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システム開発とは?工程・費用・外注のポイントを初心者向けに解説

システム開発とは?工程・費用・外注のポイントを初心者向けに解説

1. システム開発とは?定義と目的

システム開発とは、企業や組織が抱える業務課題を解決するために、ITテクノロジーを活用して業務の仕組み(システム)を構築することです。

「システム」という言葉は広い意味を持ちますが、ビジネスの現場では「コンピュータやネットワーク、ソフトウェアを組み合わせて、特定の業務を効率化・自動化する仕組み」を指します。

システム開発の目的

企業がシステム開発を行う主な目的は、以下の4つです。

1. 業務効率化とコスト削減

従来、人の手で行っていた業務をシステムで自動化することで、作業時間を大幅に削減できます。

具体例:

  • 手作業の勤怠管理 → 勤怠管理システムで自動集計
    • 効果:月次の給与計算業務が3日から1日に短縮
  • 紙の請求書作成 → 販売管理システムで自動発行
    • 効果:請求書作成時間が80%削減

2. データの一元管理と可視化

各部署でバラバラに管理されていた情報を一箇所に集約し、いつでも誰でも必要な情報にアクセスできる環境を構築します。

具体例:

  • 顧客管理システム(CRM): 顧客の基本情報、購入履歴、問い合わせ履歴を一元管理
    • 効果:営業担当者が顧客情報を検索する時間が平均5分から30秒に短縮
  • 在庫管理システム: リアルタイムで在庫状況を可視化
    • 効果:欠品による機会損失を年間500万円削減

3. 意思決定のスピードアップ

システムがデータを自動集計・分析することで、経営者や管理職が素早く判断できるようになります。

具体例:

  • BIツール(Business Intelligence): 売上データをリアルタイムでダッシュボード表示
    • 効果:月次レポート作成が不要になり、経営会議の準備時間が70%削減

4. 競争力の強化

独自のシステムを開発することで、他社との差別化を図り、競争優位性を確立できます。

具体例:

  • ECサイト: 独自の推薦アルゴリズムで顧客の購買体験を向上
    • 効果:リピート率が25%向上、顧客単価が平均1,500円アップ

身近なシステム開発の具体例

システム開発は、私たちの日常生活やビジネスのあらゆる場面で活用されています。

システムの種類 用途 導入企業例
勤怠管理システム 従業員の出退勤を自動記録し、給与計算と連携 中小企業から大企業まで幅広く
顧客管理システム(CRM) 顧客情報、購入履歴、問い合わせ履歴を一元管理 営業組織を持つ企業
在庫管理システム リアルタイムで在庫を把握し、発注を最適化 小売業、製造業、物流業
会計システム 収支管理、経費精算、財務諸表作成を自動化 ほぼすべての企業
ECサイト オンラインでの商品販売から決済、配送管理まで 小売業、メーカー
予約システム ホテル、レストラン、美容院などの予約を管理 サービス業
電子カルテシステム 患者情報、診療履歴、処方箋を電子管理 医療機関

これらすべてのシステムは、「業務効率化」と「データ活用」を目的として開発されています。


システム開発が必要な3つのサイン

自社でシステム開発を検討すべきタイミングは、以下のような課題が顕在化したときです。

サイン1:同じ作業を繰り返している

  • 毎月、Excelで同じデータ集計作業をしている
  • 顧客からの問い合わせ対応に、毎回同じ情報を調べている
  • 請求書を手作業で作成している

→ システム化で自動化すべき

サイン2:情報が分散していて探すのに時間がかかる

  • 顧客情報が各営業担当者のExcelファイルに分散
  • 過去の見積書を探すのに、フォルダを何階層も辿る必要がある
  • 在庫状況を把握するために、各倉庫に電話で確認している

→ データベース化して一元管理すべき

サイン3:人為的なミスが頻発している

  • 手入力によるデータ入力ミス
  • 伝言ゲームによる情報の伝達ミス
  • ダブルブッキング(予約の重複)

→ システムによる自動チェックと制御が必要

2. システム開発とソフトウェア開発・アプリ開発の違い

「システム開発」「ソフトウェア開発」「アプリ開発」という言葉は、しばしば混同されますが、厳密には意味が異なります。ここでは、それぞれの違いを明確にします。

3つの用語の定義

用語 定義 範囲 含まれるもの
システム開発 ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた「業務の仕組み全体」を構築すること 最も広い ソフトウェア、ハードウェア、ネットワーク、データベース、運用・保守
ソフトウェア開発 コンピュータ上で動作するプログラムやアプリケーションを作成すること 中程度 プログラム、アプリケーション
アプリ開発 スマートフォンやPC上で動作する単体のアプリケーションを開発すること 最も狭い スマホアプリ、Webアプリ、デスクトップアプリ

具体例で理解する:ECサイトのシステム開発

ECサイト(オンラインショップ)を例に、3つの違いを見てみましょう。

システム開発の範囲(最も広い)

ECサイトのシステム開発には、以下のすべてが含まれます。

  1. Webサイト(ソフトウェア)

    • 商品一覧ページ
    • カート機能
    • 決済画面
  2. 在庫管理システム(ソフトウェア)

    • リアルタイムで在庫数を表示
    • 在庫が少なくなったら自動で発注
  3. 顧客管理システム(ソフトウェア)

    • 会員登録・ログイン機能
    • 購入履歴の管理
  4. 決済システム(ソフトウェア + 外部連携)

    • クレジットカード決済
    • 電子マネー決済
  5. サーバー(ハードウェア)

    • Webサイトを公開するためのサーバー
    • データベースサーバー
  6. ネットワーク(インフラ)

    • インターネット回線
    • セキュリティ対策(SSL証明書、ファイアウォール)
  7. 運用・保守

    • システムの監視
    • 障害対応
    • セキュリティアップデート

→ これらすべてを含めて「ECサイトのシステム開発」


ソフトウェア開発の範囲(中程度)

ソフトウェア開発は、上記の1〜4のプログラム部分のみを指します。

  • Webサイトのプログラム
  • 在庫管理システムのプログラム
  • 顧客管理システムのプログラム
  • 決済システムのプログラム

→ ハードウェアやネットワーク、運用・保守は含まない


アプリ開発の範囲(最も狭い)

アプリ開発は、さらに範囲が狭く、特定のアプリケーション単体のみを指します。

例えば、「ECサイトのスマホアプリ版」を開発する場合:

  • iOS版アプリ(Swift、SwiftUIで開発)
  • Android版アプリ(Kotlin、Jetpack Composeで開発)

→ アプリ単体の開発のみ。サーバーやデータベースは既にあるものを利用


まとめ:包含関係

システム開発(最も広い)
 ├── ソフトウェア開発
 │    ├── 業務システム(会計、勤怠管理など)
 │    ├── Webシステム(ECサイトなど)
 │    └── アプリ開発(最も狭い)
 │         ├── スマホアプリ
 │         ├── Webアプリ
 │         └── デスクトップアプリ
 ├── ハードウェア(サーバー、ネットワーク機器)
 ├── インフラ(ネットワーク、セキュリティ)
 └── 運用・保守

どの用語を使えばいい?

  • 「システム開発」: ハードウェアも含めた全体を構築する場合
    • 例:「新しい基幹システムを開発したい」
  • 「ソフトウェア開発」: プログラム部分のみを作成する場合
    • 例:「会計ソフトを開発したい」
  • 「アプリ開発」: スマホアプリやWebアプリを作成する場合
    • 例:「予約管理のスマホアプリを開発したい」

迷ったら「システム開発」を使えば、ほぼ間違いありません。

3. システム開発の種類と具体例

システム開発は、目的や用途によって大きく4つに分類されます。ここでは、各分類の特徴と、業界別の具体的な活用事例を紹介します。


1. 業務系システム開発

特徴: 企業の日常業務を効率化するための社内向けシステム

業務系システムは、企業内部の業務プロセスを自動化・効率化するために開発されます。「社内システム」「基幹系システム」とも呼ばれます。

代表的な業務系システム

システム名 主な機能 導入効果
会計システム 収支管理、経費精算、財務諸表作成、税務申告 経理業務の工数を50〜70%削減
人事・勤怠管理システム 給与計算、出退勤記録、有給管理、評価管理 給与計算ミスがゼロに、業務時間を60%短縮
販売管理システム 受発注管理、請求書発行、売上分析、在庫連携 請求書発行時間を80%削減、売上データを即座に可視化
生産管理システム 製造計画、工程管理、品質管理、原価計算 リードタイムを25%短縮、不良品率を50%削減
顧客管理システム(CRM) 顧客情報管理、営業活動記録、商談管理 営業効率が30%向上、成約率が20%アップ

業界別の活用事例

保険業界:顧客情報管理システム

課題:

  • 全国の支店で顧客情報が分散管理されており、情報共有ができない
  • 契約内容や保険金支払い状況を確認するのに時間がかかる
  • 紙のファイルで管理しており、セキュリティリスクが高い

導入システム:

  • クラウドベースの顧客管理システム
  • 全店舗で顧客情報を一元管理
  • 氏名、年齢、加入プラン、保険料、過去の傷病履歴などを即座に検索可能
  • 強固なセキュリティ対策(アクセス権限管理、通信暗号化)

導入効果:

  • 顧客対応時間が平均30%短縮
  • 情報入力ミスが90%削減
  • 顧客満足度が向上し、解約率が15%減少
  • 年間コスト削減額:約2,000万円

製造業:生産管理システム

課題:

  • 製造ラインの稼働状況がリアルタイムで把握できない
  • 部品の在庫管理が不十分で、欠品や過剰在庫が発生
  • 納期遅延が頻発し、顧客からのクレームが増加
  • 各部門で使うExcelがバラバラで、データ連携ができない

導入システム:

  • 生産管理システム(MES:Manufacturing Execution System)
  • 製造ラインの稼働状況をリアルタイムで可視化
  • 部品の発注から在庫管理、製造指示まで一気通貫で管理
  • 製造実績データの自動収集と分析

導入効果:

  • 製造リードタイムが平均25%短縮
  • 在庫コストが20%削減(過剰在庫の解消)
  • 納期遵守率が85%から98%に向上
  • 設備稼働率が15%向上
  • 年間コスト削減額:約3,000万円

物流業界:配送管理システム

課題:

  • ドライバーの配送ルートが非効率で、燃料費がかさむ
  • 配送状況がリアルタイムで把握できず、顧客からの問い合わせに答えられない
  • 再配達が多く、ドライバーの負担が大きい

導入システム:

  • 配送管理システム + GPS連携
  • AIによる最適ルート自動計算
  • リアルタイムで配送状況を追跡
  • 顧客への自動通知機能(「あと30分で到着します」)

導入効果:

  • 配送距離が平均18%短縮、燃料費が年間1,200万円削減
  • 再配達率が40%から15%に低下
  • ドライバーの労働時間が平均1時間/日 短縮
  • 顧客満足度が大幅に向上

2. Webシステム開発

特徴: インターネット経由でアクセスできる、ブラウザベースのシステム

Webシステムは、特定のソフトウェアをインストールする必要がなく、インターネットに接続できる環境があれば、どこからでもアクセスできるのが最大の特徴です。

代表的なWebシステム

システム名 主な機能 導入効果
ECサイト オンラインショップ、決済システム連携、配送管理 売上が実店舗の2〜3倍に
予約システム オンライン予約、予約状況の可視化、リマインド通知 電話対応時間を60%削減
社内ポータル 情報共有、ワークフロー管理、社内Wiki 情報検索時間を70%短縮
グループウェア スケジュール管理、ファイル共有、掲示板 会議の調整時間を50%削減
SaaS(クラウドサービス) 会計ソフト、プロジェクト管理ツールなど 初期費用を80〜90%削減

業界別の活用事例

飲食業界:予約システム

課題:

  • 電話予約の対応に時間がかかり、営業時間中の負担が大きい
  • 予約のダブルブッキングが月に数回発生
  • 顧客の来店履歴が管理されておらず、リピート戦略が打てない
  • 予約忘れによるドタキャンが多い

導入システム:

  • Web予約システム + 顧客管理(CRM)機能
  • 24時間いつでもオンライン予約可能
  • 来店履歴から好みのメニューを自動提案
  • 予約前日に自動リマインド通知

導入効果:

  • 予約対応の電話時間が60%削減
  • ダブルブッキングがゼロ
  • ドタキャン率が25%から8%に低下
  • リピート率が40%向上(好みのメニュー提案が効果的)
  • 顧客単価が平均1,200円アップ

小売業界:ECサイト

課題:

  • 実店舗のみの販売で、商圏が限られている(半径5km程度)
  • コロナ禍で来店客数が減少し、売上が前年比30%ダウン
  • オンライン販売に対応したいが、ノウハウがない

導入システム:

  • ECサイト(オンラインショップ)
  • 在庫管理システムと連携し、リアルタイムで在庫を表示
  • 決済システム(クレジットカード、電子マネー、後払い)
  • 配送業者との自動連携

導入効果:

  • オンライン経由の売上が月間500万円に成長
  • 全体の売上が前年比150%増(コロナ禍前の水準を回復)
  • 商圏が全国に拡大し、新規顧客を月間200名獲得
  • 実店舗とECサイトの在庫を一元管理し、機会損失を削減
  • リピート率が**実店舗25%、ECサイト45%**と、ECの方が高い

不動産業界:物件検索・内見予約システム

課題:

  • 顧客が問い合わせてから物件情報を送るまでにタイムラグがある
  • 内見予約の調整に、顧客と何度も電話でやり取りが必要
  • 競合他社のWebサイトの方が使いやすく、顧客を奪われている

導入システム:

  • 物件検索Webシステム
  • 条件(価格、間取り、駅徒歩など)で絞り込み検索
  • 360度パノラマ写真で室内を確認
  • オンラインで内見予約可能

導入効果:

  • 問い合わせから内見予約までの時間が平均3日から1日に短縮
  • 内見予約数が前年比200%増
  • Webサイト経由の成約率が15%向上
  • 営業担当者が物件紹介に費やす時間が50%削減

3. モバイルアプリ開発

特徴: スマートフォンやタブレットで動作するアプリケーション

モバイルアプリは、スマホの普及により急速に需要が拡大しています。位置情報、カメラ、プッシュ通知など、スマホ特有の機能を活用できるのが強みです。

代表的なモバイルアプリ

アプリの種類 用途 代表例
業務支援アプリ 営業支援(SFA)、経費精算、勤怠打刻 Salesforce、freee経費精算
消費者向けアプリ ゲーム、SNS、フィットネス記録、家計簿 LINE、Instagram、あすけん
O2Oアプリ 店舗のポイントカード、クーポン配信、店舗検索 楽天ポイント、スターバックス
金融アプリ モバイルバンキング、決済、投資 三菱UFJ銀行、PayPay、LINE証券

業界別の活用事例

小売業界:ポイントカードアプリ

課題:

  • プラスチックのポイントカードは忘れられやすい
  • 顧客の購買データを分析できない
  • 新商品の告知が店頭POPのみで、リーチが限定的

導入システム:

  • ポイントカードのスマホアプリ化
  • バーコード/QRコードでポイント付与
  • 購買履歴の自動記録
  • プッシュ通知でクーポン配信

導入効果:

  • ポイントカード利用率が60%から85%に向上
  • 購買データを分析し、パーソナライズされたクーポンを配信
  • 顧客単価が平均15%向上
  • リピート率が30%向上
  • アプリ経由のクーポン利用率が45%(紙のクーポンは15%)

物流業界:ドライバー向け配送支援アプリ

課題:

  • ドライバーが紙の配送伝票を手作業で確認
  • 配送ルートが非効率で、時間がかかる
  • 配送完了の報告が事務所に戻ってから

導入システム:

  • ドライバー向けスマホアプリ
  • 配送先の住所をGPSと連携して表示
  • 最適ルートを自動計算
  • 配送完了をアプリで即座に報告

導入効果:

  • 配送時間が平均20%短縮
  • 配送ミス(誤配)がゼロ
  • 事務処理時間が1日あたり1時間短縮
  • リアルタイムで配送状況を把握できるため、顧客対応が迅速に

4. 組込みシステム開発

特徴: 家電製品や産業機器などのハードウェアに組み込まれるシステム

組込みシステムは、特定の機能を実現するために、ハードウェアと一体化したソフトウェアです。「エンベデッドシステム」とも呼ばれます。

代表的な組込みシステム

分野 製品例 組込みシステムの役割
家電製品 エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ 温度制御、タイマー機能、省エネ制御
自動車 カーナビ、自動運転システム、エンジン制御 ルート案内、衝突回避、燃費最適化
医療機器 MRI、人工呼吸器、血糖測定器 精密な制御、データ記録
産業機器 工場の自動化ライン、ロボット、計測器 生産プロセスの制御、品質管理

業界別の活用事例

自動車業界:カーナビゲーションシステム

従来の課題:

  • 紙の地図では、目的地までのルートを自分で考える必要がある
  • 渋滞情報がリアルタイムで分からない
  • 道に迷った場合、立ち往生してしまう

組込みシステムの機能:

  • GPS位置情報と地図データベースを連携
  • リアルタイムで渋滞情報を取得(VICS)
  • 音声ガイドで運転中も安全にナビゲーション
  • スマホと連携して、音楽再生やハンズフリー通話

導入効果:

  • 目的地到着時間の精度が95%以上
  • 渋滞回避ルートで、所要時間を平均15%短縮
  • 運転中のスマホ操作を減らし、安全性向上

医療業界:人工呼吸器

組込みシステムの役割:

  • 患者の呼吸状態をセンサーでリアルタイム監視
  • 呼吸量、酸素濃度を自動調整
  • 異常を検知した場合、アラームで医療スタッフに通知
  • 過去のデータを記録し、治療方針の決定に活用

効果:

  • 患者の呼吸管理を24時間365日、高精度で実施
  • 医療スタッフの負担を軽減
  • 人為的なミスを防止

4. システム開発の手法4つを徹底比較

システム開発には複数の手法があり、プロジェクトの規模や目的、要件の明確さによって最適な方法が異なります。ここでは、代表的な4つの開発手法を詳しく解説します。


4つの開発手法:比較表

手法 開発の進め方 メリット デメリット 適したプロジェクト
ウォーターフォール 工程を順番に完了 ・計画が明確
・大規模対応
・進捗管理しやすい
・仕様変更に弱い
・完成まで実物が見れない
大規模システム、要件が明確な案件
アジャイル 短期間の開発を繰り返す ・柔軟に仕様変更可能
・早期リリース
・フィードバック反映
・計画がブレやすい
・全体像把握が難しい
Webサービス、スタートアップ
スパイラルモデル 工程ごとに試作品を作成 ・リスク早期発見
・段階的改善
・コストが増大
・納期が長い
新技術採用、不確実性の高い案件
プロトタイピング 試作品を作って検証 ・完成イメージを共有
・認識ズレ防止
・試作コストがかかる
・本開発に時間
UIが重要なシステム、新規サービス

1. ウォーターフォールモデル

開発の流れ

要件定義 → 基本設計 → 詳細設計 → 開発 → テスト → リリース
(各工程を順番に完了させ、前の工程には戻らない)

特徴

ウォーターフォール(滝)という名前の通り、水が上から下へ一方向に流れるように、工程を順番に進める開発手法です。

  • 事前に綿密な計画を立て、その通りに進行
  • 前の工程に戻ることは原則不可(戻ると大きなコストがかかる)
  • 各工程の完了条件が明確

メリット

1. 計画が明確で管理しやすい

  • 各工程の開始日・終了日が明確
  • 必要な人員や予算を事前に算出可能
  • 進捗状況が把握しやすい

2. 大規模プロジェクトに対応できる

  • 複数のチームで並行作業が可能
  • 役割分担が明確
  • ドキュメントが充実しているため、引き継ぎがスムーズ

3. 品質を担保しやすい

  • 各工程でレビューを実施
  • テスト工程が独立しており、徹底的に検証可能

デメリット

1. 仕様変更に弱い

  • 開発途中で仕様変更すると、前の工程からやり直しが必要
  • 変更コストが非常に高い

2. 完成まで実物が見れない

  • テスト工程まで、実際のシステムを触れない
  • 完成後に「イメージと違った」となるリスク

3. 初期の要件定義が重要すぎる

  • 要件定義で決めた内容が、後々まで影響する
  • 要件定義の段階で、すべてを完璧に決める必要がある

成功のポイント

  1. 要件定義の段階で、システムの仕様を徹底的に固める

    • 曖昧な要件は、後工程で大きなトラブルの原因に
    • ステークホルダー全員の合意を取る
  2. 定期的な進捗確認とドキュメント管理の徹底

    • 週次で進捗会議を実施
    • 設計書、議事録などをしっかり残す
  3. リスク管理を徹底する

    • 「この要件は後で変わるかも」というリスクを洗い出す
    • リスク発生時の対応策を事前に決めておく

適用例

  • 基幹システムの刷新: 要件が明確で、大規模なプロジェクト
  • 金融系システム: セキュリティや品質が重視され、仕様変更が少ない
  • 官公庁のシステム: 予算や仕様が事前に確定している

2. アジャイル開発

開発の流れ

(計画 → 設計 → 開発 → テスト)を14週間のサイクルで繰り返す
↓
優先度の高い機能から順にリリース
↓
ユーザーのフィードバックを次のサイクルに反映

特徴

アジャイル(俊敏)という名前の通り、短期間の開発サイクルを繰り返し、柔軟に対応する開発手法です。

  • 1〜4週間を「スプリント」と呼び、この期間で動くものを作る
  • 優先度の高い機能から順に開発・リリース
  • ユーザーのフィードバックをすぐに反映

代表的なフレームワーク

スクラム
  • チームで毎日進捗を共有(デイリースクラム:15分程度の朝会)
  • スプリント終了後にレビュー会議でフィードバックを収集
  • 振り返り会議(レトロスペクティブ)で改善点を議論
カンバン
  • タスクを可視化し、作業の流れを最適化
  • 「TODO」「進行中」「完了」などの列でタスクを管理
  • ボトルネックを発見し、作業効率を向上

メリット

1. 柔軟に仕様変更が可能

  • 開発中でも、優先順位を変更できる
  • 「この機能はいらない」「代わりにこの機能が欲しい」という要望に対応可能

2. 早期にリリースできる

  • 最初のリリースまで1〜3ヶ月と短期間
  • 早くユーザーに使ってもらい、フィードバックを得られる

3. ユーザーのフィードバックを反映しやすい

  • 各スプリント終了後にレビュー会議
  • ユーザーの声を直接聞いて、次のスプリントに反映

4. リスクを早期に発見できる

  • 短期間で動くものを作るため、問題点が早く見つかる
  • 大きな失敗を避けられる

デメリット

1. 計画がブレやすい

  • 仕様が頻繁に変わるため、最終的にどうなるか予測しづらい
  • 予算やスケジュールが変動しやすい

2. 全体像の把握が難しい

  • 目の前のスプリントに集中するため、システム全体の設計が疎かになることも
  • 技術的負債(後で修正が必要になる部分)が溜まりやすい

3. チームのスキルと密なコミュニケーションが必須

  • 開発チームと依頼側の密な連携が不可欠
  • チームメンバーのスキルが低いと、品質が低下

成功のポイント

  1. 開発チームと依頼側の密なコミュニケーション

    • 週次または隔週でレビュー会議を実施
    • Slack、Teamsなどでリアルタイムにやり取り
  2. 優先順位を明確にする

    • 「必須機能」「あると便利な機能」を明確に分ける
    • 優先度の高い機能から順に開発
  3. 変化を恐れず、柔軟に対応する姿勢

    • 「計画通りに進めなければ」という固定観念を捨てる
    • ユーザーのフィードバックを素直に受け入れる

適用例

  • Webサービス: 競合が多く、素早くリリースして市場の反応を見たい
  • スマホアプリ: ユーザーの反応を見て、機能を追加・改善
  • スタートアップの新規事業: 正解が分からないため、試行錯誤しながら開発

3. スパイラルモデル

開発の流れ

(要件定義 → 設計 → 開発 → テスト → 評価)を複数回繰り返す
↓
各サイクル(スパイラル)の最後にリスク評価を実施
↓
リスクに対策を講じて、次のサイクルへ

特徴

スパイラル(渦巻き)という名前の通り、開発サイクルを繰り返しながら、少しずつシステムを完成させる手法です。

  • ウォーターフォールの安定性と、アジャイルの柔軟性を併せ持つ
  • 各サイクル(スパイラル)は数ヶ月単位(アジャイルより長い)
  • 各サイクルの最後にリスク評価を実施

メリット

1. リスクを早期に発見・対策できる

  • 各サイクルの最後にリスク評価
  • 「この技術は実現困難かも」という懸念を早期に解消

2. 段階的にシステムを改善できる

  • 試作品の品質を段階的に向上
  • ユーザーのフィードバックを反映しながら開発

3. 新技術の採用に適している

  • 「この技術が使えるか試してみよう」という実験的な開発が可能

デメリット

1. コストが増大しやすい

  • 複数回のサイクルを繰り返すため、開発期間が長くなる
  • 試作品を作るコストがかかる

2. 納期が長い

  • 各サイクルが数ヶ月単位のため、最初のリリースまで時間がかかる

3. 管理が複雑

  • 各サイクルでリスク評価や計画の見直しが必要
  • プロジェクト管理のスキルが求められる

成功のポイント

  1. 各サイクルごとに、リスクを洗い出し対策を講じる

    • リスク管理表を作成し、定期的に更新
  2. 試作品の品質を段階的に向上させる

    • 最初のサイクルは粗くてもOK、徐々に精度を上げる
  3. 重要な機能から優先的に開発

    • リスクの高い部分を早めに検証

適用例

  • 新技術を採用する中規模システム: AIや機械学習など、実現可能性を確認しながら開発
  • 不確実性の高いプロジェクト: 要件が不明確で、試行錯誤が必要

4. プロトタイピング

開発の流れ

試作品(プロトタイプ)作成 → レビュー → 修正 → 試作品再作成 → 本開発

特徴

プロトタイピングは、最初に動く試作品を作成し、依頼側に実際に触ってもらう開発手法です。

  • 試作品は「完璧」を目指さず、スピード重視で作る
  • 依頼側が実際に操作して、イメージを具体化
  • 認識のズレを早期に解消

メリット

1. 完成イメージを具体的に共有できる

  • 言葉だけでは伝わりにくいUIや操作感を、実物で確認
  • 「こんなイメージでした」という認識のズレを防止

2. 要件の漏れやミスを早期に発見

  • 試作品を触ることで、「この機能が足りない」という気づきが得られる

3. UI/UXが重要なシステムに特に有効

  • 画面のレイアウトや操作フローを、試作品で検証

デメリット

1. 試作品を作るコストがかかる

  • 試作品作成に数週間〜数ヶ月が必要
  • 試作品と本開発で二重のコストがかかる

2. 本開発に時間がかかる

  • 試作品はあくまで「試作」なので、本開発では一から作り直す必要がある

3. 依頼側が試作品を「完成品」と勘違いするリスク

  • 「試作品があるなら、すぐリリースできるのでは?」という誤解
  • 試作品は内部的に不完全であることを説明する必要がある

成功のポイント

  1. 試作品は「完璧」を目指さず、スピード重視で作る

    • デザインは粗くてもOK
    • まずは主要な機能だけを実装
  2. 依頼側からの率直なフィードバックが重要

    • 「ここが使いにくい」「この機能は不要」など、遠慮なく意見を言ってもらう
  3. 試作品と本開発の違いを明確に説明

    • 「試作品はあくまで検証用で、本開発では一から作り直す」ことを伝える

適用例

  • ECサイト: 商品一覧、カート、決済画面など、UIが重要
  • 予約システム: 予約フォーム、カレンダー表示など、操作感を確認したい
  • スマホアプリ: 画面遷移やタップ操作など、UXを検証

どの手法を選ぶべき?選択基準

判断軸 ウォーターフォール アジャイル スパイラル プロトタイピング
プロジェクト規模 大規模 小〜中規模 中〜大規模 小〜中規模
要件の明確さ 明確 不明確でもOK やや不明確 不明確
仕様変更の頻度 少ない 頻繁 中程度 頻繁
リリースまでの期間 長い(6ヶ月〜数年) 短い(1〜3ヶ月) 中程度(3〜6ヶ月) 中程度
予算の柔軟性 固定 柔軟 固定 柔軟
チームのスキル 標準 高い 高い 標準

選択のフローチャート

Q1: 要件は明確に決まっている?
YES  ウォーターフォール
NO  Q2へ
Q2: 早くリリースしたい?(1〜3ヶ月以内)
YES  アジャイル
NO  Q3へ
Q3: 新技術を採用する?リスクが高い?
YES  スパイラルモデル
NO  Q4へ
Q4: UI/UXが重要?完成イメージを共有したい?
YES  プロトタイピング
NO  アジャイル(無難な選択)

複数の手法を組み合わせることも可能

実際のプロジェクトでは、複数の手法を組み合わせることもあります。

例1: プロトタイピング + アジャイル

  1. まずプロトタイピングで試作品を作成し、UIを確定
  2. その後、アジャイル開発で本開発を進める

例2: ウォーターフォール + アジャイル(ハイブリッド)

  1. 要件定義と基本設計はウォーターフォールで綿密に行う
  2. 開発工程はアジャイルで柔軟に進める

重要なのは、自社のプロジェクトに最適な手法を選ぶことです。開発会社と相談しながら、最適な手法を決めましょう。

5. システム開発の工程(V字モデルで解説)

システム開発は、一般的に7つの工程を経て進行します。これらの工程を「V字モデル」で表現すると、左側が開発工程、右側がテスト工程となり、各工程が対応関係にあることが分かります。


V字モデルとは?

V字モデルは、システム開発の全体像を「V」の字で表したものです。左側の開発工程で定義した内容を、右側のテスト工程で検証する構造になっています。

要件定義 ←→ 運用テスト(受入テスト)
   ↓              ↑
基本設計 ←→ システムテスト
   ↓              ↑
詳細設計 ←→ 結合テスト
   ↓              ↑
  開発  → 単体テスト

V字モデルのメリット

  1. テストの「何を確認するか」が明確になる

    • 各テスト工程が、どの開発工程の内容を検証するのかが一目瞭然
  2. 品質を担保しやすい

    • 各工程で定義した内容を、対応するテスト工程で徹底的に検証
  3. 大規模プロジェクトで特に有効

    • 複数のチームで並行作業する際、役割分担が明確になる

システム開発の7つの工程

以下、各工程の詳細を解説します。


【工程1】要件定義

目的

システムに求められる機能や性能を明確にし、「何を作るか」を確定する工程

主な作業

  1. 依頼側へのヒアリング

    • 現状の課題は何か?
    • どんな業務を効率化したいか?
    • どんな機能が欲しいか?
  2. 業務フローの分析

    • 現在の業務の流れを図解化
    • ボトルネックや非効率な部分を洗い出す
  3. 必要な機能の洗い出しと優先順位付け

    • 「必須機能」と「あると便利な機能」を分類
    • 優先順位をつける
  4. 非機能要件の定義

    • 性能(何人まで同時アクセス可能?)
    • セキュリティ(どのレベルのセキュリティが必要?)
    • 保守性(システムの寿命は何年?)

成果物

  • 要件定義書: システムに求められる機能や性能をまとめた文書

担当者

  • システムエンジニア(SE)
  • プロジェクトマネージャー(PM)
  • 依頼側の担当者(業務に詳しい人)

ポイント

この工程がプロジェクト成功の鍵

  • 要件定義で仕様を固めることが、後工程の手戻りを防ぐ
  • 「何を作るか」を依頼側と開発側で認識を揃える
  • 曖昧な要件は、後工程で大きなトラブルの原因に

よくある失敗:

  • 「だいたいこんな感じで」と曖昧なまま進めてしまう
  • 依頼側の要望を鵜呑みにして、実現可能性を検証しない
  • ステークホルダー全員の合意を取らずに進める

成功のコツ:

  • 要件定義に十分な時間をかける(全体の10〜15%)
  • 図やイラストを使って、視覚的に説明
  • 「この機能は本当に必要?」と優先順位を明確にする

【工程2】基本設計(外部設計)

目的

システムの全体構造と、ユーザーが触れる部分(UI)を設計する

主な作業

  1. システム全体のアーキテクチャ設計

    • どんな技術を使うか(プログラミング言語、データベースなど)
    • サーバー構成はどうするか(クラウド or オンプレミス)
  2. 画面レイアウト・操作フローの設計

    • どんな画面があるか(画面一覧)
    • 画面の遷移(ログイン → メニュー → 一覧 → 詳細)
    • ボタンの配置、入力フォームのデザイン
  3. データベース構造の概要設計

    • どんなデータを保存するか(顧客情報、商品情報など)
    • データ同士の関連性(顧客が注文を持つ、など)
  4. 外部システムとの連携方法の設計

    • 決済システムと連携する場合、どのAPIを使うか
    • 既存の会計システムとデータを連携する場合、どう接続するか

成果物

  • 基本設計書: システムの全体像をまとめた文書
  • 画面遷移図: 画面同士の繋がりを図解
  • ワイヤーフレーム: 画面のレイアウトを簡略的に描いたもの

担当者

  • システムエンジニア(SE)

ポイント

ユーザーの使いやすさ(UI/UX)を重視

  • 画面遷移図やワイヤーフレームで視覚化し、依頼側のレビューを受ける
  • 「この画面は使いにくい」というフィードバックを反映

依頼側のレビューが重要

  • 基本設計の段階で、依頼側に画面イメージを確認してもらう
  • 「イメージと違った」を防ぐ

【工程3】詳細設計(内部設計)

目的

プログラミングに必要な詳細仕様を決定する

主な作業

  1. 各機能の処理フローを詳細化

    • ログイン機能:IDとパスワードを照合 → 一致すればメニュー画面へ遷移
    • 検索機能:検索条件を入力 → データベースに問い合わせ → 結果を表示
  2. データベースのテーブル設計

    • テーブル名、カラム名、データ型、制約(NOT NULL、UNIQUE等)を決定
    • 例:顧客テーブル(顧客ID、氏名、メールアドレス、電話番号、住所)
  3. API仕様の詳細定義

    • 外部システムとの連携で使うAPIの、入力・出力の形式を決定
  4. エラー処理の設計

    • ログインに失敗した場合、どんなエラーメッセージを表示するか
    • システムエラーが発生した場合、どう復旧するか

成果物

  • 詳細設計書: プログラマーが実装できるレベルまで詳細化した文書

担当者

  • システムエンジニア(SE)
  • プログラマー(PG)(SEと一緒に設計に参加することも)

ポイント

プログラマーが実装できるレベルまで詳細化

  • 「こう書けばいい」とプログラマーが迷わないレベルの詳細さ
  • 曖昧な部分を残さない

技術的な実現方法を明確にする

  • セキュリティ対策(パスワードの暗号化、SQLインジェクション対策)
  • パフォーマンス最適化(データベースのインデックス設計)

【工程4】開発(プログラミング)

目的

詳細設計書に基づいてプログラムを作成する

主な作業

  1. プログラミング言語でコーディング

    • Java、Python、PHP、C#、JavaScriptなどでプログラムを記述
  2. データベースの構築

    • テーブル作成、初期データの投入
  3. 各機能のモジュール実装

    • ログイン機能、検索機能、登録機能などを個別に実装
  4. バージョン管理

    • Git、SVNなどのバージョン管理ツールでソースコードを管理
    • 複数人で開発する際、コードの競合を防ぐ

成果物

  • ソースコード: プログラムの本体
  • 実行ファイル: コンパイルして実行できる形にしたファイル

担当者

  • プログラマー(PG)

使用技術の例

分野 技術
プログラミング言語 Java, Python, PHP, C#, JavaScript, Ruby, Go, Swift, Kotlin
フレームワーク Spring(Java), Django(Python), Laravel(PHP), .NET(C#), React/Vue.js(JavaScript)
データベース MySQL, PostgreSQL, Oracle, SQL Server, MongoDB(NoSQL)
クラウド AWS, Microsoft Azure, Google Cloud Platform(GCP)
バージョン管理 Git(GitHub, GitLab, Bitbucket)

ポイント

コーディング規約に従い、可読性の高いコードを書く

  • 変数名、関数名は分かりやすく命名
  • コメントを適切に記述
  • インデントを揃える

セキュリティ脆弱性への対策

  • SQLインジェクション対策: プリペアドステートメントを使う
  • XSS(クロスサイトスクリプティング)対策: ユーザー入力をエスケープ
  • CSRF(クロスサイトリクエストフォージェリ)対策: トークンを使う

定期的なコードレビューで品質を担保

  • 他のエンジニアにコードを見てもらい、改善点を指摘してもらう
  • バグの早期発見につながる

【工程5】テスト

テストは、4段階で実施されます。V字モデルの右側にあたる工程です。


5-1. 単体テスト(ユニットテスト)

目的: 個々のモジュール(関数、クラス)が正しく動作するか確認

対応する開発工程: 詳細設計

担当者: プログラマー(PG)

テスト内容:

  • 各関数の入出力が仕様通りか
    • 例:足し算関数に「2」と「3」を入力 → 「5」が返ってくるか
  • 境界値テスト(最小値・最大値での動作)
    • 例:年齢入力欄に「0」や「200」を入力した場合、エラーになるか
  • 異常系のエラー処理
    • 例:数値を入力すべき欄に「文字」を入力した場合、エラーメッセージが表示されるか

テストツール:

  • JUnit(Java)、pytest(Python)、Jest(JavaScript)などの自動テストツールを活用

5-2. 結合テスト(統合テスト)

目的: 複数のモジュールを組み合わせた際に、正しく連携するか確認

対応する開発工程: 詳細設計

担当者: プログラマー(PG)、テスター

テスト内容:

  • モジュール間のデータ受け渡し
    • 例:ログイン機能で認証成功 → メニュー画面に正しく遷移するか
  • データベースとの連携
    • 例:登録機能でデータを保存 → データベースに正しく記録されるか
  • 外部APIとの通信
    • 例:決済システムのAPIを呼び出して、正しく決済処理が行われるか

5-3. システムテスト

目的: システム全体が要件定義通りに動作するか確認

対応する開発工程: 基本設計、要件定義

担当者: テスター、システムエンジニア(SE)

テスト内容:

  1. 機能テスト: 業務フロー全体の動作確認

    • 例:ECサイトで、商品選択 → カートに追加 → 決済 → 注文完了まで一連の流れが正常に動作するか
  2. 性能テスト(負荷テスト、ストレステスト)

    • 何人まで同時アクセスできるか
    • 大量のデータを処理した場合、レスポンス時間はどうなるか
  3. セキュリティテスト(脆弱性診断)

    • 不正アクセスを試みた場合、ブロックされるか
    • SQLインジェクション、XSSなどの脆弱性がないか
  4. ユーザビリティテスト

    • 実際のユーザーに操作してもらい、使いやすさを確認
    • 「この画面は分かりにくい」というフィードバックを収集

5-4. 運用テスト(受入テスト・UAT)

目的: 実際の業務環境で、依頼側がシステムを使って問題ないか確認

対応する開発工程: 要件定義

担当者: 依頼側の担当者

テスト内容:

  • 実際の業務データを使ったテスト
    • 例:実際の顧客データを登録してみる
  • マニュアルの確認
    • マニュアル通りに操作して、問題なく使えるか
  • 操作性の最終チェック
    • 「この操作は分かりにくい」という問題がないか

ポイント:

  • 依頼側の承認(受入)をもって、テスト工程が完了
  • 本番リリースの最終判断を行う

【工程6】リリース(導入・移行)

目的

本番環境にシステムを導入し、運用を開始する

主な作業

  1. 本番環境へのシステム配置

    • プログラムやデータベースを本番サーバーに設置
    • 設定ファイルの調整
  2. 旧システムからのデータ移行

    • 既存の顧客データ、商品データなどを新システムに移行
    • データの整合性チェック
  3. ユーザー教育

    • 操作説明会の実施
    • 操作マニュアルの配布
    • Q&Aセッションで疑問点を解消
  4. 本番稼働の監視

    • システムが正常に動作しているか監視
    • 問い合わせ窓口を設置し、ユーザーからの質問に対応

成果物

  • 運用マニュアル: システム管理者向けのマニュアル
  • 操作マニュアル: エンドユーザー向けのマニュアル

担当者

  • システムエンジニア(SE)
  • インフラエンジニア
  • プロジェクトマネージャー(PM)

移行方式

方式 内容 メリット デメリット 適用例
一斉移行 旧システムを停止し、一気に新システムへ切り替え シンプル、短期間で完了 トラブル時のリスクが高い 小規模システム
段階移行 部署ごと、機能ごとに段階的に移行 リスク分散、問題発生時の影響を限定 移行期間が長い 大規模システム
並行稼働 新旧システムを並行して運用し、問題なければ切り替え 安全性が高い、ロールバック容易 運用コストが倍増 基幹システム

ポイント

データ移行時のトラブルに備える

  • ロールバック(元に戻す)計画を用意
  • データ移行のリハーサルを実施

本番稼働直後は、システム監視とユーザーサポートを強化

  • 問い合わせが集中するため、サポート体制を厚くする
  • 初期トラブルに迅速に対応

【工程7】運用・保守

目的

システムを安定稼働させ、不具合対応や機能改善を行う

主な作業

  1. システムの死活監視

    • サーバーが正常に動作しているか24時間監視
    • 異常を検知したらアラート通知
  2. 障害対応

    • バグ修正、システム復旧作業
    • 障害の原因を分析し、再発防止策を講じる
  3. 定期メンテナンス

    • セキュリティパッチの適用
    • データベースの最適化
    • ログファイルの削除
  4. 機能追加・改善の要望対応

    • ユーザーからの「この機能が欲しい」という要望に対応
    • 小規模な改修から大規模なバージョンアップまで

担当者

  • 運用エンジニア
  • 保守チーム

保守の種類

保守の種類 内容 具体例
予防保守 障害を未然に防ぐための定期点検 サーバーのディスク容量チェック、セキュリティパッチ適用
是正保守 発生したバグや不具合の修正 「ログインできない」というバグの修正
適応保守 法改正や環境変化への対応 消費税率変更に伴うシステム改修
完全化保守 性能向上や機能追加 レスポンス速度の改善、新機能の追加

ポイント

運用フェーズでのコストは、開発フェーズの数倍になることも

  • 運用・保守費用は、開発費の10〜20%/年が目安
  • 長期的なコストを見据えた予算計画が必要

保守契約の内容を事前に明確化

  • どこまでが保守の範囲か(バグ修正は無料?機能追加は別料金?)
  • 対応時間(平日9〜18時?24時間365日?)
  • 料金体系(月額固定?従量課金?)

定期的なシステムレビューで、改善点を洗い出す

  • 「この機能は使われていない」「ここがボトルネックになっている」という課題を発見
  • 次のバージョンアップに反映

工程ごとの期間目安(中規模システムの場合)

工程 期間目安 全体に占める割合 担当者
要件定義 1〜2ヶ月 10〜15% SE、PM、依頼側
基本設計 1〜2ヶ月 10〜15% SE
詳細設計 2〜3ヶ月 15〜20% SE、PG
開発 3〜4ヶ月 25〜30% PG
テスト 2〜3ヶ月 20〜25% テスター、SE、依頼側
リリース 2週間〜1ヶ月 5% SE、インフラエンジニア
運用・保守 継続 運用エンジニア

合計開発期間: 約10〜15ヶ月(運用・保守を除く)

※プロジェクトの規模や複雑さにより大きく変動します


まとめ:V字モデルの重要性

V字モデルは、各開発工程とテスト工程の対応関係を明確にすることで、品質を担保するためのフレームワークです。

  • 要件定義で決めた内容を、運用テストで確認
  • 基本設計で決めた内容を、システムテストで確認
  • 詳細設計で決めた内容を、結合テストで確認

この対応関係を意識することで、「作ったものが要件を満たしているか」を徹底的に検証できます。

6. システム開発にかかる費用相場と見積もりの見方

システム開発の費用は、人件費が約7〜8割を占めます。つまり、「何人のエンジニアが、何ヶ月働くか」で費用が決まります。ここでは、費用の算出方法から見積もりのチェックポイント、コストを抑える方法まで詳しく解説します。


費用の算出方法:人月(にんげつ)とは?

システム開発の費用見積もりでは、「人月(にんげつ)」という単位が使われます。

人月とは?

1人月 = 1人のエンジニアが1ヶ月(約160時間:8時間×20日)働いた場合の単価

計算例

開発費用 = 人月単価 × 必要人数 × 開発期間(月)

例:中規模の顧客管理システム
- システムエンジニア(SE):人月単価100万円 × 2人 × 6ヶ月 = 1,200万円
- プログラマー(PG):人月単価70万円 × 3人 × 6ヶ月 = 1,260万円
- テスター:人月単価50万円 × 2人 × 3ヶ月 = 300万円
合計 = 2,760万円

職種別の人月単価相場

職種 大手企業(東京) 中小企業 地方企業 フリーランス
プロジェクトマネージャー(PM) 150〜200万円 100〜150万円 80〜120万円 100〜150万円
システムエンジニア(SE) 100〜150万円 70〜100万円 60〜90万円 70〜120万円
プログラマー(PG) 70〜100万円 50〜80万円 40〜70万円 50〜90万円
テスター 50〜80万円 40〜60万円 35〜55万円 40〜70万円
インフラエンジニア 100〜150万円 70〜100万円 60〜90万円 70〜120万円
デザイナー(UI/UX) 80〜120万円 60〜90万円 50〜80万円 60〜100万円

単価を左右する要因

  1. 企業の規模と所在地

    • 大手企業や都市部(東京、大阪)ほど単価が高い
    • 地方企業は2〜3割安い
  2. スキルと経験年数

    • 新人PG:月40〜50万円
    • 中堅PG(経験5年):月60〜80万円
    • ベテランSE(経験10年以上):月100〜150万円
  3. 開発言語や技術

    • 需要の高い技術(AI、機械学習、ブロックチェーン等)は単価が高い
    • レガシー技術(COBOL、VB6等)も希少性から単価が高い場合がある
  4. オフショア開発

    • ベトナム、インド、フィリピンなどのエンジニアは、日本の3〜5割程度の単価

システムの種類別:開発費用の相場

システムの種類 小規模 中規模 大規模 期間
業務システム
(会計、勤怠管理、販売管理)
300〜800万円 800〜3,000万円 3,000万円〜1億円 6〜18ヶ月
Webシステム
(ECサイト、予約システム、社内ポータル)
200〜500万円 500〜2,000万円 2,000万円〜5,000万円 3〜12ヶ月
モバイルアプリ
(iOS/Android)
200〜600万円 600〜1,500万円 1,500万円〜3,000万円 3〜10ヶ月
基幹システム刷新
(ERPパッケージ導入含む)
5,000万円〜1億円 1億円〜数億円 1〜3年

費用を左右する要因

  1. 機能の数と複雑さ

    • 機能が多いほど高額
    • 複雑なロジック(計算式、条件分岐)が多いほど高額
  2. 連携システムの有無

    • 既存システムとの連携が必要な場合、インターフェース開発で費用増
    • 例:新システムと既存の会計システムを連携 → +300〜500万円
  3. カスタマイズの度合い

    • パッケージソフト(既製品)の活用で費用削減可能
    • フルカスタマイズは高額
  4. 非機能要件

    • セキュリティ要件が厳しい(金融系など) → +20〜30%
    • 性能要件が厳しい(同時アクセス1万人以上) → +30〜50%

人件費以外にかかる費用

システム開発では、人件費以外にも以下の費用がかかります。

項目 内容 費用目安
サーバー・インフラ クラウドサーバー(AWS、Azure等)
オンプレミスサーバー
月額5万円〜50万円(クラウド)
数百万円〜(オンプレミス初期費用)
ライセンス費用 データベース(Oracle、SQL Server等)
開発ツール(Visual Studio等)
数十万円〜数百万円
外部サービス連携 決済システム(Stripe、PAY.JP等)
地図API(Google Maps等)
SMS送信サービス
初期費用:数万円〜
月額:数万円〜
セキュリティ対策 SSL証明書
脆弱性診断
WAF(Webアプリケーションファイアウォール)導入
初期:10〜50万円
月額:数万円〜
保守・運用費 システム監視、障害対応、機能追加 開発費の10〜20%/年

例:中規模ECサイト(開発費2,000万円)の場合

項目 初期費用 月額費用(年間)
開発費 2,000万円
サーバー(AWS) 15万円(180万円/年)
決済システム連携 10万円 3万円(36万円/年)
SSL証明書 5万円 1万円(12万円/年)
保守・運用 33万円(400万円/年)
合計 2,015万円 628万円/年

3年間の総コスト: 2,015万円 + 628万円 × 3年 = 3,899万円

→ 開発費の約2倍が、3年間の総コストになる


見積書のチェックポイント

システム開発の見積書を受け取ったら、以下の点を必ず確認しましょう。


チェック1:見積もりの内訳が明確か?

良い例:

【見積書】
1. 要件定義:100万円(SE 100万円/人月 × 1人 × 1ヶ月)
2. 基本設計:200万円(SE 100万円/人月 × 2人 × 1ヶ月)
3. 詳細設計:300万円(SE 100万円/人月 × 3人 × 1ヶ月)
4. 開発:840万円(PG 70万円/人月 × 3人 × 4ヶ月)
5. テスト:420万円(テスター 60万円/人月 × 2人 × 3.5ヶ月)
6. サーバー構築:100万円(インフラエンジニア 100万円/人月 × 1人 × 1ヶ月)
7. プロジェクト管理:600万円(PM 150万円/人月 × 1人 × 4ヶ月)
合計:2,560万円

悪い例:

【見積書】
システム開発一式:2,500万円

ポイント:

  • 「一式」表記は、内容が不明確でトラブルの元
  • 工程ごと、職種ごとの内訳を確認
  • 人月単価 × 人数 × 期間が明記されているか

チェック2:作業範囲(スコープ)は明確か?

確認項目:

  • ✅ どの機能が含まれているか?
  • ✅ データ移行作業は含まれているか?
  • ✅ ユーザー教育(マニュアル作成、説明会)は含まれているか?
  • ✅ 保守費用は別途か?含まれているか?
  • ✅ 外部サービス(決済システム等)の連携費用は含まれているか?

トラブル例:

  • 「データ移行は別料金です」と後から言われた(+300万円)
  • 「この機能は見積もり外です」と追加費用を請求された(+500万円)
  • 「保守は年間400万円かかります」と後から知らされた

対策:

  • 見積もり時に作業範囲を書面で確認
  • 「含まれないもの」も明記してもらう
  • 追加費用が発生する条件を明確にする

チェック3:複数社から見積もりを取る

なぜ必要?

  • 相場を把握できる
  • 同じ要件でも、会社によって見積もりが2〜3倍違うことも
  • 各社の提案内容(技術スタック、開発手法)を比較できる

比較例:

項目 A社 B社 C社
総額 1,500万円 2,000万円 1,200万円
人月単価(SE) 100万円 120万円 80万円
開発期間 10ヶ月 12ヶ月 8ヶ月
保守費用(年) 300万円 400万円 含まず
実績 同業界5社 同業界10社 同業界2社
技術スタック Java + MySQL C# + SQL Server PHP + MySQL
開発手法 ウォーターフォール アジャイル ウォーターフォール

判断のポイント:

  • C社:安いが、実績が少なく、保守費用も別 → リスク高
  • B社:高いが、実績豊富で保守も充実 → 安心感あり
  • A社:中間でバランスが良い → 有力候補

最安値だけで選ぶのは危険:

  • 安すぎる見積もりは、品質や納期に問題がある可能性
  • 「安物買いの銭失い」にならないよう注意

チェック4:契約形態を確認する

システム開発の契約形態には、主に2種類あります。

契約形態 内容 報酬 責任 メリット デメリット
請負契約 成果物(システム)の完成を約束 成果物に対して支払い 外注先が責任を持つ 不具合の無償修正
(契約不適合責任)
費用が高め
仕様変更が難しい
準委任契約
(SES契約)
労働力の提供を約束 労働時間に対して支払い 依頼側が責任を持つ 柔軟に対応可能
費用が安め
不具合の修正は別料金
品質保証なし

どちらを選ぶべき?

  • 要件が明確で、変更が少ない → 請負契約
  • 要件が不明確で、柔軟に対応したい → 準委任契約

注意:

  • 請負契約でも、「契約不適合責任の期間」を確認(1年?3年?)
  • 準委任契約の場合、不具合修正の費用負担を明確にしておく

コストを抑える5つの方法

システム開発の費用を抑えるための具体的な方法を紹介します。


方法1:パッケージソフト・SaaSの活用

具体例:

  • 会計システム → 「freee」「マネーフォワード」などのSaaSを活用
  • 顧客管理システム → 「Salesforce」「HubSpot」などのCRMを活用
  • プロジェクト管理 → 「Backlog」「Asana」などのツールを活用

メリット:

  • 初期費用を大幅削減(月額数千円〜数万円)
  • 短期間で導入可能(数日〜数週間)
  • 保守・アップデートが不要(ベンダーが対応)

デメリット:

  • カスタマイズ性が低い
  • 自社独自の業務フローに完全対応できない場合も
  • 月額費用が継続的に発生

コスト比較:

項目 フルカスタマイズ開発 SaaS活用
初期費用 1,000〜3,000万円 0〜50万円(設定費用)
月額費用 50〜100万円(保守) 5〜30万円(利用料)
開発期間 6〜12ヶ月 数日〜数週間

方法2:優先順位をつけて段階リリース

方法: 「必須機能」だけを先にリリースし、「あると便利な機能」は後から追加

メリット:

  • 初期費用を抑えられる
  • 早期にシステムを使い始められる
  • ユーザーのフィードバックを反映しやすい

具体例:

第1フェーズ(必須機能のみ):

  • ログイン機能
  • 顧客一覧表示
  • 顧客詳細表示
  • 顧客情報の登録・編集・削除
  • 費用:800万円、期間:6ヶ月

第2フェーズ(便利機能):

  • 検索機能(詳細検索)
  • Excel出力機能
  • メール送信機能
  • 費用:400万円、期間:3ヶ月

効果:

  • 最初のリリースまで6ヶ月で800万円
  • 従来の一括開発(1,200万円、10ヶ月)より安く、早い
  • 第1フェーズで使ってみて、第2フェーズの機能を調整できる

方法3:オフショア開発の活用

オフショア開発とは? ベトナム、インド、フィリピンなど、海外のエンジニアに開発を委託すること

メリット:

  • 人件費を30〜50%削減可能
    • ベトナムのエンジニア単価:月30〜50万円(日本の約半分)
  • 優秀なエンジニアを確保しやすい
    • ベトナムはIT教育に力を入れており、技術力が高い

デメリット:

  • 言語・文化の壁
    • 日本語が通じない場合、英語でのコミュニケーションが必要
  • コミュニケーションコストが増大
    • 時差(ベトナム:2時間、インド:3.5時間)
    • 対面での打ち合わせが難しい
  • 品質管理が難しい場合も
    • 日本の品質基準と異なることがある

向いているプロジェクト:

  • 仕様が明確で、コミュニケーションが取りやすい案件
  • 大量のプログラミング作業が必要な案件

成功のポイント:

  • 日本語が話せるブリッジSE(通訳・調整役)を配置
  • 定期的なビデオ会議で進捗確認
  • 詳細な設計書を作成し、認識のズレを防ぐ

方法4:ローコード・ノーコードツールの活用

ローコード・ノーコードツールとは? プログラミングの知識がなくても、簡単なシステムを構築できるツール

代表例:

  • kintone(サイボウズ):業務アプリ作成プラットフォーム
  • Salesforce:CRM + アプリ開発プラットフォーム
  • PowerApps(Microsoft):ローコード開発ツール
  • Bubble:ノーコードでWebアプリ開発

メリット:

  • プログラミング不要で簡単なシステムを構築
  • 開発期間を大幅短縮(数週間〜数ヶ月)
  • 費用を50〜70%削減可能

デメリット:

  • 複雑なロジックは実現困難
  • ツールのベンダーロックイン(他のツールへの移行が困難)
  • カスタマイズ性に限界がある

向いているシステム:

  • 顧客管理、問い合わせ管理、プロジェクト管理など、標準的な業務システム
  • 社内向けシステム(複雑なセキュリティ要件がない)

方法5:保守費用の削減

方法:

  1. クラウド基盤の活用

    • オンプレミスサーバーの保守費用(数百万円/年)が不要
    • クラウド(AWS、Azure)なら、ベンダーが保守を担当
  2. オープンソースの活用

    • データベース:MySQL、PostgreSQL(無料)
    • Webサーバー:Apache、Nginx(無料)
    • ライセンス費用(年間数十万円〜数百万円)を削減
  3. 保守契約の内容を見直し

    • 24時間365日対応は本当に必要?→ 平日9〜18時対応に変更
    • 年間の保守費用を50〜70%削減可能

具体例:

項目 従来 見直し後 削減額
サーバー保守 オンプレミス:300万円/年 クラウド(AWS):120万円/年 180万円
ライセンス費用 Oracle:200万円/年 MySQL(無料) 200万円
保守対応時間 24時間365日:400万円/年 平日9〜18時:150万円/年 250万円
合計 900万円/年 270万円/年 630万円

まとめ:費用で失敗しないために

 人月単価の相場を把握する(SE:70〜150万円、PG:50〜100万円)
 見積書の内訳を確認する(「一式」は避ける)
 複数社から見積もりを取る(最低3社)
 作業範囲(スコープ)を明確にする(「含まれないもの」も確認)
 契約形態を確認する(請負 or 準委任)
 保守・運用費用を忘れずに(開発費の10〜20%/年)
 コスト削減の方法を検討する(SaaS活用、段階リリース、オフショア等)

7. システム開発を外注するメリット・デメリット

システム開発を「自社で行う(内製)」か「外部に依頼する(外注)」かは、多くの企業が悩むポイントです。ここでは、外注のメリット・デメリットを整理し、判断基準を示します。


システム開発を外注するメリット

メリット1:専門知識・技術がなくてもシステムを構築できる

詳細:

  • 自社にITエンジニアがいなくても、プロに任せられる
  • 最新の技術やトレンドを取り入れたシステムを構築可能
  • セキュリティ対策やパフォーマンス最適化もプロが対応

具体例:

  • 「会計システムを作りたいが、社内にエンジニアがいない」
  • 「AIを活用したシステムを作りたいが、知見がない」

→ 外注で解決


メリット2:採用・育成のコストと時間を削減できる

詳細:

  • ITエンジニアの採用は、求人倍率が高く困難(有効求人倍率:約2〜3倍)
  • 採用後も育成に半年〜1年かかる
  • 外注なら、即戦力のエンジニアがすぐに稼働

コスト比較:

【内製の場合】

  • 採用費:50〜100万円(人材紹介会社経由)
  • 年収:500〜800万円(SE)
  • 育成期間:6ヶ月〜1年(研修、OJT)
  • 初年度コスト:600〜900万円以上
  • さらに、人材の定着リスクあり(離職率が高い)

【外注の場合】

  • 開発費:300〜1,000万円(プロジェクトによる)
  • 人材の定着リスクなし
  • プロジェクト終了後、継続費用は不要(保守契約は別途)

メリット3:設備投資が不要

詳細:

  • 開発用PC、ソフトウェアライセンス、サーバーなどの設備投資が不要
  • 外注先が自社の設備・環境を使うため、初期投資を抑えられる

コスト例:

項目 費用
開発用PC(高性能) 20〜30万円/台 × 5人 = 100〜150万円
開発ツール(Visual Studio等) 数十万円
テスト用サーバー 数十万円〜数百万円
オフィススペース 月額数万円 × 開発期間
合計 200〜500万円

→ 外注なら、これらの設備投資が不要


メリット4:請負契約なら、不具合の修正が無償

詳細:

  • 請負契約の場合、「契約不適合責任」(旧:瑕疵担保責任)により、納品後の不具合修正を無償で対応してもらえる
  • 責任期間:最長10年(民法上)、実際は1〜3年程度を契約で決める

注意:

  • 準委任契約(SES契約)の場合、この責任は適用されない
  • 契約形態を必ず確認

具体例:

  • 納品後にバグが発見された → 請負契約なら無償で修正
  • 仕様通りに動作しない → 請負契約なら無償でやり直し

メリット5:最新のノウハウ・技術を吸収できる

詳細:

  • 外注先は、複数の企業のシステム開発に携わっているため、最新のトレンドや他社事例を知っている
  • 自社にない視点やアイデアを得られる

具体例:

  • 「他社ではこんな機能が人気です」
  • 「この技術を使えば、コストを抑えられます」
  • 「こういう業務フローにすると、効率が上がります」

→ 他社の成功事例や失敗事例を活かせる


システム開発を外注するデメリット

デメリット1:内製に比べてコストが高くなることが多い

詳細:

  • 外注先の利益(マージン)が上乗せされるため、内製より割高
  • 特に、長期プロジェクトでは人件費が膨らむ

コスト比較例:

項目 内製 外注
エンジニア人件費(年収) 600万円/人 人月単価100万円 × 12ヶ月 = 1,200万円/人
設備費 100万円(PC、ツール等) 0円(外注先が負担)
合計(1年間) 700万円 1,200万円

ただし:

  • 内製の場合、採用費、育成費、福利厚生費なども加算される
  • 外注の場合、プロジェクト終了後は費用が発生しない(保守契約は別途)

対策:

  • 短期プロジェクトや、初回のシステム開発は外注
  • 長期的には内製化を見据え、外注先からノウハウを学ぶ

デメリット2:情報漏洩のリスクが高まる

詳細:

  • 外注先に顧客情報や社内機密情報を提供する必要がある
  • 外注先の管理体制が不十分だと、情報漏洩のリスク

具体例:

  • 顧客管理システムの開発 → 顧客の個人情報を外注先に提供
  • 人事管理システムの開発 → 従業員の給与情報を外注先に提供

→ 情報漏洩が発生すると、損害賠償、信用失墜のリスク

対策:

  • 秘密保持契約(NDA)を締結
  • 外注先のセキュリティ対策を確認
    • ISO/IEC 27001(ISMS)取得
    • プライバシーマーク(Pマーク)取得
  • データの取り扱いルールを明確化
    • 開発終了後、データを削除してもらう
    • データの持ち出しを禁止

デメリット3:外注先が自社の事業・業務を完全に理解しているとは限らない

詳細:

  • 外注先は、自社の業界や業務フローに詳しくないことも
  • コミュニケーション不足で、要件のズレが発生しやすい

具体例:

  • 「この業界ではこういう商習慣があるのに、システムに反映されていない」
  • 「この業務フローは現場で使えない」

→ 完成後に「使えないシステム」になるリスク

対策:

  • 同じ業界での開発実績がある外注先を選ぶ
  • 要件定義の段階で、業務フローを詳細に説明
    • 図解、フローチャートを使って視覚化
    • 実際の現場を見学してもらう
  • 定期的なミーティングで認識を揃える
    • 週次または隔週でレビュー会議
    • 進捗確認と、仕様の再確認

デメリット4:システム開発のノウハウが社内に蓄積されない

詳細:

  • 外注に丸投げすると、技術的な知識が社内に残らない
  • 将来的に内製化したくても、ノウハウがないため困難

具体例:

  • システムの改修を依頼したいが、どこをどう変えればいいか分からない
  • バグが発生したが、原因が分からず、外注先に頼るしかない

→ 外注先に依存し続けるリスク

対策:

  • 開発過程に自社の担当者も参加
    • 要件定義、設計、レビュー会議に同席
    • プログラミングは無理でも、システムの構造は理解する
  • ドキュメント(設計書、マニュアル)を外注先から提供してもらう
  • 保守フェーズで、自社エンジニアを育成
    • 軽微な改修は自社で対応
    • 外注先に技術指導を依頼

デメリット5:外注先とのコミュニケーション・管理に手間がかかる

詳細:

  • 打ち合わせ、進捗確認、仕様変更の調整など、コミュニケーションコストが発生
  • 特に、海外(オフショア)の場合、言語や時差の問題も

具体例:

  • 週次ミーティングの準備に数時間かかる
  • メールのやり取りで、意図が伝わらない
  • 仕様変更の依頼を伝えたが、認識がズレていた

→ コミュニケーションコストが想定以上に膨らむ

対策:

  • 窓口を一本化
    • PM、PMOを立て、窓口を明確にする
    • 複数の担当者が個別に連絡すると、情報が分散する
  • コミュニケーションツールで効率化
    • Slack、Teamsなどのチャットツールで、リアルタイムにやり取り
    • 議事録をクラウドで共有(Googleドキュメント、Notion等)
  • 週次ミーティングで定期的に進捗確認
    • 毎週同じ曜日・時間に設定し、習慣化

内製 vs 外注:判断基準

判断軸 内製が向いている 外注が向いている
社内にITエンジニアがいるか いる(育成済み) いない
開発期間 長期(1年以上) 短期(6ヶ月以内)
予算 潤沢(長期的な投資可能) 限られている
システムの独自性 高い(競争優位の源泉) 標準的(他社と同様)
保守・運用の体制 自社で対応可能 外部に任せたい
過去のシステム開発経験 ある ない
ノウハウの蓄積 重要(内製化したい) 不要(専門家に任せたい)

判断のフローチャート

Q1: 社内にITエンジニアがいる?
YES  Q2へ
NO  外注(または、まずは外注してノウハウを学ぶ)
Q2: 開発期間は1年以上?
YES  Q3へ
NO  外注
Q3: システムは競争優位の源泉になる?
YES  内製(ノウハウを社内に蓄積)
NO  外注またはパッケージ導入
Q4: 長期的に内製化したい?
YES  ハイブリッド(最初は外注、徐々に内製化)
NO  外注

まとめ:外注の判断ポイント

 初めてのシステム開発 → 外注(ノウハウを学ぶ)
 競争優位の源泉となるシステム → 内製(他社に真似されにくい)
 標準的な業務システム → 外注またはパッケージ導入
 長期的にシステムを育てたい → ハイブリッド(最初は外注、徐々に内製化)
 短期間でリリースしたい → 外注(即戦力を活用)

8. 失敗しないシステム開発会社の選び方5つのポイント

システム開発会社は国内に数千社以上あり、どの会社を選ぶかでプロジェクトの成否が大きく左右されます。ここでは、失敗しない外注先の選び方を5つのポイントで詳しく解説します。


ポイント1:自社の業界・業務での開発実績があるか

なぜ重要?

  • 業界特有の業務フローや法規制を理解している

    • 医療業界:カルテの保存期間(5年)、個人情報保護法
    • 金融業界:金融商品取引法、マネーロンダリング対策
    • 建設業界:工事進行基準、原価管理
  • 過去の事例やノウハウを活かせる

    • 「同じ業界の他社でこんな機能が好評でした」
    • 「この業界ではこういう課題が多いです」
  • 仕様決めがスムーズに進む

    • 業界用語が通じる
    • 「こういう業務フローですよね?」と先回りして提案してくれる

確認方法

  1. 外注先のWebサイトで「導入事例」をチェック

    • 自社と同じ業界の実績があるか
    • 具体的な企業名が公開されているか(信頼性が高い)
  2. 過去の顧客に直接ヒアリング(可能であれば)

    • 「対応はどうでしたか?」
    • 「納期は守られましたか?」
    • 「完成後のサポートは充実していますか?」
  3. RFP(提案依頼書)を提出して、提案内容を比較

    • 業界への理解度が提案内容に表れる
    • 「この業界特有の課題を理解している」提案が来るか

具体例

良い例:

  • 「医療機関向けの電子カルテシステムを30件開発した実績があります」
  • 「建設業界の原価管理システムに詳しく、同じ規模の企業で5社の実績があります」

悪い例:

  • 「幅広い業界でシステム開発をしています」(具体性がない)
  • 「Webシステムが得意です」(業界への言及なし)

ポイント2:開発体制がしっかりしているか

なぜ重要?

  • リソース不足だと、品質低下や納期遅延のリスク

    • エンジニア不足で、1人が複数の工程を兼務 → ミスが増える
    • テスト工程が手薄になり、バグが多発
  • 役割分担が曖昧だと、責任の所在が不明確

    • 「誰がこの作業をやるのか分からない」
    • 問題が発生した際、「それは自分の担当ではない」と言い合いになる

確認方法

  1. プロジェクト体制図を提示してもらう

    • PM、SE、PGの人数と役割を確認
    • 担当者の顔写真、経歴も確認できるとベター
  2. 担当者のスキルや経験年数を確認

    • PMの実績:過去に何件のプロジェクトを成功させたか
    • SEの経験年数:5年以上が目安
    • 使用する技術の経験年数
  3. 下請けや海外企業への再委託はあるか

    • ある場合、管理体制を確認
    • 「下請けの品質管理はどうしていますか?」
    • 「下請けとのコミュニケーションはどう取っていますか?」

質問例

  • 「今回のプロジェクトに、何人のエンジニアを配置予定ですか?」
  • 「PMの過去の実績を教えてください」
  • 「開発は御社のエンジニアが行いますか?それとも下請けですか?」
  • 「下請けに出す場合、どこまで御社が管理しますか?」

チェックポイント

 PM(プロジェクトマネージャー)が専任で配置されるか

  • 兼任だと、他のプロジェクトで手一杯になり、対応が遅れるリスク

 SE(システムエンジニア)の経験年数は十分か(5年以上が目安)

  • 経験不足のSEだと、設計ミスが発生しやすい

 テスト工程に十分なリソースが割かれているか

  • テスターが不足すると、バグが多発

 下請けへの再委託がある場合、管理体制は明確か

  • 下請けとの契約内容、品質管理方法を確認

ポイント3:セキュリティマネジメントがしっかりしているか

なぜ重要?

システム開発では、顧客情報や社内機密を外注先に提供する必要があります。情報漏洩が発生すると、以下のリスクがあります。

  • 損害賠償:数百万円〜数億円
  • 信用失墜:顧客や取引先からの信頼を失う
  • 行政処分:個人情報保護法違反で罰則

確認方法

  1. セキュリティ関連の認証取得状況を確認

    • ISO/IEC 27001(ISMS):情報セキュリティマネジメントの国際規格
    • プライバシーマーク(Pマーク):個人情報保護の国内規格
    • ISMS-AC(ISMSクラウドセキュリティ認証):クラウドサービス向けのセキュリティ認証
  2. 過去のセキュリティ事故の有無を確認

    • 「過去に情報漏洩事故はありましたか?」
    • ニュースやプレスリリースで検索
  3. 秘密保持契約(NDA)の締結を提案してくるか

    • 提案してくる会社は、セキュリティ意識が高い
    • NDAの内容も確認(損害賠償の範囲、期間など)

質問例

  • 「情報セキュリティ対策はどのように行っていますか?」
  • 「開発環境へのアクセス権限の管理方法は?」
  • 「データのバックアップ・暗号化の方針は?」
  • 「開発終了後、提供したデータはどう扱われますか?(削除?保管?)」

チェックポイント

 ISO/IEC 27001(ISMS)を取得しているか

  • 取得していれば、組織的にセキュリティ対策を実施している証

 開発環境へのアクセス制限はあるか

  • 特定のIPアドレスからのみアクセス可能
  • VPN接続必須

 データの暗号化を行っているか

  • 通信の暗号化(SSL/TLS)
  • データベースの暗号化

 秘密保持契約(NDA)を締結するか

  • NDAの内容も確認(損害賠償の範囲、期間など)

 開発終了後、データを削除してくれるか

  • データの保管期間、削除方法を確認

ポイント4:見積もりや納期が適切か

なぜ重要?

  • 安すぎる見積もりは、品質や納期に問題があることも
  • 高すぎる見積もりは、コストが無駄に膨らむ
  • 納期が非現実的だと、開発が破綻するリスク

確認方法

  1. 複数社(最低3社)から見積もりを取る

    • 相場を把握できる
    • 各社の提案内容を比較できる
  2. 見積もりの内訳が明確か確認

    • 「システム開発一式」ではなく、工程ごと・職種ごとの内訳
  3. 納期の根拠を質問する

    • 「なぜこの納期なのか?」
    • 「納期を短縮することは可能か?その場合、コストは?」

見積もり比較のポイント

項目 A社 B社 C社
総額 1,500万円 2,000万円 1,200万円
人月単価(SE) 100万円 120万円 80万円
開発期間 10ヶ月 12ヶ月 8ヶ月
保守費用(年) 300万円 400万円 含まず
実績 同業界5社 同業界10社 同業界2社
技術スタック Java + MySQL C# + SQL Server

PHP + MySQL

 

開発手法 ウォーターフォール アジャイル ウォーターフォール
  • B社:高いが、実績豊富で保守も充実 → 安心感あり
  • A社:中間でバランスが良い → 有力候補
  • C社:安いが実績が少なく、保守費用も別→ リスク高

質問例

  • 「この見積もりには、何が含まれていますか?(データ移行、マニュアル作成、ユーザー教育など)」
  • 「見積もりに含まれない作業は何ですか?」
  • 「納期が遅れた場合のペナルティはありますか?」
  • 「追加費用が発生するケースを教えてください」
  • 「仕様変更した場合、どの程度の追加費用がかかりますか?」

チェックポイント

 見積もりの内訳が明確か

  • 工程ごと、職種ごとの内訳があるか
  • 「一式」表記は避ける

 作業範囲(スコープ)が明確か

  • 何が含まれていて、何が含まれていないか
  • データ移行、マニュアル作成、ユーザー教育の有無

 複数社と比較したか(最低3社)

  • 相場を把握し、適正価格か判断

 最安値だけで判断していないか

  • 安すぎる見積もりは、品質リスクあり
  • 「費用対効果」で判断

 納期の根拠が明確か

  • なぜその納期なのか、説明できるか
  • 納期遅延時の対応が決まっているか

ポイント5:コミュニケーションが取りやすいか

なぜ重要?

システム開発では、以下のようなコミュニケーションが頻繁に発生します。

  • 仕様の確認・変更
  • 進捗報告
  • 不明点の質問
  • トラブル対応

コミュニケーションが悪いと:

  • 認識のズレが発生 → 「思っていたのと違う」
  • トラブル対応が遅れる → プロジェクト遅延
  • ストレスが溜まる → 信頼関係が崩れる

確認方法

  1. 初回商談での担当者の対応をチェック

    • レスポンスの速さ:メール返信は24時間以内が理想
    • 説明の分かりやすさ:専門用語ばかりでないか、初心者にも分かりやすく説明してくれるか
    • こちらの質問に真摯に答えてくれるか:適当な返答ではなく、しっかり考えて答えてくれるか
  2. 開発中のコミュニケーション手段を確認

    • 週次ミーティングの有無
    • 使用するツール(Slack、Teams、Backlog等)
    • 進捗報告の頻度とフォーマット
  3. エンジニアと直接話せるか

    • 営業担当だけでは不十分
    • 実際に開発するエンジニアと話すことで、技術力や相性を確認

チェックポイント

 レスポンスが速いか(メール返信24時間以内)

  • 商談中のレスポンスが遅い会社は、開発中もレスポンスが遅い

 説明が分かりやすいか

  • 専門用語を使わず、初心者にも分かりやすく説明してくれるか
  • 図やイラストを使って視覚的に説明してくれるか

 エンジニアと直接話せるか

  • 営業担当者だけでなく、実際に開発するエンジニアとも面談
  • エンジニアのコミュニケーション能力、技術力を確認

 問い合わせ窓口が明確か

  • 誰に連絡すればいいか明確
  • 担当者が不在の場合の対応(代理者の有無)

 開発中のコミュニケーション計画が明確か

  • 週次ミーティングの曜日・時間
  • 使用するツール(Slack、Teams、Zoom等)
  • 進捗報告のフォーマット(何を報告してくれるか)

 土日・夜間の対応は可能か(緊急時)

  • 本番稼働直後は、土日も対応してくれるか
  • 緊急時の連絡先(携帯番号など)

質問例

  • 「開発中の連絡手段は何を使いますか?」
  • 「進捗報告の頻度は?どんな内容を報告してもらえますか?」
  • 「仕様変更が発生した場合、どのように対応しますか?」
  • 「トラブルが発生した場合、どのくらいで対応してもらえますか?」
  • 「実際に開発するエンジニアと面談できますか?」

外注先の探し方3つ

システム開発会社を探す方法を3つ紹介します。


方法1:マッチングサイト・比較サイトを活用

代表例:

  • 発注ナビ:7,000社以上のシステム開発会社から提案
  • ITトレンド:製品・サービス比較サイト
  • 比較ビズ:一括見積もり依頼
  • アイミツ:システム開発会社のマッチングサービス

メリット:

  • 複数社を効率的に比較できる
  • 第三者の評価・レビューが見れる
  • 無料で利用可能
  • 専門のコンシェルジュが最適な会社を紹介してくれる(発注ナビ等)

デメリット:

  • 選択肢が多すぎて迷う
  • サイトに登録していない優良企業もある

おすすめの使い方:

  1. マッチングサイトで3〜5社に絞り込む
  2. 各社に見積もりを依頼
  3. 面談して、最終的に1〜2社に絞る

方法2:IT展示会・セミナーに参加

代表的な展示会:

  • IT-EXPO(Japan IT Week):日本最大級のIT展示会
  • DXサミット:デジタル変革をテーマにした展示会
  • システム開発展:システム開発に特化した展示会

メリット:

  • 担当者と直接話せる
  • デモを見て、技術力を確認できる
  • 最新のトレンド情報も得られる
  • その場で名刺交換し、後日詳しく話せる

デメリット:

  • 時間と交通費がかかる
  • 出展企業が限られる
  • 展示会の開催時期が限られる(年に数回)

おすすめの使い方:

  • 事前に出展企業をチェックし、興味のあるブースをリストアップ
  • 複数のブースを回り、資料を集める
  • 後日、気になった企業に連絡して詳しく話す

方法3:知人・取引先からの紹介

メリット:

  • 実績や対応力が事前に分かる
  • 紹介者の顔があるため、対応が丁寧
  • トラブル時も、紹介者が仲介してくれることも
  • 信頼性が高い

デメリット:

  • 選択肢が限られる
  • 断りにくい(紹介者の顔を潰すことに)
  • 紹介企業が自社の案件に適しているとは限らない
  • 「紹介だから」と安易に決めると失敗するリスク

おすすめの使い方:

  • 紹介を受けたら、他の企業と同様に評価する
  • 「紹介だから」と特別扱いせず、客観的に判断
  • 実績、技術力、見積もり、コミュニケーションを他社と比較

まとめ:外注先選びのチェックリスト

システム開発会社を選ぶ際は、以下のチェックリストを活用しましょう。

【必須チェック項目】

 自社の業界・業務での開発実績があるか

  • 導入事例を確認
  • 同じ業界で3社以上の実績があるか

 開発体制(PM、SE、PGの人数・役割)が明確か

  • プロジェクト体制図を提示してもらう
  • 担当者の経験年数を確認

 セキュリティ認証(ISO27001、Pマーク)を取得しているか

  • 取得していない場合、セキュリティ対策の方針を確認

 見積もりの内訳が明確で、複数社と比較したか

  • 「一式」表記は避ける
  • 最低3社から見積もりを取る

 納期の根拠が明確で、遅延時の対応が決まっているか

  • 納期の根拠を質問
  • 遅延時のペナルティを確認

 コミュニケーションが取りやすいか

  • レスポンスの速さ
  • 説明の分かりやすさ
  • エンジニアと直接話せるか

 契約形態(請負 or 準委任)と責任範囲が明確か

  • 不具合の無償修正期間
  • 保守費用の範囲

 保守・運用の体制と費用が明確か

  • 保守契約の内容(対応時間、料金体系)
  • 年間の保守費用(開発費の10〜20%が目安)

【追加チェック項目】

 過去の顧客の評価・レビューを確認したか

  • Webサイト、SNS、マッチングサイトのレビュー

 下請けへの再委託はあるか?ある場合、管理体制は?

  • 下請けの品質管理方法

 使用する技術スタック(言語、フレームワーク)は適切か

  • 最新の技術か、枯れた技術か
  • 将来的にエンジニアを確保しやすいか

 直感的に「信頼できる」と感じるか

  • 最終判断は人間関係
  • 長期的に付き合える相手か

9. システム開発の成功事例(業界別)

システム開発によって、実際にどのような効果が得られるのか?ここでは、業界別の成功事例を具体的な数値データとともに紹介します。


事例1:保険業界 – 顧客管理システムで情報共有を実現

企業概要: 全国に50店舗を展開する中堅保険会社

導入前の課題

  • 顧客情報が各店舗でExcelやAccessで個別管理されており、情報共有ができない
  • 他店舗で加入した顧客が来店した際、契約内容を確認するのに時間がかかる(平均15分)
  • 紙ベースの管理で、書類の保管スペースが不足
  • セキュリティリスクが高い(紙の紛失、USBメモリの持ち出し)
  • 保険金支払い状況や過去の傷病履歴を確認するのに、複数の書類を探す必要がある

導入したシステム

  • クラウドベースの顧客管理システム(CRM)
  • 全店舗で顧客情報を一元管理
  • 顧客の基本情報、契約履歴、保険金支払い状況、過去の傷病履歴などを即座に検索可能
  • 強固なセキュリティ対策(アクセス権限管理、通信暗号化、操作ログ記録)
  • スマホアプリからもアクセス可能(営業担当者が外出先から確認)

導入効果(数値データ)

項目 導入前 導入後 改善率
顧客対応時間 平均15分 平均10分 30%短縮
情報入力ミス 月20件 月2件 90%削減
書類保管コスト 年間500万円 年間50万円 90%削減
顧客満足度 75% 88% 13ポイント向上
解約率 年間8% 年間6.8% 15%減少

年間コスト削減額: 約2,000万円

成功のポイント

  1. 全店舗での導入を段階的に実施

    • まず1店舗で試験導入 → 問題点を洗い出し → 全店舗に展開
  2. 操作マニュアルと説明会を充実

    • 各店舗で説明会を実施(2時間 × 2回)
    • 動画マニュアルも作成し、いつでも復習可能
  3. セキュリティ対策を徹底

    • アクセス権限を役職ごとに設定
    • 操作ログを記録し、不正アクセスを監視

事例2:製造業 – 生産管理システムでリードタイム短縮

企業概要: 従業員200名の精密機器メーカー

導入前の課題

  • 製造ラインの稼働状況がリアルタイムで把握できない
  • 部品の在庫管理が不十分で、欠品による製造ストップが月2〜3回発生
  • 過剰在庫も多く、倉庫が満杯(在庫金額:5億円)
  • 納期遅延が頻発し、顧客からのクレームが増加(月10件以上)
  • 各部門で使うExcelがバラバラで、データ連携ができない
  • 製造実績の集計に時間がかかる(月次で3日間)

導入したシステム

  • 生産管理システム(MES:Manufacturing Execution System)
  • 製造ラインの稼働状況をリアルタイムで可視化(ダッシュボード表示)
  • 部品の発注から在庫管理、製造指示まで一気通貫で管理
  • 製造実績データの自動収集と分析
  • 設備の稼働率、不良品率をリアルタイムで表示
  • スマホアプリで外出先からも確認可能

導入効果(数値データ)

項目 導入前 導入後 改善率
製造リードタイム 平均20日 平均15日 25%短縮
在庫金額 5億円 4億円 20%削減
欠品による製造ストップ 月2〜3回 月0〜1回 70%削減
納期遵守率 85% 98% 13ポイント向上
設備稼働率 70% 85% 15ポイント向上
不良品率 3% 1.5% 50%削減

年間コスト削減額: 約3,000万円

成功のポイント

  1. 現場の声を反映した設計

    • 現場の従業員にヒアリングし、使いやすい画面設計
    • 「ここの操作が面倒」という意見を取り入れ
  2. 段階的な導入でリスク分散

    • まず1つの製造ラインで試験導入
    • 問題点を解消してから、全ラインに展開
  3. データ分析で継続的な改善

    • 製造実績データを分析し、ボトルネックを発見
    • 設備の配置変更や作業手順の見直しにつなげる

事例3:飲食業界 – 予約システムでリピート率向上

企業概要: 都内に5店舗を展開するレストランチェーン

導入前の課題

  • 電話予約の対応に時間がかかり、営業時間中の負担が大きい(1日平均20件、1件5分)
  • 予約のダブルブッキングが月に2〜3回発生し、顧客に迷惑をかけている
  • 顧客の来店履歴が管理されておらず、リピート戦略が打てない
  • 予約忘れによるドタキャンが多い(予約の20%)
  • 常連客の好みを記録する仕組みがなく、パーソナライズされたサービスができない

導入したシステム

  • Web予約システム + 顧客管理(CRM)機能
  • 24時間いつでもオンライン予約可能
  • 空席状況をリアルタイムで表示
  • 来店履歴から好みのメニュー、席の希望(個室、禁煙など)を自動表示
  • 予約前日に自動リマインド通知(メール、SMS)
  • 誕生月にクーポンを自動配信

導入効果(数値データ)

項目 導入前 導入後 改善率
予約対応時間 1日100分(20件×5分) 1日40分(8件×5分) 60%削減
ダブルブッキング 月2〜3回 月0回 ゼロ
ドタキャン率 20% 8% 60%削減
リピート率 30% 42% 40%向上
顧客単価 4,500円 5,700円 27%向上
オンライン予約比率 0% 70%

年間売上増加額: 約1,200万円(5店舗合計)

成功のポイント

  1. 顧客の好みを記録し、パーソナライズされたサービス

    • 「前回はこのメニューを召し上がりましたね」と提案
    • 常連客の満足度が大幅に向上
  2. 自動リマインド通知でドタキャン防止

    • 予約前日にSMS送信
    • 「明日のご予約をお待ちしております」
  3. 誕生月クーポンでリピート促進

    • 誕生月に「デザート無料」クーポンを配信
    • リピート率が大幅に向上

事例4:小売業界 – ECサイトで売上拡大

企業概要: 地方都市で雑貨店を経営する小規模事業者

導入前の課題

  • 実店舗のみの販売で、商圏が限られている(半径5km程度)
  • コロナ禍で来店客数が減少し、売上が前年比30%ダウン
  • オンライン販売に対応したいが、ノウハウがない
  • 在庫管理が手書きの台帳で、在庫数が不正確

導入したシステム

  • ECサイト(オンラインショップ)
  • 在庫管理システムと連携し、リアルタイムで在庫を表示
  • 決済システム(クレジットカード、電子マネー、後払い、代引き)
  • 配送業者との自動連携(注文情報を自動送信)
  • Googleアナリティクス連携で、アクセス解析

導入効果(数値データ)

項目 導入前 導入後 改善率
月間売上 300万円 800万円 167%増
うちECサイト経由 0円 500万円
新規顧客数(月) 50名 250名 400%増
リピート率 実店舗:25% ECサイト:45% 80%向上
商圏 半径5km 全国

年間売上増加額: 約6,000万円

成功のポイント

  1. SNSとの連携で集客

    • InstagramにECサイトのリンクを掲載
    • 商品写真を定期的に投稿し、フォロワーを増やす
  2. 実店舗とECサイトの在庫を一元管理

    • 在庫切れによる機会損失を防ぐ
    • 実店舗で売れた商品も、ECサイトの在庫から自動で差し引く
  3. ECサイトの方がリピート率が高い理由

    • メルマガで新商品情報を配信
    • 購入履歴から、おすすめ商品を提案
    • 実店舗より気軽に購入できる

事例5:医療業界 – 電子カルテで業務効率化

企業概要: 診療所3箇所を運営する医療法人

導入前の課題

  • 紙のカルテで患者情報を管理しており、検索に時間がかかる(平均5分)
  • 複数の診療所で情報共有ができない(患者が別の診療所を受診した場合、電話で確認)
  • カルテの保管スペースが不足(法律で5年間保存義務)
  • 重複検査が多い(過去の検査結果を確認できないため)
  • 手書きのカルテが読みにくく、誤診のリスク

導入したシステム

  • 電子カルテシステム
  • 3診療所間での患者情報共有機能
  • 過去の診療履歴や検査結果を即座に検索可能
  • 処方箋の自動発行機能
  • 画像検査(レントゲン、CT等)の結果を電子カルテに取り込み
  • セキュリティ対策(アクセス権限管理、通信暗号化)

導入効果(数値データ)

項目 導入前 導入後 改善率
カルテ検索時間 平均5分 平均30秒 90%短縮
重複検査 月30件 月9件 70%削減
保管スペース 50㎡ 10㎡(サーバー室のみ) 80%削減
1患者あたりの診療時間 平均15分 平均12分 20%短縮
患者の待ち時間 平均30分 平均20分 33%短縮

年間コスト削減額: 約1,500万円

成功のポイント

  1. 診療所間での情報共有

    • 患者が別の診療所を受診しても、過去の診療履歴を即座に確認
    • 重複検査を防ぎ、医療費を削減
  2. 保管スペースの大幅削減

    • 紙のカルテは5年分で膨大なスペースが必要
    • 電子カルテなら、サーバー室のみ
  3. 患者満足度の向上

    • 待ち時間が短縮
    • 過去の診療履歴を踏まえた、適切な診療

成功事例から学ぶ3つのポイント

ポイント1:課題を明確にする

すべての成功事例に共通するのは、「何を解決したいのか」が明確だったこと。

  • 保険業界:「顧客対応時間を30%短縮したい」
  • 製造業:「製造リードタイムを25%短縮したい」
  • 飲食業界:「ドタキャン率を半減したい」

具体的な数値目標を設定することで、システム開発の成否を判断できます。


ポイント2:段階的に導入する

いきなり大規模なシステムを導入するのではなく、小規模から始めて段階的に拡大するのが成功のコツ。

段階的導入の流れ:

  1. 試験導入(1店舗、1ライン、1部署)
  2. 問題点の洗い出しと改善
  3. 全社展開

メリット:

  • リスクを最小限に抑えられる
  • 現場の声を反映しやすい
  • 失敗しても、被害が限定的

ポイント3:従業員の教育を徹底する

どんなに優れたシステムも、使う人が理解していなければ意味がありません

教育のポイント:

  • 操作マニュアルの作成(動画マニュアルも有効)
  • 説明会の実施(各部署で2時間 × 2回程度)
  • Q&Aセッションで疑問点を解消
  • サポート窓口の設置(導入初期は特に重要)

教育を怠ると:

  • システムが使われない(従来の方法に戻ってしまう)
  • 誤った使い方で、データが不正確になる
  • 現場の不満が溜まる

10. システム開発の最新トレンド

システム開発の技術やトレンドは日々進化しています。ここでは、2025年現在の最新トレンドを紹介します。


トレンド1:クラウド化の加速

特徴:

  • オンプレミス(自社でサーバーを保有)からクラウド(AWS、Azure、GCP)への移行が加速
  • 初期投資を抑え、柔軟にスケール(拡大・縮小)できる

主要なクラウドサービス:

  • AWS(Amazon Web Services):世界シェアNo.1
  • Microsoft Azure:Microsoftのサービスと親和性が高い
  • Google Cloud Platform(GCP):AIや機械学習に強い

メリット:

  • 初期投資を大幅削減(サーバー購入不要)
  • 柔軟なスケーリング(アクセスが増えたら、サーバーを増やす)
  • 災害対策(データセンターが複数拠点に分散)

活用例:

  • スタートアップ企業:初期費用を抑えてシステムを構築
  • 季節変動が大きいECサイト:繁忙期だけサーバーを増やす

トレンド2:AI・機械学習の活用

特徴:

  • AIや機械学習を活用したシステムが急増
  • 画像認識、自然言語処理、予測分析など、幅広い分野で活用

活用例:

分野 具体例
画像認識 不良品検査の自動化、顔認証システム
自然言語処理 チャットボット、文書要約、翻訳
予測分析 需要予測、故障予測、顧客の離反予測
推薦システム ECサイトの商品推薦、動画配信サービスのコンテンツ推薦
音声認識 音声入力システム、議事録の自動作成

導入効果:

  • 製造業:不良品検査をAIで自動化 → 検査時間が80%短縮
  • ECサイト:AIによる商品推薦 → 購入率が15%向上
  • コールセンター:チャットボット導入 → 問い合わせ対応時間が50%短縮

注意点:

  • AIは「学習データ」が重要。データの質と量が成否を分ける
  • 導入コストが高い(数百万円〜数千万円)

トレンド3:ローコード・ノーコード開発の普及

特徴:

  • プログラミングの知識がなくても、簡単なシステムを構築できるツールが普及
  • 「市民開発者」(非エンジニア)がシステムを作る時代に

代表的なツール:

  • kintone(サイボウズ)
  • Salesforce
  • PowerApps(Microsoft)
  • Bubble
  • AppSheet(Google)

メリット:

  • 開発期間を大幅短縮(数週間〜数ヶ月)
  • 費用を50〜70%削減
  • 現場の業務に詳しい人が、自らシステムを作れる

向いているシステム:

  • 顧客管理、問い合わせ管理、プロジェクト管理など、標準的な業務システム
  • 社内向けシステム(外部公開しない)

デメリット:

  • 複雑なロジックは実現困難
  • ツールのベンダーロックイン(他のツールへの移行が困難)

トレンド4:セキュリティの重要性増大

背景:

  • サイバー攻撃が増加(ランサムウェア、標的型攻撃)
  • 個人情報保護法の改正で、罰則が強化(最大1億円)

重要なセキュリティ対策:

対策 内容
ゼロトラストセキュリティ 「信頼しない」ことを前提に、すべてのアクセスを検証
多要素認証(MFA) パスワード + SMS認証など、複数の認証を組み合わせる
定期的な脆弱性診断 システムの脆弱性を診断し、対策を講じる
セキュリティパッチの適用 OSやソフトウェアの最新パッチを適用
従業員教育 フィッシングメールの見分け方など、セキュリティ教育を実施

注意点:

  • セキュリティ対策は「やって当たり前」
  • 対策を怠ると、情報漏洩で信用失墜、損害賠償のリスク

トレンド5:アジャイル開発・DevOpsの浸透

特徴:

  • ウォーターフォール開発から、アジャイル開発への移行が進む
  • DevOps(開発と運用の協力)で、リリースサイクルを短縮

DevOpsとは?

  • 開発(Development)と運用(Operations)を統合し、リリースサイクルを短縮する手法
  • 自動テスト、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を活用

メリット:

  • リリースサイクルが短縮(月次 → 週次 → 日次)
  • バグの早期発見と修正
  • ユーザーのフィードバックをすぐに反映

活用例:

  • Webサービス:新機能を週次でリリース
  • スマホアプリ:バグ修正を即座にリリース

トレンド6:マイクロサービスアーキテクチャ

特徴:

  • 従来の「モノリシック」(1つの大きなプログラム)から、「マイクロサービス」(小さなサービスの集合)への移行

マイクロサービスのメリット:

  • 一部のサービスを変更しても、他のサービスに影響しない
  • サービスごとに異なる技術を使える
  • スケールしやすい(負荷が高いサービスだけサーバーを増やす)

活用例:

  • ECサイト:商品検索、カート、決済、配送管理をそれぞれ独立したサービスとして開発

注意点:

  • 設計が複雑になる
  • サービス間の通信が増え、管理が大変

トレンド7:サーバーレスアーキテクチャ

特徴:

  • サーバーの管理が不要な開発手法
  • AWS Lambda、Azure Functions、Google Cloud Functionsなどを活用

メリット:

  • サーバーの管理が不要(スケーリング、パッチ適用などをクラウド側が自動で実施)
  • 使った分だけ課金(アクセスが少ない時はコストが低い)

活用例:

  • 画像のリサイズ処理:画像がアップロードされたら、自動でリサイズ
  • データの定期集計:毎日決まった時間にデータを集計

注意点:

  • 処理時間に制限がある(AWS Lambdaは最大15分)
  • コールドスタート(初回起動が遅い)

11. システム開発でよくある失敗と対策

システム開発プロジェクトは、約7割が「失敗」または「問題を抱えている」と言われています。ここでは、よくある失敗パターンと、その対策を紹介します。


失敗1:要件定義が曖昧なまま開発を進めてしまう

失敗パターン:

  • 「だいたいこんな感じで」と曖昧なまま開発開始
  • 開発途中で「やっぱりこの機能も欲しい」と仕様変更
  • 完成後に「イメージと違う」と大幅なやり直し

結果:

  • 納期が大幅に遅延(予定の2倍の期間)
  • 費用が予算の2〜3倍に膨らむ
  • 最悪の場合、プロジェクト中止

対策:

  1. 要件定義に十分な時間をかける

    • 全体の10〜15%の時間を要件定義に充てる
    • 急がば回れ
  2. 図やイラストを使って視覚化

    • 画面遷移図、ワイヤーフレーム、フローチャート
    • 「言葉だけ」では認識のズレが発生しやすい
  3. プロトタイプ(試作品)を作る

    • 実際に触れる試作品で、イメージを共有
    • 「こういうことですよね?」を確認
  4. 優先順位を明確にする

    • 「必須機能」と「あると便利な機能」を分類
    • 予算や期間が限られる場合、優先度の低い機能は後回し

失敗2:コミュニケーション不足で認識のズレが発生

失敗パターン:

  • 開発会社に丸投げし、完成まで放置
  • 進捗報告を受けず、問題が発生していることに気づかない
  • 「こんなはずじゃなかった」と完成後に発覚

結果:

  • 要件と異なるシステムが完成
  • 使い物にならず、作り直し

対策:

  1. 定期的なミーティングを実施

    • 週次または隔週でレビュー会議
    • 進捗確認と、仕様の再確認
  2. コミュニケーションツールを活用

    • Slack、Teams、Chatworkなどでリアルタイムにやり取り
    • メールだけでは、やり取りが遅くなる
  3. 開発の途中段階で実物を確認

    • 完成を待たず、途中段階で画面を見せてもらう
    • 「イメージと違う」を早期に発見

失敗3:予算オーバー・納期遅延

失敗パターン:

  • 見積もりが甘く、予算が足りなくなる
  • 納期が非現実的で、間に合わない
  • 追加費用を請求され、トラブルに

結果:

  • 予算が2〜3倍に膨らむ
  • 納期が大幅に遅れる(予定の2倍)
  • プロジェクトが中止になることも

対策:

  1. 複数社から見積もりを取る

    • 相場を把握し、適正価格か判断
    • 最低3社
  2. 作業範囲(スコープ)を明確にする

    • 「何が含まれていて、何が含まれていないか」を書面で確認
    • 追加費用が発生する条件を明確化
  3. 余裕を持ったスケジュールを組む

    • 納期にバッファ(余裕)を持たせる
    • 予期せぬトラブルに対応できるように
  4. 段階リリースを検討

    • 「必須機能」だけを先にリリース
    • 「あると便利な機能」は後から追加

失敗4:システムが使われない(現場の不満)

失敗パターン:

  • 経営層の意向で開発したが、現場の意見を聞いていない
  • 操作が複雑で、現場が使いこなせない
  • 従来の方法の方が楽だと、システムが使われない

結果:

  • 高額な費用をかけて開発したのに、誰も使わない
  • システムが「お蔵入り」

対策:

  1. 現場の声を反映した設計

    • 要件定義の段階で、現場の従業員にヒアリング
    • 「どんな機能があれば便利?」「今の業務で困っていることは?」
  2. 使いやすいUI/UXを重視

    • 直感的に操作できる画面設計
    • マニュアルを見なくても使える
  3. 従業員教育を徹底

    • 操作説明会を実施(各部署で2時間 × 2回程度)
    • 動画マニュアルも作成
  4. 段階的に導入し、フィードバックを反映

    • まず1部署で試験導入
    • 「ここが使いにくい」という意見を取り入れ、改善

失敗5:セキュリティ対策が不十分で情報漏洩

失敗パターン:

  • セキュリティ対策を後回しにした
  • パスワードが平文(暗号化なし)で保存されていた
  • 脆弱性を放置し、ハッキングされた

結果:

  • 顧客情報が流出
  • 損害賠償、信用失墜
  • 最悪の場合、倒産

対策:

  1. 設計段階からセキュリティを考慮

    • 「後で対応」ではなく、最初からセキュリティ対策を組み込む
  2. 基本的な対策を徹底

    • パスワードの暗号化(ハッシュ化)
    • SQLインジェクション、XSS対策
    • SSL/TLSによる通信暗号化
  3. 定期的な脆弱性診断

    • 専門会社に依頼し、年1〜2回実施
    • 費用:50〜200万円/回
  4. 従業員教育

    • フィッシングメールの見分け方
    • パスワード管理の重要性

12. よくある質問

システム開発に関するよくある質問をまとめました。


Q1. システム開発とプログラミングの違いは何ですか?

A.

プログラミングは、プログラム(ソフトウェア)を作成すること。

システム開発は、プログラミングに加えて、ハードウェアの設置、ネットワーク構築、運用・保守まで含む広い概念です。

:

  • 「Webサイトのプログラムを書く」 = プログラミング
  • 「Webサイト + サーバー + データベース + セキュリティ対策」を一体で構築 = システム開発

Q2. システム開発にはどのくらいの費用がかかりますか?

A.

システムの規模や機能によって大きく異なりますが、目安は以下の通りです。

システムの種類 小規模 中規模 大規模
業務システム 300〜800万円 800〜3,000万円 3,000万円〜1億円
Webシステム 200〜500万円 500〜2,000万円 2,000万円〜5,000万円
モバイルアプリ 200〜600万円 600〜1,500万円 1,500万円〜3,000万円

費用の大半は人件費(約7〜8割)で、「何人のエンジニアが、何ヶ月働くか」で決まります。

詳しくは、「システム開発にかかる費用相場」セクションをご覧ください。


Q3. システム開発の期間はどのくらいですか?

A.

システムの規模や開発手法によって異なりますが、目安は以下の通りです。

システムの規模 ウォーターフォール アジャイル
小規模 3〜6ヶ月 1〜3ヶ月(最初のリリース)
中規模 6〜12ヶ月 3〜6ヶ月(最初のリリース)
大規模 1〜3年 6〜12ヶ月(最初のリリース)

アジャイル開発の場合、最初のリリースまでは短期間ですが、その後も継続的に機能追加を行います。


Q4. システム開発を依頼する際、何を準備すればいいですか?

A.

以下の3つを準備しておくと、スムーズに進みます。

  1. 解決したい課題

    • 「顧客対応時間を短縮したい」
    • 「在庫管理を効率化したい」
    • 「売上を可視化したい」
  2. 予算と納期

    • 「予算は1,000万円」
    • 「半年後にリリースしたい」
  3. 参考事例

    • 「こんなシステムを作りたい」という参考サイトやアプリ

完璧に固める必要はありません。外注先と一緒に要件を整理していくのが一般的です。


Q5. システム開発会社の選び方を教えてください

A.

以下の5つのポイントで選びましょう。

  1. ✅ 自社の業界・業務での開発実績があるか
  2. ✅ 開発体制がしっかりしているか(PM、SE、PGの人数・役割)
  3. ✅ セキュリティマネジメントがしっかりしているか(ISO27001等)
  4. ✅ 見積もりや納期が適切か(複数社比較が必須)
  5. ✅ コミュニケーションが取りやすいか

詳しくは、「失敗しないシステム開発会社の選び方」セクションをご覧ください。


Q6. システム開発は内製と外注、どちらがいいですか?

A.

以下の基準で判断しましょう。

判断軸 内製が向いている 外注が向いている
社内にITエンジニアがいるか いる いない
開発期間 長期(1年以上) 短期(6ヶ月以内)
システムの独自性 高い(競争優位の源泉) 標準的
保守・運用の体制 自社で対応可能 外部に任せたい

迷ったら:最初は外注してノウハウを学び、徐々に内製化するのがおすすめです。

詳しくは、「システム開発を外注するメリット・デメリット」セクションをご覧ください。


Q7. システム開発で失敗しないためのポイントは?

A.

以下の5つを守りましょう。

  1.  要件定義を徹底する:曖昧な要件は、後工程で大きな手戻りの原因に
  2.  優先順位をつける:「必須機能」と「あると便利な機能」を明確に分ける
  3.  定期的にコミュニケーションを取る:週次ミーティングで進捗確認
  4.  段階的にリリースする:すべての機能を一度にリリースしない
  5.  契約内容を明確にする:作業範囲、納期、追加費用の条件を書面で確認

詳しくは、「システム開発でよくある失敗と対策」セクションをご覧ください。


Q8. システム開発後の保守・運用費用はどのくらいですか?

A.

一般的に、開発費の10〜20%/年が目安です。

:開発費2,000万円 → 保守費用200〜400万円/年

保守費用に含まれるもの:

  • システムの死活監視
  • 障害対応(バグ修正、復旧作業)
  • セキュリティパッチ適用
  • 軽微な仕様変更

大規模な機能追加は、別途費用が発生します。


Q9. システム開発で使われるプログラミング言語は?

A.

システムの種類によって異なりますが、代表的な言語は以下の通りです。

システムの種類 代表的な言語
業務システム Java, C#, Python
Webシステム PHP, Ruby, Python, JavaScript
スマホアプリ Swift(iOS), Kotlin(Android), React Native
組込みシステム C, C++

最近は、複数の言語を組み合わせて開発する(例:バックエンドはPython、フロントエンドはJavaScript)のが一般的です。


Q10. アジャイル開発とウォーターフォール開発、どちらがいいですか?

A.

プロジェクトの特性によって選びましょう。

項目 ウォーターフォール アジャイル
向いているプロジェクト 大規模、要件が明確 小〜中規模、要件が不明確
仕様変更 難しい 柔軟に対応
リリース期間 長い(6ヶ月〜数年) 短い(1〜3ヶ月)
コスト 固定しやすい 変動しやすい
リスク 完成まで実物が見れない 早期にリスクを発見

迷ったら:最初はアジャイルで小さく始め、徐々に拡大するのがおすすめです。

詳しくは、「システム開発の手法4つを徹底比較」セクションをご覧ください。

まとめ

システム開発は、企業の業務効率化やデジタル変革に欠かせないものです。この記事では、システム開発の基礎知識から、開発手法、工程、費用相場、外注先の選び方、成功事例、最新トレンドまで、幅広く解説しました。

システム開発成功のための10のポイント

  1.  課題を明確にする:「何を解決したいのか」を具体的に
  2.  要件定義に時間をかける:曖昧なまま進めない
  3.  優先順位をつける:「必須機能」と「あると便利な機能」を分ける
  4.  適切な開発手法を選ぶ:ウォーターフォール or アジャイル
  5.  複数社から見積もりを取る:相場を把握し、適正価格か判断
  6.  実績のある開発会社を選ぶ:同じ業界での実績を確認
  7.  定期的にコミュニケーションを取る:週次ミーティングで進捗確認
  8.  段階的にリリースする:小さく始めて徐々に拡大
  9.  従業員教育を徹底する:操作マニュアル、説明会を充実
  10.  保守・運用を忘れない:開発費の10〜20%/年を予算化

次のステップ

システム開発を検討している方は、以下のステップで進めましょう。

  1. 課題の整理:解決したい課題をリストアップ
  2. 予算と納期の設定:どのくらいの予算と期間をかけられるか
  3. 開発会社の選定:マッチングサイトや紹介で複数社をピックアップ
  4. 見積もり依頼:最低3社から見積もりを取る
  5. 面談:担当者やエンジニアと直接話して、相性を確認
  6. 契約:作業範囲、納期、費用を明確にして契約

システム開発でお困りの方は、専門のマッチングサイトや開発会社にご相談ください。

この記事が、あなたのシステム開発プロジェクトの成功に役立てば幸いです。

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