これだけでOK!ワークフローの書き方|頼れる管理者のための設計術
紙ベースの申請や承認業務における非効率さ、承認の遅延といった課題は、多くの総務・管理部門の責任者が直面する共通の悩みではないでしょうか。本記事では、これらの課題を劇的に改善し、業務をスムーズに進めるための「ワークフローの書き方」を徹底解説します。この記事を読み進めることで、誰でも分かりやすいワークフロー図を作成できるようになり、社内から「頼れる管理者」として評価される未来が待っています。具体的な手順や、すぐに使えるテンプレートもご紹介しますので、ぜひ日々の業務改善にお役立てください。
なぜ今、管理者に「ワークフローの設計術」が求められるのか?
現代のビジネス環境において、承認の遅れや差し戻し、さらには担当者によって異なる属人化したルールなど、業務プロセスにまつわる問題は少なくありません。これらの課題は、企業全体の生産性低下に直結し、時には重要な意思決定の遅延を招くこともあります。特に、複数の部署や役職者が関わる申請・承認業務においては、その影響は甚大です。このような状況を放置すれば、業務の停滞だけでなく、従業員の不満やミスの増加にも繋がりかねません。
こうした問題を根本的に解決するカギとなるのが、ワークフローの設計術です。明確に設計されたワークフローは、業務の流れを可視化し、誰が、いつ、何をすべきかを明確にします。これにより、業務のボトルネックが特定しやすくなり、無駄な工程の削減やミスの予防に繋がります。単に業務を効率化するだけでなく、内部統制の強化や、迅速かつ正確な意思決定を支援することで、組織全体のガバナンス向上にも貢献するのです。
ワークフローの設計スキルは、もはや一部の専門家だけのものではありません。総務や管理部門の責任者として、このスキルを身につけることは、目の前の業務課題を解決するだけでなく、より戦略的な組織運営へと貢献するための必須要件となっています。自社の業務を深く理解し、改善する力は、管理者としての信頼と評価を大きく高めることでしょう。
ワークフローの基本|業務フロー・フローチャートとの違い
業務効率化や生産性向上を目指す上で、「ワークフロー」という言葉を耳にする機会は多いでしょう。しかし、関連する用語として「業務フロー」や「フローチャート」といった言葉もあり、それぞれが何を指し、どのように使い分けるべきか混乱することもあるかもしれません。このセクションでは、まずワークフローの基本的な概念を定義し、これらの類似用語との違いを明確にすることで、より深くワークフローの設計術を理解するための土台を築きます。
ワークフローとは?業務プロセスの可視化と標準化
ワークフローとは、特定の業務における一連の手続きや情報の流れを図式化したものです。具体的には、「誰が」「いつ」「何を」「どのような手順で」行うのか、そしてその過程で情報や申請書類がどのように移動し、承認・決裁されるのかを明確にした一連のプロセスのことです。単に業務の流れを図として表現するだけでなく、業務プロセスを可視化し、標準化することを主な役割とします。
ワークフローを導入することで、これまで紙ベースで行っていた申請・承認業務における、承認の遅延や差し戻しといった課題を大きく改善できます。例えば、申請書が今誰の手元にあるのか、どこで滞留しているのかが一目でわかるようになり、承認スピードが向上します。また、業務が標準化されることで、担当者ごとの判断のブレやミスの削減にも繋がり、結果として組織全体の生産性向上に貢献する重要な仕組みとなります。
ワークフロー図を作成する3つの目的
ワークフロー図を作成することには、主に次の3つの目的があります。これらの目的を理解することで、より効果的なワークフロー図の設計に繋がります。
- 業務の可視化と問題点の発見ワークフロー図を作成すると、普段何気なく行っている業務プロセスが明確になります。これにより、特定の承認段階でのボトルネックや、無駄な作業、重複しているプロセスなど、非効率な部分を客観的に発見できるようになります。
- 関係者間の共通認識の醸成業務に関わるメンバー間でワークフロー図を共有することで、業務の流れや担当者の役割について共通の理解を深めることができます。特に新入社員や異動者にとっては、業務全体像を素早く把握するための有効なツールとなり、引き継ぎの効率化にも繋がります。
- 業務改善・システム化の土台作りワークフロー図は、業務改善の方向性を検討したり、ワークフローシステムを導入する際の要件定義を行ったりする上で不可欠な土台となります。明確に図示されたプロセスがあることで、どの部分を自動化すべきか、どのような機能が必要かが具体的に議論できるようになります。
混同しやすい「業務フロー」「フローチャート」との違いを解説
ワークフローと混同されやすい言葉に「業務フロー」や「フローチャート」がありますが、それぞれ焦点が異なります。「業務フロー」は、特定の業務全体がどのように進行するかを広範に捉え、部署間の連携や工程の順序など、より俯瞰的な視点で業務の流れを記述したものです。一方、「フローチャート」は、プログラムのアルゴリズムやシステム処理の論理的な手順を示す際に多く用いられ、条件分岐や繰り返し処理といった技術的な詳細に焦点を当てています。
これに対し「ワークフロー」は、特に「人と人との間での申請・承認・決裁」といった、書類や情報が組織内をどのように移動し、承認されるかという情報の受け渡しに重点を置いている点が特徴です。例えば、経費精算や稟議書などの申請書類が、誰の承認を経て、どの部署で処理されるのかといったプロセスの可視化に適しています。それぞれのツールが持つ特性を理解し、目的や表現したい内容に応じて適切に使い分けることで、より正確で分かりやすい業務改善を進めることができます。
【5ステップ】誰でもできるワークフローの書き方・作成手順
このセクションでは、ワークフロー図の作成方法を5つのシンプルなステップに分けてご紹介します。目的の明確化から、関連するタスクや担当者の洗い出し、時系列に沿った整理、そして図面への落とし込み、最終的なレビューと改善まで、順を追って解説します。これらのステップを実践すれば、誰でも分かりやすく実用的なワークフロー図を作成できるようになり、社内の業務効率化に大きく貢献できます。
ステップ1:目的の明確化と対象業務の選定
ワークフロー作成の最初のステップは、「何のために、どの業務を改善したいのか」という目的を明確にすることです。例えば、「経費精算の差し戻しを半減させる」や「稟議の承認時間を3日から1日に短縮する」といった、具体的で測定可能な目標を設定しましょう。この目的が後のすべてのプロセスを決定づける羅針盤となり、無駄なく効果的なワークフロー図を作成するための土台となります。
次に、目的達成のために最も効果的な対象業務を選定します。最初は、関わる人数が多い業務や頻度が高い業務、あるいは承認プロセスが複雑で課題が顕在化している業務など、改善効果が見えやすいものから着手するのがおすすめです。これにより、小さな成功体験を積み重ね、ワークフロー作成に対する社内の理解と協力を得やすくなります。
ステップ2:タスクと担当者の洗い出し(スイムレーンの活用)
対象業務が定まったら、その業務に関わる全てのタスク(作業)と担当者(部署や役職)を具体的に洗い出しましょう。この際、関係者へのヒアリングや、実際の業務を観察することが非常に重要です。「誰が、どのような条件で、何をしているか」を詳細にリストアップすることで、業務の実態を正確に把握できます。例えば、申請書の記入、上長による内容確認、経理担当による仕訳入力、システムへのデータ登録など、一つ一つの作業を細分化して書き出します。
タスクと担当者を整理する際には、「スイムレーン」という手法を活用すると便利です。これは、担当者や部署ごとにレーン(区画)を分けて業務の流れを図式化する方法で、誰がどの作業を行っているのか、どこからどこへ情報が受け渡されているのかを一目で分かりやすく示せます。洗い出した情報は、後のステップでフローを組み立てるための貴重な材料となるため、漏れなく正確に記録しましょう。
ステップ3:時系列に沿って業務の流れを整理
ステップ2で洗い出したタスクを、今度は時系列に沿って並べ替えます。業務の開始から終了まで、一連の流れとして矛盾がないかを確認しながら整理することです。例えば、「申請書作成」の次に「上長承認」、その後に「経理確認」といったように、実際の業務の進行に合わせてタスクを順番に配置します。この段階で、タスク間の依存関係や、どの情報が次のタスクへ引き渡されるのかも意識しながら整理を進めると良いでしょう。
また、業務の流れの中には、条件によって処理が分岐する部分(承認or差し戻しなど)や、複数の作業が並行して進む部分もあります。これらも考慮に入れながら、業務プロセスの全体像を構造化することがこのステップの目的です。視覚的に整理することで、現状の業務フローに潜むボトルネックや非効率な点が明らかになることもあります。
ステップ4:記号を使いフローを下書き・清書する
時系列に沿って整理した業務の流れを、ワークフロー図の基本記号を使って図に落とし込みます。まずは、手書きや付箋などを使って大まかな下書き(ドラフト)を作成することから始めましょう。この段階では、全体の構成やバランスを確認することに重点を置き、完璧を目指す必要はありません。矢印の交差を減らしたり、関連するタスクを近くに配置したりと、見やすい配置を意識しながら書き出します。
下書きで全体の流れが固まったら、PowerPointや専用の作図ツールなどを使って清書します。デジタルツールを活用することで、記号の配置や線の調整が容易になり、より美しく分かりやすい図を作成できます。まずは形にしてみることで、具体的な改善点や不備が見えてくることも多いため、完璧主義にならず、まずはアウトプットすることを心がけましょう。
ステップ5:関係者でレビューし、改善点を洗い出す
作成したワークフロー図が完成したら、必ず実際の業務担当者や承認者など、複数の関係者でレビューを行いましょう。図に描かれたフローが、現場の実際の業務と乖離していないかを確認することがこのステップの目的です。「このケースでは承認者が変わる」「この作業が漏れている」といった具体的なフィードバックを収集し、図を修正していくことが非常に重要です。
机上で考えた理想のフローと、現場で行われているイレギュラーな対応や慣習にはギャップがあるものです。関係者の意見を取り入れ、ワークフロー図を修正・改善することで、その精度と実用性は格段に高まります。このレビューと修正のサイクル(PDCA)を回し続けることで、ワークフローは常に最適化され、組織全体の業務改善に貢献する重要なツールとなるでしょう。
これだけ覚えればOK!ワークフロー図で使う基本記号
ワークフロー図は、業務の流れを視覚的に捉え、関係者間の認識を統一するために非常に有効なツールです。しかし、「記号をたくさん覚えなければいけないのでは」と、作成に苦手意識を持つ方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。まずは必要最低限の記号を押さえるだけで、実用的なワークフロー図を作成することができます。このセクションでは、ワークフロー図を描く上で必須となる基本記号と、さらに一歩進んだ「知っていると便利な応用記号」に分けてご紹介します。これらの記号を効果的に活用することで、誰が見ても分かりやすいワークフロー図が描けるようになります。
【必須】3つの基本記号
開始 / 終了
「開始」と「終了」の記号は、ワークフロー図においてプロセスがどこから始まり、どこで完結するのかを示す最も基本的な記号です。一般的に角の丸い長方形で表現され、図の起点と終点にそれぞれ1つずつ配置します。これにより、業務の全体像やスコープが明確になります。たとえば、業務のスタート地点には「申請書作成開始」と、終点には「経費精算完了」といった具体的なラベルを記述することで、その業務が何をもって始まり、何をもって終わるのかが一目で理解できるようになります。
処理 / 作業
「処理」や「作業」を示す記号は、長方形で表現され、ワークフロー内で実行される具体的なアクションやタスクを示します。この記号の中には、「上長が内容を確認する」「経理部が仕訳入力する」「商品を出荷する」といった、担当者が行う具体的な作業内容を簡潔に記述します。一連の業務プロセスにおいて、誰が、いつ、何を行うのかを明確に可視化するために不可欠な記号であり、この記号の羅列によって業務のステップが詳細に表現されます。
判断 / 分岐
「判断」や「分岐」を示す記号は、ひし形で表現され、プロセスの流れが特定の条件によって分かれる点を示します。この記号は、業務フローにおける意思決定のポイントを明確にするために非常に重要です。ひし形の中には、「承認?」「金額は10万円以上?」「在庫あり?」といった、はい/いいえ(YES/NO)で答えられる判断条件や質問を記述します。そして、ひし形から伸びる矢印には、それぞれの判断結果(例:「YES」「NO」「承認」「差し戻し」)をラベルとして付与することで、条件に応じた次のプロセスが明確に示されます。
【応用】知っておくと便利な記号
書類 / 帳票
「書類」や「帳票」を示す記号は、プロセス内で使用または作成される特定のドキュメントを明示する際に役立ちます。例えば、稟議書、請求書、見積書、領収書などがこれにあたります。この記号を適切に配置することで、どの段階でどの書類が必要になるのか、または作成されるのかが視覚的に分かりやすくなります。特に、紙ベースの業務が多い場合や、書類の受け渡しが重要なプロセスである場合に活用すると、業務の流れがより具体的になり、関係者間の認識のずれを防ぐ効果が期待できます。
データベース / システム
「データベース」や「システム」を示す記号は、円筒形で表現され、業務プロセスにおいてシステム連携が発生する箇所を明確にするために使用されます。例えば、会計システムへのデータ入力、顧客管理システムからの情報参照、または特定のデータベースへのデータ保存といった操作を示す場合に有効です。この記号を使うことで、手作業とシステムによる自動処理の区別が明確になり、システムが関わる部分での業務プロセスを理解しやすくなります。特にITシステムと密接に関わる業務のワークフロー図を作成する際には、重要な役割を果たします。
結合子
「結合子」は円形で表現され、ワークフロー図が複雑になり、矢印の線が交差して見づらくなる場合に非常に便利な記号です。フローが物理的に離れた場所に続いていることを示し、図の可読性を高める役割があります。同じ番号や記号(例:A、B、1、2)を振った結合子同士が接続していることを意味し、途中で途切れたフローがどこに繋がるのかを示します。これにより、図全体を無理に1枚に収めようとして線を複雑に絡ませることなく、視覚的にすっきりと整理されたワークフロー図を作成することが可能になります。
見やすいワークフロー設計術7つのポイント
ワークフロー図は、単に業務の流れを図に描くだけなく、現場で実際に活用され、業務改善に繋がってこそ価値を発揮します。このセクションでは、あなたが作成したワークフローが「誰が見ても分かりやすい」と社内で評価され、ひいてはあなたが「頼れる管理者」として一目置かれる存在になるための、実践的な7つの設計ポイントをご紹介します。これらのポイントを押さえることで、業務効率化の旗振り役として、あなたの評価は格段に上がるはずです。
ポイント1:記号や図形のルールを統一する
ワークフロー図を見やすくするための基本は、記号や図形、色の使い方に一貫性を持たせることです。例えば、業務の「処理」は青い四角形、「判断」は黄色のひし形、といったように、独自のルールを事前に決めて図全体に適用しましょう。これにより、見る人は色や形で直感的に記号の意味を理解できるようになり、図の読み込みが非常にスムーズになります。
このルールは、個人だけでなく組織内で統一しておくことが理想的です。複数の担当者がワークフロー図を作成する場合でも、同じルールに基づいていれば、誰が作成した図でも共通の理解が得られます。これにより、業務プロセスの解釈のズレを防ぎ、効率的な情報共有を促進できるのです。
ポイント2:業務の開始と終了を明確にする
ワークフロー図は、何が起点で何が終点なのかが一目で分かるように作成することが極めて重要です。必ず「開始」と「終了」の記号を配置し、プロセスの範囲を明確に定義しましょう。これにより、見る人はその図がどの業務の、どの範囲を示しているのかを瞬時に把握でき、混乱することなく全体像を理解できます。
業務の開始と終了が明確でないと、どこから読み始めればいいのか、どこまでがこのプロセスの範囲なのかが曖昧になり、誤解や情報の抜け漏れの原因にもなりかねません。「申請書作成開始」で始まり、「経費精算完了」で終わるなど、具体的な言葉で示し、業務のスコープを明確にすることで、ワークフロー図の実用性は大きく向上します。
ポイント3:「誰が」「いつ」やるのかを明確にする
各タスクの責任の所在を明確にすることは、業務をスムーズに進める上で不可欠です。先に紹介した「スイムレーン」を活用し、部署や役職ごとにレーンを分けることで、「誰が」その処理を行うのかを視覚的に明示しましょう。これにより、担当者が一目で自分の役割を認識でき、責任感を持って業務に取り組むことができます。
さらに、業務をより実用的にするためには、「いつ」そのタスクを行うのか、あるいは「いつまでに」行うのかという期限や条件を補足情報として記載することも効果的です。「3営業日以内に承認」「毎月月末に処理」といった具体的な記述は、業務の停滞を防ぎ、全体のペースを管理する上で役立ちます。これにより、ワークフロー図は単なる流れの可視化だけでなく、業務管理ツールとしての役割も果たします。
ポイント4:フローは上から下、左から右へシンプルに
業務の流れを示す矢印の方向は、原則として「上から下」または「左から右」に統一しましょう。これは、人間の視線の動きに合致しており、プロセスの流れを直感的に理解しやすくするための基本的なルールです。一貫した方向に沿ってフローを配置することで、見る人は迷うことなく順序を追って業務を把握できます。
可能な限り矢印の交差や、プロセスの逆流を避けるよう、シンプルなレイアウトを心がけましょう。複雑に絡み合った矢印は、図を読みにくくし、誤解を生む原因にもなります。直線的な配置と簡潔な記号の使い方が、ワークフロー図の視認性を高め、誰もが理解しやすい図を作成するための重要なポイントです。
ポイント5:現場の実態と乖離がないか必ず確認する
作成したワークフローが「絵に描いた餅」にならないよう、現場の実際の業務内容と合致しているかを確認するプロセスは極めて重要です。机上で完璧なフローを設計したつもりでも、現場にはイレギュラーな対応や、長年の慣習といった「見えない業務」が存在することが多々あります。これらのギャップを放置すると、せっかく作ったワークフローも形骸化してしまうでしょう。
実用的なワークフローを作成するためには、実際の業務担当者へのヒアリングや、作成した図を見せてレビューを依頼することが不可欠です。彼らの声に耳を傾け、「このケースでは承認者が変わる」「この作業が漏れている」といったフィードバックを積極的に取り入れましょう。現場の実態を正確に反映させることで、初めて真に役立つワークフローとなるのです。
ポイント6:全体像が把握できるよう1枚にまとめる
ワークフロー図の大きなメリットの一つは、業務の全体像を俯瞰できる点にあります。そのため、可能な限り1枚のシートにすべてのプロセスを収めることを目指しましょう。複数ページにまたがる図は、プロセス全体の繋がりや関連性を把握しにくくし、かえって理解を妨げる原因となります。
もし、業務が複雑で1枚に収まりきらない場合は、前述の「結合子」を活用したり、大きなプロセスを複数のサブプロセスに分割して、それぞれの図を関連付ける工夫をしましょう。全体像が一目で把握できることで、業務全体の効率化や問題点の発見が容易になり、ワークフロー図の価値を最大限に引き出せます。
ポイント7:一度作って終わりではなく、継続的に改善する
ワークフローは一度作成したら完成というものではありません。ビジネス環境の変化や、業務内容の見直し、あるいは運用する中で見つかる課題に合わせて、定期的に見直しと改善を行う必要があります。PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を回し、常に現状に最適化された状態を保つことが、ワークフローを「生き続けるツール」にする秘訣です。
運用を通じて、ボトルネックとなっている箇所や非効率な手順が明らかになることもあります。そうした発見を元にフローを更新していくことで、ワークフローは組織の継続的な業務改善に貢献します。常に最新の状態を保ち、現場の声を取り入れながら改善を続けることで、あなたのワークフローはより洗練され、組織にとって不可欠な存在となるでしょう。
そのまま使える業務別ワークフロー作成例
このセクションでは、実際に現場で役立つワークフローの作成例をご紹介します。多くの企業で共通して発生する「稟議」「経費精算」「受発注」の3つの業務を取り上げ、具体的な図と解説を組み合わせることで、読者の皆様が自社の業務に合わせてすぐに活用できるよう工夫しました。これらのテンプレートを参考にすることで、誰でも迷うことなく、実用的なワークフロー図を作成できるようになります。
稟議・申請業務
物品購入や契約締結など、さまざまな場面で発生する稟議・申請業務は、ワークフロー化によって大幅な効率化が期待できます。例えば、申請者、直属の上長、部長、経理部門、そして最終承認者である役員といった登場人物を明確に分け、それぞれがどのタスクを担うのかをスイムレーンで示すと分かりやすくなります。特に重要なのは、申請金額による条件分岐を設けることです。例えば、「10万円以上の申請は部長承認、50万円以上の申請は役員承認」といったルールを図に落とし込むことで、承認の負荷分散と適切な意思決定を促せます。
また、差し戻しのフローも具体的に明記することが重要です。内容に不備があった場合、どの段階で差し戻され、申請者がどのような修正を行うべきかを明確にすることで、手戻りの回数を減らし、承認プロセス全体のスピードアップに繋がります。各ステップでの具体的な行動と判断基準を図に盛り込むことで、担当者だけでなく、承認者もスムーズに業務を進められるようになります。このような詳細なワークフローを作成することで、承認の属人化を防ぎ、組織全体の透明性を高めることができます。
経費精算業務
出張費や交際費などの経費精算業務は、従業員全員に関わるため、ワークフロー化の効果が大きい業務の一つです。このフローでは、申請者、承認者(上長)、経理担当者の3者を主要な軸として作成すると良いでしょう。領収書の添付、内容確認、承認・差し戻しの判断、会計システムへの入力、そして振込処理までの一連の流れを図示します。特に、証憑の不備や申請内容の誤りがあった場合の差し戻しフローを明確に描くことで、申請者と承認者双方の負担を軽減し、手戻りを防ぐことができます。
経理担当者が会計システムへ入力するステップでは、どのような情報を、どのタイミングでシステムに入力するのかを図に落とし込みます。これにより、経理処理の抜け漏れを防ぎ、月次決算の早期化にも貢献します。また、承認期限や精算の締め日といった時間的な要素を補足情報として加えることで、より実用性の高いワークフローとなります。このワークフローを通じて、経費精算プロセスが標準化され、従業員は安心して精算業務を行えるようになります。
受発注・販売管理業務
顧客からの注文受付から商品の納品、そして請求に至る受発注・販売管理業務は、営業、在庫管理、経理など複数の部署が連携するため、詳細なワークフローが不可欠です。この業務のワークフローでは、まず営業担当が見積もりを作成し、顧客から受注を受けるプロセスから開始します。その後、在庫管理担当が商品の在庫確認を行い、出荷指示を出す流れを図示します。在庫の有無によって、顧客への連絡や仕入れの発生といった分岐を設けると、より実践的なフローとなります。
納品後は、経理担当が請求書を発行し、入金確認を行う一連のプロセスを時系列で整理します。特に、初めての取引先に対する与信確認や、支払い条件による請求日の調整といった重要な判断ポイントをフローに組み込むことで、リスク管理を強化できます。このワークフローは、各部署間の責任範囲を明確にし、情報共有の円滑化を促進します。結果として、顧客への迅速な対応と、売上計上までのリードタイム短縮に繋がり、企業全体の販売管理能力の向上に貢献します。
ワークフロー作成に役立つツール3選|目的に合わせて選ぼう
ワークフロー図を作成する際は、目的に応じて最適なツールを選ぶことが大切です。手軽に始められるものから、本格的な業務改善まで対応できるツールまで、さまざまな種類があります。ここでは、多くの企業で利用されている代表的なツールを3つのカテゴリに分けてご紹介します。それぞれの特徴を理解し、ご自身の組織の状況や作成したいワークフローの複雑さに合わせて、最適なツール選びの参考にしてください。
Excel・PowerPoint|手軽に始めるなら
多くの企業で日常的に使用されているExcelやPowerPointは、ワークフロー図の作成ツールとしても活用できます。特別なソフトウェアを導入する必要がないため、追加コストがかからず、多くの従業員がすでに操作に慣れているため手軽に始められる点が大きなメリットです。
しかし、デメリットもあります。記号の作成や配置は手動で行う必要があり、複雑なフローになるほど図形の調整や矢印の引き直しに手間がかかります。また、複数人での同時編集には向いておらず、バージョン管理が煩雑になりがちです。まずは簡単な業務の可視化から試したい場合や、小規模なチームで利用する場合であれば、導入のハードルが低くおすすめです。
専用の作図ツール|複数人での共同編集に
Miro、Lucidchart、draw.ioといった専用の作図ツールは、ワークフロー図の作成に特化しているため、効率的で高品質な図を簡単に作成できます。豊富なテンプレートや、ワークフロー図に特化した記号があらかじめ用意されているため、ゼロから図形を組み立てる手間が省けます。
これらのツールの多くはクラウドベースで提供されており、複数人がリアルタイムで共同編集できる点が大きなメリットです。コメント機能などを活用すれば、チーム内でフィードバックを共有しながらスムーズに図をブラッシュアップできます。一部有料のツールもありますが、チームで本格的に業務プロセスを可視化し、改善に取り組む場合には非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
ワークフローシステム|作成から自動化まで実現
ワークフローシステムは、単にワークフロー図を作成するだけでなく、その図に基づいて実際の申請・承認業務を電子化・自動化できる統合的なソリューションです。図で描いた承認ルートをシステム上で設定し、申請から承認、決裁までの一連のプロセスをペーパーレスで実行できます。
このシステムの最大のメリットは、申請の進捗状況をリアルタイムで可視化できること、承認漏れや遅延を防ぐ自動通知機能、監査証跡として残るログ管理機能により内部統制を強化できる点です。デメリットとしては、導入コストや初期設定の手間がかかることが挙げられますが、全社的な業務効率化、意思決定の迅速化、ガバナンス強化を目指す企業にとっては、最も抜本的な改革を実現できる選択肢となります。業務プロセスそのものを根本から改善し、持続的な生産性向上を図りたい場合に最適です。
まとめ
この記事では、紙ベースの申請・承認業務に課題を抱える管理者の方々に向けて、業務を劇的に改善する「ワークフローの書き方」を解説してきました。ワークフローの基本的な考え方から、業務フローやフローチャートとの違い、そして具体的な作成手順、さらに効果的なワークフロー図を作成するための7つのポイントまでを網羅的にご紹介しました。
ワークフローを適切に設計し導入することは、単に作業を効率化するだけではありません。承認の遅延や差し戻しを減らし、業務プロセスを可視化・標準化することで、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。そして、このような目に見える改善を推進することは、管理者である皆さんの社内での信頼を確固たるものにするでしょう。
ワークフローの設計は一度作成したら終わりではなく、継続的な見直しと改善が重要です。ぜひ本記事で紹介した情報を参考に、一歩を踏み出してください。あなたの設計したワークフローが、日々の業務をスムーズにし、社内から「頼れる管理者」として評価される未来につながることを願っています。