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BIツールとは

BIツールとは

BIツールとは

「データは新たな石油である」と言われて久しい現代、企業活動によって日々生成される膨大なデータは、間違いなくビジネスにおける最も価値ある資源の一つとなりました。しかし、その価値を最大限に引き出し、競争優位性に繋げられている企業は、まだ決して多くはありません。

多くの企業では、依然として個人の「経験と勘、そして度胸(KKD)」に基づいた意思決定が主流であり、データは部門ごとにサイロ化(分断)され、有効に活用されていないのが実情です。Excelにデータを集約し、手作業でグラフを作成するものの、その作業に膨大な時間がかかり、リアルタイムな経営状況を把握するには至らない、という悩みを抱える担当者も少なくないでしょう。

このような課題を解決し、企業を「データドリブン(Data-Driven)」な組織、すなわちデータに基づいて客観的かつ合理的な意思決定を行う組織へと変革させるための羅針盤となるのが、「BI(ビジネスインテリジェンス)ツール」です。

BIツールは、単にデータを綺麗なグラフにするための「可視化ツール」ではありません。社内に散在する様々なデータを集約・統合し、誰もが直感的に分析できるようにすることで、これまで見えなかったビジネスの課題や機会を発見し、迅速かつ的確な次の一手(アクション)に繋げるための強力な武器となります。

この記事では、BIツールとは一体何なのか、その基本的な概念から、具体的な機能、失敗しない選び方、そして組織にデータ活用文化を根付かせるためのポイントまで、可能な限り深く、そして分かりやすく解説していきます。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の鍵を握るBIツールのすべてを、この一枚の羅針盤に記します。

 

BI(ビジネスインテリジェンス)とBIツールの基本

まず、BIツールを正しく理解するために、その根底にある「BI(ビジネスインテリジェンス)」という概念から紐解いていきましょう。

 BI(ビジネスインテリジェンス)とは何か?

BI(Business Intelligence)とは、企業の様々な活動によって蓄積される膨大なデータを、収集・統合・分析・可視化し、それを基に経営や事業に関する合理的な意思決定を行うための手法や概念そのものを指します。

例えば、

  • どの地域の、どの年齢層に、どの商品が最も売れているのか?

  • 広告キャンペーンの費用対効果(ROI)はどのくらいか?

  • 営業担当者個々のパフォーマンスと、成約率の高い顧客の傾向は?

  • 工場の生産ラインで、どの工程がボトルネックになっているのか?

こうした問いに対して、経験や勘ではなく、客観的なデータという「事実」に基づいて答えを導き出し、経営戦略や業務改善に活かしていく活動全体がBIです。

BIツールとは?その役割と目的

BIツールとは、前述したBI活動を、専門家でなくとも効率的かつ効果的に実践するために開発されたアプリケーションソフトウェアの総称です。

その最大の役割は、企業内に散在するデータを「情報」へ、そして「知見(インサイト)」へと昇華させることにあります。

  1. データ(Data): 単なる事実や数値の羅列(例:売上伝票の記録、Webサイトのアクセスログ)。

  2. 情報(Information): データを整理・加工し、意味のある形にしたもの(例:月別・商品別の売上集計表)。

  3. 知見(Insight): 情報を分析し、ビジネス上の意思決定に繋がる気づきや発見を得ること(例:「A商品の売上は、特定のWeb広告経由で訪問した20代女性に集中しており、クロスセル率も高い」という発見)。

BIツールは、この「データ→情報→知見」というプロセスを高速で実行し、企業の意思決定サイクルを加速させることを目的としています。

なぜ今、BIツールが必要なのか?

BIという概念自体は1990年代から存在しましたが、近年その重要性が急速に高まっています。その背景には、以下の3つの大きな環境変化があります。

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進: 多くの企業が経営課題としてDXに取り組む中、その成功の鍵はデータ活用にあります。BIツールは、DXを推進するための具体的なデータ活用基盤として不可欠な存在です。

  • データの爆発的増加(ビッグデータ): IoTデバイスの普及、SNSの浸透、各種業務システムのクラウド化などにより、企業が扱うデータ量は爆発的に増加しています。これらの多様で膨大なデータを人力で処理・分析することは、もはや不可能です。

  • 市場環境の変化の高速化: 顧客ニーズの多様化やグローバル競争の激化により、市場はかつてないスピードで変化しています。この変化に迅速に対応し、競合に先んじるためには、リアルタイムに近いデータを基にした迅速な意思決定が求められます。

1-4. Excelによるデータ分析の限界とBIツールとの決定的違い

「データ分析ならExcelでもできるのでは?」という疑問は、BIツールの導入を検討する際に必ず出てくるものです。確かにExcelは優れた表計算ソフトであり、多くのビジネスパーソンにとって最も身近な分析ツールです。しかし、本格的なデータ活用においては、Excelにはいくつかの越えられない「壁」が存在します。

比較項目 Excel BIツール
扱えるデータ量 限界あり(約104万行)。数万行を超えると動作が極端に遅くなる。 膨大なデータに対応。数千万~数億行のデータも高速に処理可能。
リアルタイム性 低い。データソースから手動でデータをコピー&ペーストする必要があり、常に情報が古い。 高い。データソースに直接接続し、ダッシュボードを自動で更新。常に最新の状況を把握可能。
データの統合・加工 手作業で非効率。VLOOKUP関数やマクロを駆使する必要があり、属人化しやすい。 自動化・効率化。複数の異なるデータソース(DB、クラウド、ファイル等)を簡単に統合・加工できる。
インタラクティブな分析 静的。グラフの切り口を変えるには、都度、元データやピボットテーブルを操作する必要がある。 動的・直感的。グラフ上の要素をクリックするだけで、データを深掘り(ドリルダウン)したり、絞り込んだりできる。
共有とセキュリティ 困難で危険。ファイルをメール添付で共有すると、バージョン管理が煩雑になり、セキュリティリスクも高い。 安全で簡単。Webブラウザ経由でダッシュボードを共有。閲覧者ごとにアクセス権限を細かく設定可能。
属人化 しやすい。「神Excel」のように、作成者しかメンテナンスできない複雑なファイルが生まれがち。 しにくい。分析ロジックやレポートがサーバー上で一元管理され、組織の資産として共有・継承しやすい。

Excelが個人のデスクで行う「作業」だとすれば、BIツールは組織全体でデータという資産を共有し、活用するための「プラットフォーム」です。両者は競合するものではなく、目的に応じて使い分けるべきものと言えるでしょう。

BIツールでできること【主要機能】

BIツールは、具体的にどのような機能を持っているのでしょうか。ここでは、データを取り込んでから、意思決定に繋がる知見を得るまでのプロセスに沿って、主要な機能を解説します。

2-1. データの収集・統合(ETL/ELT機能)

企業のデータは、会計システム、販売管理システム、SFA/CRM、Google Analytics、Excelファイルなど、社内外の様々な場所に散らばっています。BIツールは、これらのバラバラなデータソースに接続し、分析に必要なデータを一箇所に集める機能を持っています。 このプロセスはETL(Extract: 抽出, Transform: 変換, Load: 格納)と呼ばれ、多くのBIツールが簡易的なETL機能を内包しています。

2-2. データの加工・モデリング

収集したデータは、そのままでは分析に適していないことがほとんどです。例えば、「日付」のフォーマットがバラバラだったり、不要なデータが含まれていたり、複数のテーブルを結合する必要があったりします。BIツールは、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)上の直感的な操作で、これらのデータクレンジングや加工を行うことができます。

2-3. レポーティング(定型レポートの自動化)

多くの企業では、日次、週次、月次といったサイクルで、同じ形式のレポート(売上報告書、Webサイトアクセスレポートなど)が作成されています。BIツールを使えば、これらの定型レポートの作成と配信を完全に自動化できます。これにより、担当者は単純な集計作業から解放され、より付加価値の高い分析業務に集中できるようになります。

2-4. OLAP分析(多次元分析)

OLAP(Online Analytical Processing)は、BIツールの中核をなす分析機能です。蓄積されたデータを「売上」「利益」といった指標と、「時間」「地域」「商品」「顧客」といった様々な分析軸を組み合わせて、多次元的に分析する手法です。OLAP分析には、主に以下のようなインタラクティブな操作があります。

  • ドリルダウン/ドリルアップ: データの階層を掘り下げたり(ダウン)、逆に上がったり(アップ)する操作。 (例:「関東地方」の売上をクリック → 「東京」「神奈川」「千葉」の売上を表示 → 「東京」をクリック → 「渋谷区」「新宿区」の売上を表示)

  • スライス/ダイス: 多次元のデータキューブ(サイコロ)を、特定の軸で切り出して(スライス)、さらに細かく切り出して(ダイス)分析する操作。 (例:全商品の売上データから、「商品カテゴリ:飲料」かつ「地域:東京」のデータだけを切り出して見る)

これらの操作により、ユーザーは仮説を立てながら、対話するようにデータを深掘りし、問題の原因や新たなビジネスチャンスを発見することができます。

2-5. ダッシュボード(データの可視化)

BIツールの最も象徴的な機能がダッシュボードです。売上、利益、顧客数、WebサイトのPV数といった複数の重要業績評価指標(KPI)を、グラフや地図、メーターなどの視覚的な表現を用いて、一つの画面にまとめて表示する機能です。 ダッシュボードを見るだけで、ビジネスの現状や異常をひと目で把握でき、迅速な意思決定を支援します。多くのBIツールでは、表示されたグラフをクリックすることで、前述のOLAP分析に連携するインタラクティブな操作が可能です。

2-6. データマイニングと予測分析(高度な分析機能)

一部の高度なBIツールには、統計学的な手法を用いて、膨大なデータの中から人間では気づけないようなパターンや法則性を見つけ出す「データマイニング」や、過去のデータから将来の数値を予測する「予測分析」といった機能が搭載されています。これにより、「どのような顧客が解約しやすいか」「来月の商品の需要はどのくらいか」といった、より高度な分析が可能になります。

2-7. アラート機能

あらかじめ設定した閾値(しきいち)をKPIが超えたり、下回ったりした場合に、メールやチャットツールで自動的に通知を送る機能です。これにより、担当者は常にダッシュボードを監視していなくても、業績の急な変動やシステムの異常といった重要な変化を即座に察知できます。

BIツールの種類とアーキテクチャ

BIツールは、提供形態や利用者のスキルレベルなど、いくつかの切り口で分類することができます。自社に合ったツールを選ぶために、これらの種類を理解しておきましょう。

3-1. 提供形態による分類

  • オンプレミス型: 自社のサーバーにソフトウェアをインストールして利用する形態。自社のセキュリティポリシーに準拠した厳格な管理が可能ですが、サーバーの構築・運用にコストと専門知識が必要です。

  • クラウド型(SaaS): インターネット経由でサービスとして提供される形態。サーバーの管理は不要で、初期費用を抑えて迅速に導入できるため、現在の主流となっています。場所を選ばずにアクセスできる点もメリットです。

3-2. 利用者による分類

  • 従来型BI(専門家向け): 情報システム部門の担当者やデータアナリストといった専門家が、事前に定義されたデータマートやキューブを構築し、それに基づいて分析レポートを作成する形態。データガバナンスを効かせやすい反面、現場の担当者が分析を依頼してから結果を得るまでに時間がかかるという課題がありました。

  • セルフサービスBI(全社員向け): 近年の主流となっている形態で、経営層や現場のビジネスユーザー自身が、専門家の助けを借りずに、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で自由にデータを探索・分析できることを目指したツールです。代表的なツールとして、TableauやPower BIが挙げられます。これにより、組織全体のデータリテラシー向上と、データドリブン文化の醸成が期待できます。

3-3. データ連携方式による分類

  • インポート(インメモリ)方式: データソースからBIツール内の高速なメモリにデータをコピー(インポート)して分析する方式。非常に高速なレスポンスで分析できる反面、コピーした時点のデータとなるため、リアルタイム性はやや劣ります。

  • ダイレクトクエリ(ライブ接続)方式: BIツール内にデータを保持せず、分析の都度、データソースに直接問い合わせ(クエリ)を実行する方式。常に最新のデータで分析できるメリットがありますが、データソース側の性能によってはレスポンスが遅くなる可能性があります。

多くのモダンなBIツールは、両方の方式をサポートしており、用途に応じて使い分けることができます。

失敗しないBIツールの選び方【7つのステップ】

BIツールは決して安価な買い物ではなく、導入の失敗は大きな損失に繋がります。ここでは、自社にとって最適なツールを選び抜くための、実践的な7つのステップを紹介します。

ステップ1:導入目的と解決したい課題を明確にする

最も重要な最初のステップです。「流行っているから」という理由で導入するのは、失敗の典型例です。 「経営会議の意思決定を迅速化したい」「営業部門のExcel集計作業を月20時間削減したい」「Web広告の費用対効果を可視化し、CPAを10%改善したい」など、具体的かつ測定可能な目的を設定します。この目的が、後のすべての選定基準の拠り所となります。

ステップ2:「誰が」「どのように」使うかを定義する

ツールを利用するユーザー(ペルソナ)を具体的に想定します。

  • 利用者: 経営層か、データアナリストか、現場の営業担当者か?

  • ITリテラシー: 利用者はExcelのピボットテーブルを使いこなせるレベルか、あるいはもっと初心者か?

  • 利用シーン: PCの前に座ってじっくり分析するのか、外出先でスマートフォンからKPIを確認するのか?

これにより、求める操作性(専門家向けか、セルフサービスか)や、モバイル対応の要否などが明確になります。

ステップ3:必要な機能を洗い出し、優先順位を付ける

第2章で解説した機能を参考に、自社の目的に照らして必要な機能をリストアップします。多機能なツールは魅力的ですが、使わない機能のために高額なライセンス料を払うのは無駄です。Must(必須)、Want(できれば欲しい)、Nice to have(あれば嬉しい)のように、機能に優先順位を付けておくと、比較検討がしやすくなります。

ステップ4:接続したいデータソースを確認する

自社のデータがどこにあるかを確認し、候補となるBIツールがそれらのデータソースに接続できるか(対応コネクタがあるか)を確認します。Salesforce、Google Analytics、Oracle Database、AWS Redshift、オンプレミスのSQL Serverなど、接続したいデータソースは多岐にわたるはずです。

ステップ5:提供形態(クラウド/オンプレミス)と予算を決める

自社のセキュリティポリシーやITインフラの状況、そして予算を考慮して、クラウド型かオンプレミス型かを選択します。ライセンス費用だけでなく、導入支援や保守サポート、教育にかかる費用も含めた総所有コスト(TCO)で比較検討することが重要です。

ステップ6:複数のツールを比較検討し、候補を絞る(PoCの重要性)

ここまでの要件を基に、複数のツールを比較検討し、2〜3製品に候補を絞ります。製品のWebサイトや資料だけで判断せず、無料トライアルを積極的に活用しましょう。 さらに重要なのが、PoC(Proof of Concept:概念実証)の実施です。実際の自社のデータを使い、解決したい課題をテーマに、候補ツールで小規模なダッシュボードを構築してみます。これにより、カタログスペックだけでは分からない、実際の操作感やパフォーマンス、実現の難易度などを肌で感じることができます。

ステップ7:サポート体制とコミュニティを確認する

導入後に問題が発生した際に、ベンダーや代理店からどのようなサポートを受けられるかは非常に重要です。日本語でのサポートの有無、対応時間、レスポンスの速さなどを確認しましょう。 また、ユーザーコミュニティの活発さも選定のポイントになります。活発なコミュニティがあれば、他のユーザーの活用事例を学んだり、不明点を質問して解決策を得たりすることができます。

代表的なBIツール徹底比較

市場には数多くのBIツールが存在しますが、ここでは特に知名度と実績の高い代表的なツールを比較紹介します。

ツール名 強み・特徴 こんな企業・用途におすすめ
Tableau 圧倒的な表現力と美しさを誇るビジュアライゼーション。直感的で探索的なデータ分析が得意。 データから新たな「発見」をしたい、データの視覚的なストーリーテリングを重視する企業。マーケターやアナリスト。
Microsoft Power BI ExcelやOffice 365との親和性が非常に高い。圧倒的なコストパフォーマンス。 既にMicrosoft製品を多用している企業。Excelライクな操作性を求める現場ユーザー。スモールスタートしたい企業。
Looker (Google Cloud) LookMLという独自のモデリング言語により、データガバナンスと一貫性を担保しやすい。 全社で統一された指標を使い、データガバナンスを重視したい企業。エンジニア文化が強く、データ基盤が整備されている企業。
Qlik Sense 「連想技術」により、データ全体の関係性をクリック操作だけで自由に探索できる。 データの全体像を把握し、思わぬ関係性を発見したい分析用途。仮説検証型の分析。
Domo 500以上の豊富なコネクタとETL機能を持ち、データ連携から可視化までをワンストップで提供。 クラウドサービスを多用しており、データ連携の手間を省きたい企業。経営層がリアルタイムにKPIを把握したい用途。

5-1. Tableau(タブロー)

Salesforce傘下のBIツールで、業界のリーダー的存在。「データをみて、わかるようにする」というミッションの通り、ドラッグ&ドロップの簡単な操作で、美しくインタラクティブなグラフやダッシュボードを作成できる点が最大の強みです。探索的な分析(データを見ていく中で気づきを得る)を得意としています。

5-2. Microsoft Power BI

Microsoftが提供するBIツール。Excelと同じ感覚で使える操作性(Power Query, Power Pivot)と、Microsoft 365に含まれるライセンスもあるなど、圧倒的なコストパフォーマンスが魅力です。Microsoft製品(Azure, Dynamics 365, Teamsなど)との連携もスムーズで、特にMicrosoftエコシステムを導入している企業にとっては第一候補となるでしょう。

5-3. Looker (Google Cloud)

Google Cloud傘下のBIツール。最大の特徴は「LookML」という独自のモデリング言語です。エンジニアがLookMLで「売上」「利益」といったビジネス指標の計算ロジックやデータ間の関係性を一度定義すれば、ビジネスユーザーは誰でも、その統制されたデータを使い、一貫性のある分析を行うことができます。セルフサービスBIの自由度と、データガバナンスの両立を目指すツールです。

5-4. Qlik Sense

特許技術である「連想技術(Associative Engine)」がコアな強み。多くのBIツールでは、何かを絞り込むと関係ないデータは見えなくなりますが、Qlik Senseでは、選択したものと「関連があるデータ」と「関連がないデータ」が色分けで表示されます。これにより、想定外のデータの繋がりや、見落としていたインサイトを発見しやすくなります。

5-5. Domo

クラウドネイティブなBIプラットフォーム。特にデータ連携機能に強みを持ち、1,000種類以上の豊富なコネクタを提供しています。ETL機能も強力で、通常は専門家が必要なデータパイプラインの構築を、比較的容易に行うことができます。データ連携から分析、共有まで、BIに必要な機能がオールインワンで提供されているのが特徴です。

BIツールの具体的な活用事例

BIツールは、特定の部門だけでなく、企業のあらゆる部門で活用できます。ここでは、代表的な部門での活用事例を紹介します。

  • 経営企画部門:経営ダッシュボードによる迅速な意思決定 売上、利益、コスト、キャッシュフローといった全社の重要KPIを統合した経営ダッシュボードを構築。リアルタイムで業績をモニタリングし、問題の兆候を早期に発見。迅速かつデータに基づいた経営判断を下すことができます。

  • 営業部門:SFA/CRMデータ分析による売上予測と案件管理 SalesforceなどのSFA/CRMツールと連携し、営業パイプライン(案件の進捗状況)、予実管理、担当者別パフォーマンスなどを可視化。失注案件の傾向分析から営業プロセスの改善点を見つけたり、過去の受注データから成約確度の高い顧客を予測したりすることが可能になります。

  • マーケティング部門:広告効果測定と顧客セグメント分析 Google Analyticsや各種広告媒体のデータを統合し、キャンペーン全体の費用対効果(ROI)を可視化。顧客の購買データとWeb行動データを組み合わせて詳細な顧客セグメント分析を行い、パーソナライズされたマーケティング施策に繋げます。

  • 生産管理・製造部門:生産ラインの稼働状況可視化と品質管理 工場のセンサーデータ(IoT)を取り込み、生産ラインの稼働率や不良品の発生率などをリアルタイムで監視。ボトルネックとなっている工程を特定して改善したり、不良品の発生パターンを分析して品質向上に役立てたりします。

  • 人事部門:従業員データ分析による人材配置の最適化 従業員の勤怠データ、評価データ、スキル情報などを分析し、離職率の高い部署の傾向を把握したり、ハイパフォーマーの特性を分析して採用活動に活かしたり、最適な人材配置を検討したりします(ピープルアナリティクス)。

BIツール導入を成功させ、データ活用文化を醸成するポイント

最後に、最も重要な点です。どんなに優れたBIツールを導入しても、それが使われなければ意味がありません。BIツール導入を単なる「ツールの導入」で終わらせず、組織全体にデータ活用文化を根付かせるための5つのポイントを解説します。

  1. スモールスタートで成功体験を積む 最初から全社展開を目指すのではなく、まずは特定の部門や課題に絞って導入し、小さな成功体験を積むことが重要です。「あの部署はBIツールで業務が楽になったらしい」という評判が、他の部署への展開をスムーズにします。

  2. データガバナンスを確立する 誰でも自由にデータを使える環境は、一方で、誤ったデータの使用や指標の乱立を招くリスクも孕んでいます。データの管理者や責任者を定め、社内での指標の定義を統一するなど、データの品質と一貫性を保つためのルール(データガバナンス)を整備することが不可欠です。

  3. 全社的なデータリテラシー教育を実施する データを正しく読み解き、活用するためのスキル(データリテラシー)は、一部の専門家だけでなく、すべての社員に求められます。ツールの使い方だけでなく、「そもそもデータをどう見て、どう考え、どうアクションに繋げるか」という基礎的な教育を継続的に実施することが、文化醸成の土台となります。

  4. 推進役となるキーパーソンや部門を設置する 社内でのBIツール活用を推進し、ユーザーからの質問に答えたり、活用事例を共有したりする、旗振り役となる専門部署(CoE: Center of Excellence)やキーパーソンを任命することが、活用の定着を大きく後押しします。

  5. 経営層の強力なコミットメント データドリブンな組織への変革には、経営層自らがBIツールを使い、データに基づいて語り、データに基づいた意思決定を実践する姿勢を示すことが何よりも重要です。経営層の強いコミットメントが、組織全体の意識を変える最大の原動力となります。

まとめ

本記事では、BIツールの基本的な概念から、その多岐にわたる機能、実践的な選び方、具体的な活用事例、そして導入を成功に導くための組織的な取り組みまで、包括的に解説してきました。

改めて強調したいのは、BIツールは魔法の杖ではないということです。導入すれば自動的に課題が解決するわけではありません。BIツールは、データという広大な海を航海するための、極めて高性能な「羅針盤」であり、「海図」です。

その羅針盤をどう使いこなし、どの航路を選び、どこを目指すのかを決めるのは、あくまで「人」であり「組織」です。

ツール導入をゴールとするのではなく、組織の誰もがデータという共通言語で会話し、客観的な事実に基づいて議論し、より良い未来を選択していく――そのような「データドリブンカルチャー」を醸成するための、変革の旅の始まりと捉えること。それこそが、BIツールという投資の効果を最大化し、DX時代の荒波を乗り越えていくための唯一の道筋と言えるでしょう。

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