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システム開発フロー図、失敗しないための鉄則

システム開発フロー図、失敗しないための鉄則

システム開発プロジェクトにおいて、フロー図は多岐にわたる関係者間の認識を揃え、円滑なコミュニケーションを促進するための極めて重要なツールです。しかし、せっかく時間をかけて作成したフロー図が、「内容が分かりにくい」「情報が古くて信頼できない」といった理由で、プロジェクト内で十分に活用されていないケースは少なくありません。結果として、認識の齟齬による手戻りや、致命的な仕様変更が発生し、プロジェクトの遅延やコスト増大を招くこともあります。

本記事では、システム開発の現場で頻繁に見られる「伝わらないフロー図」の典型的な失敗パターンを深く掘り下げ、それらの失敗を回避するための具体的な鉄則を解説します。さらに、一度作成したフロー図を常に最新の状態に保ち、プロジェクトの進行とともにその価値を維持・向上させるための実践的な運用ノウハウもご紹介します。この記事を通じて、「活きたフロー図」を作成し、活用できるようになることで、手戻りや誤解を防ぎ、システム開発プロジェクトを成功に導く一助となれば幸いです。

そのフロー図、本当に「伝わって」いますか?よくある失敗パターン

多くのシステム開発プロジェクトで作成されるフロー図ですが、その品質はプロジェクトや作成者によって様々です。ここでは、システム開発の現場でよく見られる「伝わらない」フロー図の典型的な失敗パターンを4つご紹介します。ご自身の作成したドキュメントや、チームで共有されているフロー図がこれらのパターンに当てはまっていないか、チェックしながら読み進めてみてください。これらの失敗パターンは、プロジェクトにおけるコミュニケーションコストの増大や、後のフェーズで致命的な手戻りを引き起こす原因となり得ます。

パターン1:詳細すぎて「木を見て森を見ず」状態になっている

エンジニアが作成するフロー図にありがちなのが、技術的な処理を細部まで記述しすぎてしまうケースです。例えば、データベースのテーブル名やAPIのパラメータといった詳細情報まで盛り込むと、フロー図が複雑化してしまい、処理の全体像や本質的な流れが掴みにくくなります。特に、経営層や業務部門の担当者といった非技術者に説明する際には、このような詳細すぎるフロー図は、理解を妨げる大きな要因となります。読み手によって求める情報の粒度は異なるため、誰に何を伝えたいのかを意識せずに作成されたフロー図は、自己満足なドキュメントになりがちです。このパターンは、本来の目的である「関係者間の認識統一」を阻害する大きな要因と言えるでしょう。

パターン2:抽象的すぎて担当者によって解釈が違う

詳細すぎるのとは逆に、処理内容が曖昧で抽象的すぎるフロー図も問題を引き起こします。「データをチェックする」「ファイルを処理する」といった記述では、具体的にどのような条件で、何を、どのように処理するのかが不明確です。このようなフロー図は、読む人によって解釈が分かれてしまう危険性をはらんでいます。例えば、ある担当者は「目視でチェックする」と解釈し、別の担当者は「システムで自動チェックする」と解釈するかもしれません。このような解釈のズレは、開発フェーズの後半になってから発覚することが多く、大きな手戻りや、それに伴う仕様変更の原因となります。「よしなに」「適宜」といった言葉が隠れているフロー図は、合意形成のツールとして機能せず、プロジェクトに混乱を招く可能性があります。

パターン3:作成者しか理解できない独自の記号やルールが使われている

フロー図にはJIS(日本産業規格)などで定められた標準的な記号が存在します。しかし、それらを無視して自己流の記号や図形、独自の色分けルールなどを使ってしまうケースが見受けられます。例えば、特定の色の矢印が「エラー時の処理」を意味するなど、凡例もなく暗黙のルールが使われていると、作成者本人以外にはその意図が正確に伝わりません。このようなフロー図は属人化の温床となり、作成者が異動や退職した場合、誰もメンテナンスできなくなってしまいます。ドキュメントはチームの共有資産であるという意識が欠けていると、このような「作成者にしか解読できない」フロー図が生まれやすくなり、将来的な運用に大きな支障をきたします。

パターン4:一度作って更新されず「化石化」している

システム開発の初期段階(要件定義や基本設計)で作成されたフロー図が、その後の仕様変更や詳細設計の進捗に合わせて更新されず、放置されてしまうパターンです。開発が進むにつれて、実際の仕様とフロー図の内容が乖離していくと、そのドキュメントの信頼性は失われます。誰もが「このフロー図は古くて正しくない」と認識するようになると、結局、口頭での確認や最新のソースコードを読むといった非効率なコミュニケーションが発生します。メンテナンスされていないフロー図は、もはや「ない」のと同じか、誤った情報で混乱を招くという点で「ない」よりも有害な存在にすらなり得ます。常に最新の状態を保つための運用が不可欠です。

システム開発におけるフロー図とは?目的と重要性を再確認

これまでのセクションでは、システム開発の現場でよく見られる「伝わらない」フロー図の失敗パターンについて見てきました。ここでは改めて、システム開発プロジェクトにおいてフロー図がなぜ重要なのか、その本来の目的と役割について立ち返って考えてみましょう。

フロー図は単に処理の流れを可視化するだけのツールではありません。プロジェクトを円滑に進めるための重要なコミュニケーションツールとしての側面を理解することが、「伝わる」フロー図を作成するための第一歩となります。このセクションを通じて、フロー図がプロジェクトにおいて果たすべき役割や種類について深く理解していただければ幸いです。

フロー図が担う「認識合わせ」と「合意形成」の役割

システム開発のプロジェクトには、経営層、業務担当者、プロジェクトマネージャー(PM)、エンジニア、さらには外部ベンダーといった、実に多様な立場のステークホルダーが関わっています。これらの関係者は、それぞれ異なる専門知識や視点を持っているため、文章だけの仕様書や口頭での説明では、システムの挙動や業務プロセスに対する認識に微妙なズレが生じがちです。

このような状況において、フロー図は非常に強力なツールとして機能します。複雑な処理や多岐にわたる関係性を視覚的に「見える化」することで、関係者全員が同じイメージを共有するための共通言語となります。これにより、「言った、言わない」といったコミュニケーション上のトラブルを防ぎ、プロジェクトの重要な意思決定における「合意形成」をスムーズに進めることができます。フロー図は、プロジェクトのリスクを管理し、関係者全員に安心感を提供する、いわば「説明責任ツール」としての役割も担っているのです。

「業務フロー図」と「システムフロー図」の違いと使い分け

「フロー図」と一口に言っても、システム開発の現場では主に「業務フロー図」と「システムフロー図」の2種類が使われます。これらの違いを理解し、プロジェクトの目的や説明する相手に応じて適切に使い分けることが、効果的なコミュニケーションには不可欠です。ここでは、両者の明確な違いを定義し、それぞれの役割について説明します。

「業務フロー図」は、特定の業務プロセスにおける「人」や「部署」の役割、および作業の流れに焦点を当てて作成されます。システムによる処理は、「システム処理」といった一つの箱で表現されることが多く、業務全体のプロセスを俯瞰し、現状の課題を発見したり、業務改善の検討を行う際に用いられます。例えば、顧客からの注文受付から商品の発送までの業務全体を把握したい場合に有効です。

一方、「システムフロー図」は、システム内部での「データ」の流れ、処理のステップ、帳票の出力、データベースへのアクセスといった、コンピュータが行う情報処理のプロセスに特化しています。主に、エンジニアがシステムの具体的な動作を設計・理解したり、実装の詳細を共有したりするために用いられます。ある機能が、どのようなデータを入力として受け取り、どのような処理を経て、どのような結果を出力するのかを詳細に記述する際に適しています。プロジェクトのフェーズや、情報を共有したい相手の技術レベルに応じて、これらのフロー図を適切に選択し、使い分けることが重要になります。

フロー図がないシステム開発が陥る3つのリスク

フロー図の作成にはそれなりの時間と労力がかかるため、特に小規模なプロジェクトや、納期が非常に短いプロジェクトなどでは、フロー図の作成が省略されてしまうケースがあります。しかし、フロー図なしでシステム開発を進めることは、プロジェクトに大きなリスクをもたらす可能性があります。ここでは、フロー図を省略した場合に陥りやすい3つの主要なリスクについて説明します。

  1. 仕様の解釈違いによる手戻りの多発:文章だけでは表現しにくい複雑な分岐条件や処理の順序について、開発者と発注者、あるいは開発チーム内のメンバー間で認識のズレが生じやすくなります。この認識のズレは、開発フェーズの後半やテスト段階になってから「思っていたものと違う」という形で発覚することが多く、結果として大規模な手戻りや再開発が発生し、プロジェクト全体のスケジュールとコストに甚大な影響を与えます。
  2. 品質の低下:フロー図がない場合、例外処理やエラー発生時の処理フローが十分に検討されず、設計段階での見落としが発生しやすくなります。これにより、システムの実装時にこれらの重要な処理が漏れてしまったり、不適切な処理が行われたりするリスクが高まります。結果として、システムの堅牢性が損なわれ、本番稼働後に予期せぬ障害が頻発するなど、システム全体の品質低下を招くことになります。
  3. 属人化とメンテナンス性の悪化:システムの全体像や処理の詳細な流れを把握しているのが、ごく一部の担当者だけになってしまう「属人化」が進行します。もしその担当者がプロジェクトを離れたり、急な病気で不在になったりした場合、システムのトラブル対応や機能改修、あるいは今後の引き継ぎが極めて困難になります。これは、システムの「ブラックボックス化」を招き、将来的なメンテナンスコストの増大や、長期的な運用におけるリスクを高めることにつながります。

これで迷わない!フロー図作成の基本(記号と構造)

伝わるフロー図を作成するためには、まず基本的なルールを身につけることが不可欠です。ここでは、フロー図の構成要素である「記号」と、流れのパターンである「構造」について、最低限知っておくべき基本を解説します。これらの基本を押さえることで、誰が見ても同じように解釈できる、標準的で分かりやすいフロー図を作成する土台ができます。

最低限覚えるべきJIS準拠の基本記号7

フロー図には、JIS(日本産業規格)によって定められた標準の記号があります。独自の記号は避け、これらの標準記号を使うことで、誰にとっても読みやすいフロー図になります。ここでは、システム開発で特によく使われる基本的な記号を7つに絞って紹介します。

  1. 端子(開始/終了):角の丸い四角形で、フローの開始と終了を示します。
  2. 処理:長方形で、計算や値の代入などの具体的な処理内容を記述します。
  3. 判断(分岐):ひし形で、「Yes/No」で答えられる条件を記述し、処理を分岐させます。
  4. 入出力:平行四辺形で、キーボードからの入力や画面への表示などを示します。
  5. 定義済み処理:左右に二重線が入った長方形で、別の場所で定義された一連の処理(サブルーチン)を呼び出すことを示します。
  6. ループ(開始/終了):上下がくびれた六角形で、特定の処理を繰り返す範囲を示します。
  7. 結合子:円で、フローチャートが複雑になる場合に、線をつなぐ役割を果たします。それぞれの記号の形と意味を正しく理解し、使い分けることが重要です。

フローの3つの基本構造:順次・分岐・反復

どのような複雑なプログラムや業務の流れも、突き詰めれば3つの基本的な構造の組み合わせで表現できます。フロー図を作成する際は、この3つの構造を意識することが大切です。

  1. 順次構造:処理が上から下へ、書かれた順番に一直線に実行される最も基本的な構造です。矢印に沿って処理を追っていくだけで理解できます。
  2. 分岐構造:判断記号(ひし形)で示された条件によって、処理の流れが分かれる構造です。プログラミングにおける「if文」に相当し、「もしAならばBを実行し、そうでなければCを実行する」といった流れを表現します。
  3. 反復構造:特定の条件が満たされている間、同じ処理を繰り返し実行する構造です。プログラミングにおける「for文」や「while文」に相当し、「条件Xが成立するまで処理Yを繰り返す」といった流れを表現します。これらの基本構造を組み合わせることで、あらゆるロジックを視覚的に表現することが可能になります。

伝わるフロー図を作成するための7つの鉄則

ここからが本記事の核心です。フロー図の基本とよくある失敗パターンを踏まえ、誰が見ても分かりやすく、認識の齟齬を生まない「伝わるフロー図」を作成するための7つの具体的な鉄則を紹介します。これらの鉄則を意識するだけで、あなたの作成するフロー図の品質は格段に向上し、プロジェクトにおけるコミュニケーションを円滑にする強力な武器となります。

鉄則1:目的と読み手を明確にする(誰に何を伝えたいか)

フロー図を作成する前に、まず「このフロー図は、誰に、何を伝えるためのものか」を明確に定義することが最も重要です。例えば、経営層にプロジェクトの全体像を説明するなら、システムの詳細な処理は省略し、業務の流れと役割分担がわかる「業務フロー図」が適しています。一方、開発者間で詳細な仕様を共有するなら、データ処理やエラーハンドリングまで記述した「システムフロー図」が必要になります。読み手と目的を最初に定めることで、記述すべき情報の粒度(詳細さのレベル)が自ずと決まり、「詳細すぎる」「抽象的すぎる」といった失敗を防ぐことができます。一つのフロー図で全てを伝えようとせず、必要に応じて複数の粒度のフロー図を作成する意識が大切です。

鉄則2:「スイムレーン」で担当部署や役割を明確化する

複数の部署やシステム、担当者が関わるプロセスを描く場合、「スイムレーン(部門レーン)」を必ず使用しましょう。スイムレーンとは、フロー図を用紙の縦または横に分割し、各レーンに担当部署名やシステム名を割り当てる手法です。各処理の記号を、それを行う担当者のレーン内に配置することで、「誰が(どのシステムが)」「どの処理に責任を持つのか」が一目瞭然になります。これにより、プロセスのボトルネックを発見しやすくなるだけでなく、関係者間の役割分担や責任範囲の確認が容易になり、合意形成を強力にサポートします。

鉄則3:処理の「粒度」を揃え、一貫性を保つ

一つのフロー図の中に記述する処理は、その詳細さのレベル、すなわち「粒度」を統一することが重要です。例えば、「注文を受け付ける」という抽象度の高い処理の隣に、「受注テーブルの在庫フラグを1に更新する」といった実装レベルの極めて詳細な処理を並べてはいけません。粒度がバラバラだとフロー図全体のリズムが崩れ、非常に読みにくくなります。もし詳細な処理を記述する必要がある場合は、「定義済み処理」の記号を使い、「詳細は別紙の『注文確定処理フロー』を参照」といった形で階層化しましょう。これにより、全体像を示すメインフローと、詳細を説明するサブフローを明確に分離でき、見通しの良い構成になります。

鉄則4:開始(トリガー)と終了(ゴール)を定義する

すべてのフロー図には、必ず「開始」と「終了」を明確に記述しましょう。「開始」には、この一連の処理が「何によって始まるのか(トリガー)」を具体的に記述します。例えば、「顧客からの電話受注」「毎日午前5時のバッチ起動」などです。同様に、「終了」には、このフローが「どの状態になったら完了とみなすのか(ゴール)」を記述します。例えば、「受注伝票の発行完了」「処理結果メールの送信完了」などです。開始と終了を明確にすることで、そのフロー図がカバーする範囲が定義され、読み手はこれから読むフローの目的と全体像を最初に把握することができます。

鉄則5:分岐は「Yes/No」で答えられる明確な条件にする

処理の流れを分ける「判断」記号(ひし形)の中には、必ず「はい/いいえ(Yes/No)」または「真/偽」で明確に答えられる条件を記述してください。「エラーの有無」「会員/非会員の別」「在庫が1個以上あるか」のように、誰が読んでも解釈が一つに定まる客観的な条件にすることが鉄則です。「入力内容に問題ないか?」のような曖昧な表現は避け、「必須項目が全て入力されているか?」のように具体的な条件に落とし込みます。これにより、ロジックの曖昧さがなくなり、仕様の誤解や実装漏れを防ぐことができます。

鉄則61フロー図は1ページに収め、全体像を把握しやすくする

フロー図は、可能な限りA4またはA3サイズ1枚に収めることを目指しましょう。複数のページにまたがるフロー図は、ページをめくる手間が発生し、処理の全体像を俯瞰することが困難になります。1枚に収めることで、プロセス全体の流れや複雑な分岐、ループ構造などを一目で把握でき、問題点や改善点の発見につながります。フローが複雑で1枚に収まりきらない場合は、無理に詰め込むのではなく、鉄則3で述べたように「定義済み処理」を使って処理をモジュール化し、サブルーチンとして別のフロー図に切り出すことで、階層的で分かりやすい構造に整理しましょう。

鉄則7:凡例をつけ、独自のルールは必ず明文化する

基本はJISなどの標準記号を使うべきですが、プロジェクトによっては、特定の状態を表現するために独自の色分けや線の種類(実線、破線など)を使いたい場合があります。例えば、「新規追加機能は赤枠で囲む」「手動作業は黄色で塗りつぶす」といったルールです。このような独自の表現を用いる場合は、必ずフロー図の隅などに「凡例」を設け、そのルールを明文化してください。凡例があれば、作成者以外の人が初めてその図を見たときでも、記号や色の意味を正しく理解できます。暗黙のルールをなくし、ドキュメントの属人化を防ぐための重要な一手間です。

実践!システム開発フロー図の作成5ステップ

ここまで解説してきた鉄則を踏まえ、実際にフロー図を作成するための具体的な手順を5つのステップに分けて紹介します。このステップに沿って作業を進めることで、抜け漏れがなく、関係者の合意形成を円滑に進めることができる質の高いフロー図を作成することができます。頭の中だけで考えず、手を動かしながら進めていくことがポイントです。

ステップ1:目的と対象範囲を定義する

まず、作成するフロー図の目的(例えば、現行業務の可視化や新システムの要件定義など)と、対象とする業務やシステムの範囲を明確にしましょう。「どこから始まり、どこで終わるのか」というスコープを最初に決めることで、関係者との議論が発散するのを防ぎます。具体的には、「顧客からの問い合わせ受付から、一次回答完了まで」のように、具体的な範囲を文章で定義しておくと良いでしょう。この段階で、主な読み手が誰になるのかも想定しておきます。

ステップ2:関係者へのヒアリングとタスクの洗い出し

次に、ステップ1で定義した範囲に関わる関係者(例えば、実際の業務担当者や現行システムの管理者など)にヒアリングを行います。思い込みで作成せず、必ず現場の一次情報を集めることが重要です。ヒアリングを通じて、業務やシステムの中で行われている「タスク(作業、処理)」を一つ残らず洗い出します。この時点では順序や関係性を気にせず、付箋やテキストエディタなどに箇条書きでどんどん書き出していく「ブレインストーミング」の手法が有効です。「誰が」「何を」「どのように」行っているかを具体的に聞き出すのがコツです。

ステップ3:タスクを時系列に整理し、スイムレーンに配置する

洗い出したタスクを、付箋などを使って作業の発生順に並べ替えていきます。ホワイトボードや広い机の上で作業すると良いでしょう。タスク間の前後関係や、「このタスクとこのタスクは同時に行われる」といった並行処理、「この条件のときはこのタスクに進む」といった分岐などを整理します。同時に、スイムレーンを用意し、各タスクをそれを実行する担当者や部署、システムのレーンに配置していきます。この段階で、プロセスの大まかな流れが見えてきます。

ステップ4:記号と線でフロー図に落とし込む

整理したタスクの並びを元に、作図ツールを使ってフロー図に清書していきます。各タスクを適切な基本記号(処理、判断、入出力など)に置き換え、それらを矢印でつないでいきます。このとき、「フローの3つの基本構造」や「伝わるフロー図を作成するための7つの鉄則」を常に意識してください。処理の粒度は揃っているか、分岐条件は明確か、スイムレーンで担当が明確になっているかなどを確認しながら、丁寧に作図を進めます。

ステップ5:関係者レビューと修正で完成度を高める

作成したフロー図の初版(ドラフト)を、ステップ2でヒアリングした関係者に見てもらい、レビューを依頼します。「この業務の流れで合っていますか?」「抜けている処理や条件はありませんか?」といった観点でフィードバックをもらいましょう。指摘された箇所を修正し、再度レビューしてもらう、というサイクルを繰り返すことで、フロー図の正確性と完成度が高まっていきます。このレビューと修正のプロセスこそが、関係者間の認識を合わせ、仕様を固めていく「合意形成」のプロセスそのものです。完成したフロー図は、関係者全員が承認した「合意の記録」となります。

フロー図作成を効率化するおすすめツール

Microsoft Officeに含まれるPowerPointExcelは、多くのビジネスパーソンにとって最も身近なツールです。特別なソフトウェアをインストールすることなく、標準搭載されている図形描画機能(SmartArtなど)を使って手軽にフロー図を作成できます。作成した図をそのまま企画書や設計書に貼り付けられるのもメリットです。一方で、これらは作図専用ツールではないため、複雑なフロー図の作成や、図形同士の接続線を維持したままのレイアウト変更、バージョン管理などには向いていません。個人での簡単な作図や、小規模なプロジェクトでの利用に適しています。

本格的な作図と共有なら:Lucidchart / Cacoo

LucidchartCacooは、クラウドベースのオンライン作図ツールです。フロー図作成に特化した豊富なテンプレートや図形ライブラリが用意されており、直感的な操作で洗練されたフロー図を素早く作成できます。最大の特長は、複数人でのリアルタイム共同編集や、図の特定箇所へのコメント機能など、チームでのコラボレーションを強力に支援する機能が充実している点です。作成した図はURLで簡単に共有でき、常に最新版を閲覧できます。有料プランが中心ですが、チームで本格的にフロー図を活用していく場合には最適な選択肢です。

開発者向け:draw.io (diagrams.net)

draw.io(現在の名称はdiagrams.net)は、無料で利用できる高機能な作図ツールです。Webブラウザ上で動作するほか、デスクトップアプリケーションとしても利用できます。フロー図はもちろん、UMLやネットワーク構成図など、システム開発に関連する様々な図の作成に対応しています。特に開発者にとって魅力的なのは、VS Codeの拡張機能として利用できる点です。これにより、ソースコードと同じリポジトリで図のファイルをGit管理でき、コードの変更とドキュメントの変更を連携させることが容易になります。無料で手軽に始められ、かつ本格的な機能を備えているため、エンジニア個人や開発チームに広く支持されています。

作成後が重要!フロー図を「活きたドキュメント」にする運用術

フロー図は、作成して終わりではありません。むしろ、作成した後の運用こそが、その価値を大きく左右します。どんなに優れたフロー図も、メンテナンスされずに「化石化」してしまっては意味がありません。ここでは、フロー図を常に最新の正しい状態に保ち、チームの共有資産として「活きたドキュメント」にし続けるための運用術を紹介します。

バージョン管理のルールを決める

ドキュメントが更新された際に、どれが最新版か分からなくなる事態を防ぐため、バージョン管理のルールを定めましょう。シンプルな方法としては、ファイル名に「_v1.0」「_20231026」のようにバージョン番号や更新日を付与するルールがあります。また、図の内部やファイルのプロパティに変更履歴(いつ、誰が、何を修正したか)を記録することも有効です。開発チームであれば、draw.ioなどのツールを使い、ソースコードと同様にGitでフロー図のファイルを管理するのが最も確実で、変更差分の確認も容易になります。

定期的な見直しと更新のタイミング

仕様変更が発生した際に都度フロー図を更新するのはもちろんですが、それ以外にも定期的に見直す機会を設けることが重要です。例えば、「毎週の定例会議で変更点がないか確認する」「設計フェーズが完了したタイミングで必ず最新化する」といったルールをチームで決めておきましょう。このように更新のタイミングを予めプロセスに組み込んでおくことで、更新漏れを防ぎ、フロー図の陳腐化を食い止めることができます。

チーム内での共有方法と保管場所を統一する

フロー図の保管場所が個人のPC内やメールの添付ファイルに散在していると、どれが最新版か分からなくなったり、必要な時に見つけられなかったりします。チームで利用するフロー図は、必ず全員がアクセスできる共有の場所に保管しましょう。ファイルサーバー上の特定のフォルダや、ConfluenceSharePointGoogle Driveといった情報共有ツールやクラウドストレージを利用するのが一般的です。「フロー図は必ずこの場所にある」というルールをチーム全員で徹底することで、誰もが常に最新の正しい情報にアクセスできる状態を維持できます。

まとめ

本記事では、システム開発における「伝わる」フロー図の作成方法と、その運用術について解説しました。フロー図は単なる設計図ではなく、さまざまな立場のステークホルダー間の認識を揃え、円滑な合意形成を促すためのコミュニケーションツールです。詳細すぎる、抽象的すぎる、属人化している、更新されていないといった失敗パターンを避けることで、プロジェクトの進行におけるコミュニケーションギャップを最小限に抑えることができます。

本記事で紹介した7つの鉄則(目的と読み手を明確にする、スイムレーンで担当を明確化する、処理の粒度を揃える、開始と終了を定義する、分岐は明確な条件にする、1フロー図は1ページに収める、凡例をつけ独自のルールは明文化する)を意識してフロー図を作成・運用することで、そのドキュメントは単なる資料を超え、プロジェクトの進むべき道を照らす「羅針盤」として機能します。これにより、手戻りの発生を大幅に削減し、関係者全員に安心感を提供することが可能になります。

システム開発を成功に導くためには、計画段階からリリース後の運用まで、全てのフェーズにおいて情報の透明性を保ち、認識の齟齬を防ぐことが不可欠です。「活きたフロー図」の活用を実践することで、プロジェクトの効率性と品質を向上させ、最終的には関係者全員の満足度を高めることができるでしょう。

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