段階で曖昧なまま進めると、後工程で方向性がブレたり、期待した効果が得られなかったりする原因となります。
STEP2:関係者・タスク・必要情報を洗い出す
次に、目的を達成するための対象業務に関わる「人」「タスク」「情報」を漏れなく洗い出します。まず「人」としては、申請者、承認者、確認者、最終的な処理担当者など、その業務に登場する全てのアクターを特定します。次に、それぞれのアクターが「どのようなタスク」を行っているのかを具体的にリストアップします。例えば、「申請書の作成」「内容の確認」「押印」「システムへの入力」「伝票の起票」などです。最後に、各タスクで「どのような情報や書類」がやり取りされているのかを把握します。具体的には、申請フォーム、見積書、請求書、領収書、各種台帳などが挙げられます。これらの洗い出しは、現場へのヒアリングや実際の業務観察を通じて、徹底的に行いましょう。これにより、現状の業務を構成する要素を正確に把握し、次のステップである可視化の準備を整えます。
STEP3:業務の流れをフロー図で可視化する
STEP2で洗い出した関係者・タスク・必要情報をもとに、現状の業務プロセス、いわゆる「As-Isモデル」をフロー図として視覚化します。タスクがどのような順番で発生し、どの担当者間で情報や書類が連携されているのかを、時系列に沿って図に落とし込んでいきましょう。この段階では、まだ改善案を盛り込むのではなく、「現状、業務がどのように進められているか」をありのまま正確に描写することに集中します。例えば、紙での手渡しなのか、メール添付なのか、特定のシステムに入力しているのかなど、具体的な手段も明記すると良いでしょう。現状の業務プロセスを客観的に図示することで、これまで暗黙知となっていた部分が明確になり、後の課題分析の強固な基礎となります。
STEP4:現状の課題を特定し改善案を立案する
作成した現状のフロー図(As-Isモデル)を客観的な視点で分析し、非効率な箇所や問題点を特定します。具体的な課題の例としては、「同じ情報を複数回入力している(転記の多さ)」「不要な承認ステップが存在する」「手作業によるミスの発生箇所」「書類の回覧待ちによる承認遅延」「特定担当者への業務集中(ボトルネック)」などが挙げられます。これらの課題を洗い出したら、次に「ECRSの原則(Eliminate:排除、Combine:結合、Rearrange:交換、Simplify:簡素化)」などを参考に、具体的な改善案を立案します。例えば、重複する入力作業をなくす、承認ステップを削減する、システム化によって待ち時間を短縮するなど、課題解決に直結するアイデアを具体的に検討しましょう。この段階で、複数の改善案を比較検討し、最も効果的で実現性の高いものを選定することが重要です。
STEP5:新しいワークフローを設計し、関係者と共有する
STEP4で立案した改善案を反映させ、あるべき業務プロセスを示す「To-Beモデル」のフロー図を設計します。新しいワークフローは、目的達成に貢献し、かつ現場がスムーズに実行できるような形を目指しましょう。設計が完了したら、必ず関係者全員と新しいワークフローを共有し、内容について合意形成を図ることが不可欠です。特に現場の担当者に対しては、この変更が「いかに業務を楽にするか」「どのようなメリットがあるか」を具体的な言葉で丁寧に説明し、理解と協力を得ることがプロジェクト成功の鍵となります。現場の納得と参画なくして、新しいワークフローの定着は難しいからです。
誰が見てもわかる!見やすいワークフロー図を作成する4つのコツ
ワークフロー図は、関係者全員が正確に内容を理解できなければ、その作成意義は半減してしまいます。このセクションでは、専門知識がない方でも直感的に理解できる、分かりやすいフロー図を作成するための具体的な4つのテクニックをご紹介します。
図の見た目や構成を工夫することで、無用なコミュニケーションコストを削減し、スムーズな合意形成を促すことが可能になります。最終的に、新しいワークフローが現場にスムーズに定着するための土台を築くことを目指しましょう。
コツ1:記号や図形のルールを統一する
フロー図の作成において、使用する図形の意味を統一することは、情報の誤解を防ぎ、理解を促進するために非常に重要です。例えば、「角丸四角形は開始や終了」「長方形は処理やタスク」「ひし形は条件分岐や意思決定」といったように、それぞれの図形が持つ意味を明確に定めます。
これらの記号には、JIS(日本工業規格)やBPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)などの標準的なルールが存在します。これらに準拠することで、作成者だけでなく、図を見る誰もが共通の認識を持ってプロセスを理解できるようになります。もし独自の記号を使用する場合は、必ず図のどこかに凡例(記号と意味の一覧)を記載し、誤解が生じないように配慮してください。これにより、図の解読にかかる時間を大幅に短縮し、本質的な議論に集中できます。
コツ2:役割(担当者)と時間の流れを明確にする
ワークフロー図は、単にタスクの羅列ではなく、「誰が、いつ、何をするのか」を明確に示す必要があります。そのためには、「スイムレーン」と呼ばれる図法を活用することが非常に効果的です。スイムレーンは、部署や役職、担当者ごとにレーン(行や列)を区切ることで、どのタスクを誰が担当するのか、タスクの受け渡しがどこで発生するのかを一目瞭然にします。これにより、業務の責任範囲が明確になり、担当者間の連携がスムーズになります。
また、プロセスの流れは「左から右へ」「上から下へ」という一方向で記述する原則を守るようにしましょう。このルールを徹底することで、時間の経過とタスクの進行方向が直感的に理解しやすくなり、ワークフロー全体の論理構造がより明確になります。業務の流れを時系列に沿って追うことで、現状のボトルネックや無駄な待ち時間を容易に発見できるようになります。
コツ3:承認フローの基本パターンを理解する
承認プロセスはワークフローの肝であり、その設計の巧拙が業務効率に直結します。承認フローには、業務内容や企業の組織構造に応じて最適なパターンが存在します。ここでは代表的な5つの基本パターンをご紹介します。
- 「直列承認」:A→B→Cのように順番に承認が進む最も基本的な形です。段階的なチェックが必要な場合に適しています。2. 「並列承認」:AとBが同時に承認を進め、両者が承認すれば次に進む形です。複数の部門や担当者の意見を同時に求める場合に有効です。3. 「条件分岐」:特定の条件によって承認ルートが変化するパターンです。例えば、「50万円未満は課長決裁、50万円以上は部長決裁」といったケースに適用されます。これにより、適切な権限者が迅速に判断できるようになります。4. 「合議」:特定のグループや会議体で承認が必要な場合に用いられます。複数の視点からの意思決定を促します。5. 「代理承認」:承認者が不在の場合に、あらかじめ指定された代理者が承認する仕組みです。担当者不在による業務停止を防ぎます。
これらのパターンを理解し、自社の業務プロセスに最も合致するものを選択・組み合わせることで、承認の迅速化と責任の明確化を実現できます。
コツ4:情報を詰め込みすぎずシンプルにまとめる
「詳細な情報ほど良い」という考えは、ワークフロー図においては逆効果になることがあります。一枚のフロー図にあらゆる情報や例外処理を詰め込みすぎると、全体像が把握しにくくなり、かえって分かりにくい図になってしまうことがあります。フロー図の目的は、業務全体の流れと主要なポイントを関係者全員がスムーズに理解することにあります。
まずは、業務の主要な流れ、すなわち「ハッピーパス」と呼ばれる正常なケースのプロセスを明確に描くことに集中しましょう。イレギュラーな処理や詳細な作業手順は、別のフロー図に分割したり、注釈として補足情報として記載したりする工夫が有効です。例えば、例外処理専用のフロー図を別途作成することで、メインのフロー図はシンプルさを保ちつつ、必要なときに詳細を確認できる構成にできます。情報の優先順位をつけ、「全体像の共有」という図の目的に立ち返り、シンプルさを優先することが、誰にとっても見やすく、実用的なワークフロー図を作成する上で最も重要なポイントとなります。
目的別に選ぶ|ワークフロー作成・管理に役立つツール
ワークフローの作成は、業務プロセスの可視化から始まり、その後の運用、そして継続的な改善へと繋がります。この一連の流れをより効率的かつ効果的に進めるためには、適切なツールの活用が不可欠です。しかし、世の中には多くのツールが存在するため、自社の状況や目的に合わせてどれを選ぶべきか迷ってしまうこともあるかもしれません。ここでは、「まずは現状を可視化したい」という初期段階から、「本格的に業務を電子化・自動化したい」という次の段階まで、それぞれのフェーズに合わせたツールの選び方と具体的な選択肢をご紹介します。ツールの選択は、ワークフロー改善プロジェクトの成否を左右する重要な要素となるため、ぜひ自社にとって最適なものを見つける参考にしてください。
手軽に始めるなら:Excel・PowerPoint・作図ツール
ワークフローの可視化をこれから始める場合や、特定の業務に限定してスモールスタートしたい場合には、普段から使い慣れているOfficeツールや無料で利用できる作図ツールが非常に有効です。多くのビジネスパーソンが日常的に使用しているExcelやPowerPointは、特別な導入コストをかけずに、すぐにワークフロー図の作成に取りかかれるという大きなメリットがあります。
Excelでは「図形」機能や「SmartArt」機能、PowerPointでは豊富な図形描画機能やテンプレートを活用することで、直感的にフロー図を作成できます。これらのツールは共同編集も可能なため、関係者とリアルタイムで図を修正・確認しながら作業を進めることもできます。また、より本格的な作図機能や豊富なテンプレートを求める場合には、diagrams.net(旧draw.io)やMiroのようなオンライン作図ツールもおすすめです。これらのツールは、無料で利用できるプランがあったり、月額費用も比較的安価なものが多く、初めてワークフロー図を作成する方にとって、機能面でもコスト面でも非常に優れた選択肢となるでしょう。複雑な業務プロセスを視覚的に整理し、関係者との認識合わせをスムーズに進める上で、これらの手軽なツールから始めるのは非常に効果的です。
本格的な業務改善を目指すなら:ワークフローシステム
ワークフロー図の作成だけでなく、実際の申請・承認業務そのものをデジタル化し、業務プロセス全体の効率を飛躍的に向上させたいと考えるのであれば、「ワークフローシステム」の導入を検討することをおすすめします。ワークフローシステムは、紙やExcelで行っていた申請・承認業務をシステム上で完結させることで、以下のような多くのメリットをもたらします。
- ペーパーレス化の推進:申請書類の印刷・配布・保管にかかるコストや手間を削減します。
- 申請状況のリアルタイム可視化:申請書が今どこで、誰によって承認待ちになっているのかが一目でわかるため、承認の停滞を防ぎ、ボトルネックの特定を容易にします。
- 承認者への自動リマインド:承認依頼が自動で通知され、未承認の場合にはリマインドが送られるため、承認漏れや遅延を防止します。
- 場所を選ばない承認:PCだけでなくスマートフォンやタブレットからも申請・承認ができるため、外出先やリモートワーク環境でも業務を滞りなく進められます。
- 他システムとの連携:会計システム、人事システム、勤怠管理システムなど、既存の業務システムと連携することで、二重入力の手間を省き、データの一貫性を保つことができます。
ワークフローシステムは、単なる業務効率化に留まらず、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する上での中核ツールとして、業務改革に大きな効果を発揮します。
自社に合ったツールの選び方と比較ポイント
ワークフローシステムは多種多様であり、自社に最適なツールを選ぶためには、いくつかの比較ポイントを押さえておくことが重要です。業務改善担当者としてツール選定を進める際には、以下の観点をチェックリストとして活用し、総合的に判断することをおすすめします。
- 料金体系:初期費用や月額費用はもちろんのこと、ユーザー数に応じた課金体系やオプション機能の費用なども確認し、長期的なランニングコストを把握しましょう。
- 操作性:実際にシステムを利用する現場の担当者が、直感的に操作できるかを重視しましょう。導入後に定着させるためには、分かりやすいインターフェースが不可欠です。無料トライアル期間などを活用して、実際に触ってみることをおすすめします。
- カスタマイズの柔軟性:自社の複雑な承認ルートや独自の業務ルールに、どの程度対応できるかを確認しましょう。ノーコード・ローコードで設定できるか、専門知識が必要かなども重要なポイントです。
- サポート体制:導入時だけでなく、運用開始後のトラブル対応や不明点の質問に対するサポート体制が充実しているかを確認しましょう。日本語でのサポートがあるか、対応時間などもチェックが必要です。
- セキュリティ:企業の機密情報や個人情報を扱うことになるため、データ保護のためのセキュリティ対策が十分に講じられているかを確認しましょう。アクセス権限の設定やデータ暗号化、監査ログの取得などができるかも重要な観点です。
- 他システムとの連携:現在利用している基幹システムやクラウドサービスとの連携が可能か、APIが提供されているかなども確認することで、将来的な拡張性や業務効率化の幅が広がります。
これらのポイントを自社の規模、ITリテラシー、予算、そして将来の事業計画などを踏まえて比較検討することで、ワークフロー改善を成功に導く最適なツールを選ぶことができるでしょう。
作っただけでは終わらせない!ワークフロー改善の進め方
ワークフローは一度作成したら終わりではなく、継続的に改善し、組織に定着させていくことが何よりも重要です。このセクションでは、作成したワークフローを形骸化させず、さらに効果を高めていくための運用フェーズの進め方を具体的に解説します。業務改善を一過性のイベントで終わらせることなく、組織文化として根付かせるための仕組みづくりについて見ていきましょう。
テスト運用で効果を測定し改善サイクルを回す(PDCA)
新しいワークフローを導入する際は、いきなり全社展開するのではなく、まずは特定の部署や業務に限定して試験的に導入する「スモールスタート」をおすすめします。これにより、予期せぬ課題や現場からのフィードバックを早期に発見し、大きなリスクなしに修正できます。
テスト運用の期間中には、導入前に設定したKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が実際にどの程度改善されたかを定量的に測定しましょう。例えば、「申請から承認までの平均時間」「差し戻し率」「エラー発生件数」などが主な測定項目となります。これらのデータを基に、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)というPDCAサイクルを回し、ワークフローを継続的にブラッシュアップしていくことが成功の鍵となります。
定期的な見直しとフィードバックの仕組みを構築する
ビジネス環境や組織体制は常に変化するため、ワークフローも一度作ったら終わりではありません。導入後も半期に一度、あるいは一年に一度など、定期的に見直しの機会を設けることが重要です。見直しの際には、ワークフローが現状の業務プロセスに適合しているか、新たな課題が発生していないかを確認します。
また、日々の運用の中で現場担当者が感じる「使いにくい点」や「もっと効率化できるアイデア」を吸い上げるための仕組みを構築しましょう。例えば、簡単なフィードバックフォームを設置したり、定期的にヒアリング会を開催したりすることで、現場の生の声を継続的な改善に繋げることができます。現場の意見を積極的に取り入れることで、ワークフローはより実態に即したものとなり、定着率も向上します。
成功事例を横展開し、全社的な業務改善へつなげる
特定の部署や業務でワークフロー改善が成功し、定量的な効果が得られたら、その成功事例を社内全体に積極的に共有しましょう。例えば、「ワークフロー導入により、月間20時間の残業削減に成功」「〇〇申請の承認時間が平均3日から1日に短縮」といった具体的な成果を社内報や朝礼、全体会議などで発表します。
具体的な成功体験は、他の部署が業務改善に取り組む際の強力な動機付けとなり、全社的な業務改善活動へと波及させる起爆剤となります。成功事例を共有することで、業務改善担当者自身の社内での評価や信頼向上にも繋がり、さらなるプロジェクト推進の足がかりとなるでしょう。
業務改善担当者のためのワークフローQ&A
ワークフローの作成や導入を進める中で、業務改善担当者の方々が直面しがちな具体的な疑問や不安があることと思います。ここでは、そうした懸念を解消し、スムーズにプロジェクトを推進できるよう、よくある質問にお答えしていきます。これまで解説してきた内容を補足しながら、皆さんの疑問を解決し、実用的な情報を提供できれば幸いです。
Q. ワークフロー作成はどの部署が主導すべきですか?
ワークフローの作成・改善プロジェクトを主導する部署は、企業の規模や体制によってさまざまです。一般的には、全社的な視点で業務改善をミッションとする経営企画部や業務改革推進室が中心となることが多いです。
また、全社横断的な業務を所管する総務部や人事部、システム導入の専門知識を持つ情報システム部などが主導するケースも見られます。どの部署が主導するにしても、「誰が」主導するかよりも「いかに現場を巻き込むか」がプロジェクト成功の鍵を握ります。対象となる業務を担当する部署のメンバーと密に連携し、プロジェクトチームを組成することが非常に重要です。
Q. 現場の協力が得られない場合、どうすれば良いですか?
ワークフローの変更は、現場の業務プロセスに直接影響するため、協力を得るのが難しいと感じることもあるかもしれません。そのような場合、まずトップダウンで変更を強制するのではなく、現状の業務で現場の担当者が何に困っているのかを丁寧にヒアリングし、共感を示す姿勢が重要です。彼らの「困りごと」を理解し、共有することで、信頼関係を築く第一歩となります。
その上で、新しいワークフローが「管理者のため」ではなく、「現場担当者の負担を軽減するため」のものであることを具体的に説明してください。例えば、「手作業でのデータ入力が減ることで、ミスが大幅に減少する」「申請書の差し戻しが少なくなるため、二度手間がなくなる」「承認状況がシステム上で一目瞭然になるため、承認者が不在でも進捗が止まらない」といった、具体的なメリットを伝えることで、担当者自身の業務が楽になるというイメージを持ってもらえます。
また、一度に全てを変更しようとせず、協力的な一部のメンバーや部署から小規模にテスト運用を始め、そこで成功事例を作るアプローチも有効です。成功体験を積み重ねることで、周囲の納得感も得られやすくなります。
Q. 複雑な業務プロセスを簡潔にまとめるコツはありますか?
複雑な業務プロセスをフロー図に落とし込む際には、以下のコツを参考にしてみてください。まず、業務の8割を占める「正常な流れ(ハッピーパス)」と、稀に発生する「例外的な処理」を明確に切り分けることが重要です。フロー図にはまず本流のみを記載し、全体像を分かりやすく示します。例外処理や詳細な手順は、別のフロー図に分割するか、補足説明や注釈として整理することで、図の可読性が格段に向上します。
次に、複数の業務が絡み合っている場合、無理に一枚のフロー図にまとめようとしないことです。業務の単位ごとにフロー図を分割し、それぞれの図で「何の業務の、どの範囲」を示しているかを明記すると良いでしょう。これにより、各プロセスの理解が深まり、修正や改善も容易になります。全体像と詳細を適切に分離し、シンプルさを優先することで、誰が見ても理解しやすいワークフロー図を作成できます。
まとめ
本記事では、紙やExcelでの申請・承認業務に追われる業務改善担当者の方々に向けて、ワークフローの基本的な概念から具体的な作成手順、そして継続的な改善の進め方までを網羅的に解説しました。ワークフローの作成は、単なる図の作成作業ではありません。それは、これまで見えなかった業務プロセスを可視化し、潜在的な課題を特定し、業務を標準化するための強力な一歩となるものです。
ワークフローを整備することで、業務の属人化を防ぎ、意思決定の迅速化、ひいては内部統制の強化にもつながります。そして何よりも、現場の担当者が日々の煩雑な業務から解放され、より本質的な業務に集中できる「安心感」を提供できるのです。この「安心感」こそが、業務改善担当者である皆さんの最大の成果であり、社内での信頼と評価を高める源泉となるでしょう。
「ワークフローは一度作ったら終わり」ではありません。作成したワークフローは、テスト運用や定期的な見直し、現場からのフィードバックを通じて、常に最適化を図る必要があります。本記事でご紹介した「PDCAサイクル」を回し、成功事例を積極的に社内へ展開することで、皆さんの取り組みは全社的な業務改善へと波及し、持続可能な改善文化を醸成する起爆剤となるはずです。
まずは、自社の身近な業務の可視化から始めてみましょう。本記事で得た知識と実践的なノウハウを武器に、自信を持って一歩を踏み出してください。皆さんの業務改善プロジェクトの成功を心より応援しています。